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掌短編集  作者: おでき
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迸る欲望の蜜

書いてある以上を読み取るのが醍醐味。しかし新年一発目がこれか。

 三大欲求の一つが腹の底で渦巻いて理性を刺激している。これは、独特の匂いのせいだ。誘っているようにしか思えない匂い。そして、その姿。

 引き寄せられるように、艶やかで張りのあるソコへと、不躾な仕種で指を突っ込んでみた。まだ若いからか締りがよい。いや、良すぎて時宜ではない気がする。緩みを待つのも一興か。思案しながら、引き抜いた指を鼻に寄せて嗅いでみた。滴る若い匂いは鼻に酸味のような……けれどゴクリと唾を飲み込みたいほど強い濃厚さを放っていた。思わずその匂いの元を見下ろす。そして思うのだ。

 ああ、いい。鼻を突っ込みたい。口にしたい。そして一滴たりとも逃さず飲み干したい、と。

 親指を入れた場所とは違う所を人差し指で撫でては重心を支えつつ、指を這わせ滑らせていく。

 その間も、まるで芯を揺さぶるかの如くグイグイと親指を押しつけた。指の腹が汁にまみれる。この感触を楽しみながら、可愛らしい皮を優しくめくってやる。すると包まれていた愛らしい実が姿を現した。そこはパンパンに膨れ上がっており、何とも魅力的な姿を晒している。

 食欲という名の欲望。そして、私の手には、早生みかん。

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