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掌短編集  作者: おでき
3/17

それ、何てホラー

筆者の記念すべき、新境地開拓挫折作品。

 夜の濃い色に染められて辺りは暗く、街灯だけが申し訳程度に光っている。

 人っ子ひとりいない道路で、私は「あるもの」の気配を背後に感じていた。

 後ろからつかず離れず、こちらを追ってくる音が聞こえる。もちろん私の足音ではない。

(なんだろう? こわいな)

 歩いていると、次々に見かける「通り魔に注意」の張り紙が、街頭に照らされて薄気味悪く警告を発していた。

 また音がする。誰かが私の後ろを、一定のスピードで歩いているのか。

(こわい、こわい、こわい……)

 気味が悪くて仕方ない。どの曲がり角も、背後の足音は私と同じ進路をとっていた。同じ道を行くくらい、別段珍しくもないのは分かる。けれどこの時間帯に後ろを歩かれるというのは、こわくてたまらない。

(いったいなに?)

 不安に押されて、自然と足は速くなる。これで距離があくと思った。ヒールの音を鳴らしていれば、いつの間にか競歩のような速度になる。しかし、後ろの足音が遠くならない。

 間違いない、私の後をついてきている。

(なんで? ……誰か……!)

 声を上げるなんて出来ずに、とうとう私は走り出した。我が家であるマンションが見えてくる。安心した矢先、なお聞こえる足音にどきりとした。

 だがマンションの正面玄関には監視カメラがある。何かあっても叫べば大丈夫。カメラに映るだろう。興奮状態の中で少しだけ平静を取り戻した私は、勢いよく振り返った。

 そこには、近所で見るコーギー犬が二匹いた。

「……え」思わず口をあんぐりと開ける。「おまえら……首輪はどうした」

 しかし、当たり前だが彼らは答えない。ただ私に狙いを定めているのか、じっと一点を睨み、舌をだらんと垂らしている。電灯に揺れる不気味な捕食者の鋭い牙。

 そうして。

 閉店間際のスーパーに立ち寄って購入した半額惣菜の入った袋に、あろうことか二匹は襲いかかり、見事に私は惣菜を奪取されるという通り魔に遭ったのだった。

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