私のミルクを飲んで下さい
『書いてある以上を読み取る』第二弾。「ナマ」は駄目よ。
はち切れんばかりに膨らんだソコを、どうぞ手で、指で、握って包んで扱いて下さい。
そうして零れ出るソレを、どうぞ口にして下さい。
味の感想は人それぞれでしょうが、まずもってあなたの口に注ぎたいのです。
あなたが私のソレを嫌いなのは重々承知しております。
ですが、他の事なら何でもするからソレだけは飲みたくないと「イヤイヤ」するあなたの口に強制的にソレが運ばれ、あなたの喉が上下するのを見終えると、私は至極満足するのです。
ソレを飲むとき苦渋に歪むあなたの顔が、たまらなく嗜虐心をそそるのも事実です。
しかし時折ふと、思うのです。
いつかあなたが満面の笑みで自ら「飲みたい」と言ってくれないだろうか。
その舌足らずな声で「ちょーだい」と言ってくれないだろうか。
そうして「おいしい」と言ってくれないだろうか……そんな事ばかりが頭によぎるのです。
ですが今はまだ、きっと遠い夢なのでしょう。
今日もまた、この一帯を望む広大な土地にて、あなたの姿を目に焼き付けています。
向こうに見える小さな家から泣いて飛び出してくる幼いあなたを。
どうぞいつかあなたの手元に……私の、いや私共のソレがありますように。そう願ってやみません。
大人になって後を継がれるなら、どうか牛乳を好きになって下さい。私共を愛して下さい。
そして立派な牧場主になって下さい。
乳牛一同、心よりお願い申し上げます。