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彫刻師貴族の一目惚れ  作者: ラヴィラビ
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プロローグ

今回は貴族の恋愛を描いてみました。広い心で気軽に読んでいただけると幸いです。

 リト・モーリスがその少女に出会ったのは暖かい春の日のこと。嫌々ながら王家主催のお茶会に出席した時だった。

 王家主催のお茶会。それは王族が国中の貴族を集めて王子や姫の結婚相手を探すために開かれる特別なお茶会だった。

 会場の中庭で彼女は沢山の子息令嬢に囲まれていた。何人もの子と挨拶を交わし、誰に対しても嫌な顔一つせず優しい微笑みを返していた。

 そんな彼女にリトは目を奪われていた。

 なんて綺麗な子なんだろう。真っ直ぐ伸びた長い黒髪に大人びた顔立ち。歳はリトと同じくらいだろうか。水色のシンプルなドレスで着飾った少女は周りの令嬢達に美しさでは決して負けていない。むしろ1人だけ抜きんでている。水色のドレスは彼女の白い肌をより美しく引き立てているし、真っ直ぐ伸びた黒髪にはカチューシャを飾っただけで引き込まれるような輝きを放っている。

 ただリトには少女を遠くから眺めることしか出来なかった。

 なぜなら彼女が公爵家の令嬢であることがすぐに分かったから。公爵家は王族に次いで権力のある爵位。対してリトは最も低い男爵家の生まれ。低い身分から高い身分に声をかけるのは社交界において失礼にあたる。

 とは言え、人と話すのが苦手なリトにとっては、ある意味ありがたいことだった。緊張で上手く話せないせいで少女に冷たい対応をされずに済むからだ。

 それに自分みたいなボサボサ赤毛のチビなんて相手にしている暇もないだろう。リトは心の中でそう思った。

 しかし、リトが諦めていると、ふと少女がリトの方を向いた。

 それが奇跡かリトの勘違いかは分からない。でも少女は確かに自分の方を向いて微笑み軽く手を振った。その事実だけで心臓の鼓動が早くなり、顔が熱くなってくる。

 リトは下級貴族だからと誰からも見向きもされなかった。そのせいか少女に優しい笑みを向けられるなんて初めてのことだった。ましてや手を振ってくれるなんて。風景の一部だとしても、自分を見てくれているような気がして嬉しい。

 リトは思わず隣に居た兄の後ろに隠れた。真っ赤になった顔を少女に見られたくなかった。

 これは何て気持ちなんだろう。嬉しいような、恥ずかしいような。一瞬の出来事にも関わらず彼女の笑顔が頭から離れない。リトは感じたことのない気持ちに戸惑った。

 出来ることなら少女に近づきたい。でも、身分が違い過ぎるせいで彼女の前に立つことすら出来ない。

 リトは今日の出来事を思い出として心の奥にしまっておくことにした。


 しかし、この時のリトは思っても居なかった。まさか自分が少女の前に立つことになるとは———


お疲れ様でした。プロローグの他に最終話まで投稿していますので時間が許す方は最後までお付き合い下さい。

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