Complete
目が覚めると、俺はさっきの通路に倒れていた。どうやらあのまま寝てしまっていたらしい。空は夕焼け色に染まっている。「もう、夕方……。左目も……痛く……な…い?」立ち上がろうとした時。
カサッ。
俺の足元で微かに音がした。
「なんだ?」拾い上げると、それは死神、ディアブルからの置き手紙のようなものだった。丁寧に羽ペンで内容が刻まれている、小説の中でよく出てくる所謂、契約書のようであった。
「檜佐木 湊さま。まず最初に言っておきます。僕は死神ではありません。悪魔です。でも、死神も統括管理下にあるので決して君が悪魔になったりする、なんて卑怯なことは致しませんので。ご安心ください。さて、君は明日から「死神」として活動してもらいます。君はただ、人の命を盗むだけで良いのです。詳細情報は契約によって成立しているペンタゴンからの脳内暗示にて通達してもらいます。それでは、頑張ってくださいね……、か。」(あいつは死神じゃなかったのか……。ま、悪魔なら嘘も平気でつくのかもな。)なんてことを考えながら、俺は明日から始まる死神生活に期待を募らせつつも、どことなく不安を抱いていた。