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  作者: 葉山光輝
昼鳶
1/10

Prologue

この世の全ては、俺にとってはどうでもよかった。

 俺は元々この世に生まれた時から神に見放されていたんだと思う。孤独、という言葉が一番似合う奴だと、は思っていた。あの日までは。

 遥か昔。人間界と妖魔界の二大勢力が、世界の主導権を握るために星間戦争を勃発させた。日本は軍事的な面では有利に立っていたが、妖魔界の妖力に逆らうことはできなかった。日本はその時、妖魔界と和解条約を結び、日本の経済社会に妖怪がうろつく日常が始まったのであった。


 「んで、あるからして星間戦争は日本の経済社会に大きな影響を与え……。」今日も教師が歴史の授業を行っている。教室では高校生がノートにメモをとっている。それを横目にしながら、俺は街中を歩いていた。本来なら、俺は年齢的には中学とか高校とか、その辺にいかなくてはいけないらしい。でも、俺はいかない。仕事があるからだ。

「さてっと。チャチャっと終わらせますか。」俺は白手袋を嵌めて、二階の窓から家へと侵入する。そしてタンスや食器棚の裏、引き出しなどありとあらゆる箇所を物色する。もちろん、ここは俺の家じゃない。簡単にいうと、俺は今、空き巣をしているところだ。詳細にいうと「昼鳶」といって日中に人がいない頃、空き巣を行う奴のことを言う。


「くそっ。今日は3万かよ」さほど厚くない札束を手に、俺は後始末をし、階段を堂々と降りて帰っていく。俺は何も知らない。態度から周りがそう見えるように仕向ける。もっとも、空き巣の犯人をこんな高校生もどきの人間が行っているとは到底考えないだろうが。

高校のそばを通って俺は瞑想に入る。もう、あの教師の星間戦争の話はとっくに終わっていた。


人間は「盗む」という行為に対して否定的な意見を持っている人が多い。何かと「盗む」ことをしたら指導が入るし、下手したら懲役や罰金を課せられる。俺には、その理屈がわからない。もともと俺は、親の生計が大変だということを知って、よく推理小説とかで出てきた盗みの手口を真似しただけなのに。こんなにも毎回上手く行ってしまうから、俺は、この快感が忘れられなくなってしまった。簡単にいったら盗みに執着しているといった方が的確だろう。

「今日の報酬で何しよっかな。」俺はいつもの道をスキップで走り抜ける。明日も、明後日も。俺は物を盗む。鳶のように平凡に生まれ育った俺が任せられた唯一の良点は「盗み」だった。

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