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ゲームには参加しません! ―悪役を回避して無事逃れたと思ったのに―  作者: 冬野月子


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33 ゲームの秘密

「ねえ。ラウル様って転生者なの?」

話をするために用意してもらった部屋に入るなりアリスが言った。


「どうして?」

「私の話についてこれたのラウル様だけだし、ゲームと全然性格違うし。それにゲームの内容とか言葉を理解できるのなんて、転生者しかいないだろうし」


「そうだよ。僕も元日本人だ」

アリスを見据えてラウルは言った。

「男なのにゲームやってたの? あれ女子向けだよね」

「男がやったっていいだろう。元々は姉の影響だけど」

「お姉さん?」

「この人が前世の姉だよ」

そう言ってラウルは私を指した。


「えー、やっぱあんたも転生者だったの!」

「……そうよ」

「怪しいとは思ってたけど。って姉弟で転生したの?」

「多分僕たち、同じバスに乗っていたんだ」

「バス?」

「君も吉祥寺行きのバスに乗って、事故に遭わなかった?」



「……ああ、やっぱあの時死んだんだ」

しばらく考えてアリスはそう言った。

「多分、その時三人とも同じゲームをやっていて、それでこの世界に一緒に転生したんだと思う」

「そうなんだ。でもどうやってゲームの世界に転生なんかできたの?」

「そこまでは知らないよ」

「ふうん。まあいいか、どうせ知ったところで生き返る訳でもないし」


「あの……それで、ありがとうございました」

私はアリスに向かって頭を下げた。

「あなたがゲームでシリル様のルートをやっていたおかげで助かりました」

「あんたたち、シリル様はやってなかったの」

「存在すら知らなかったよ」

「そうなんだ。まあシリル様は最初の期間限定イベントの隠れキャラだったからね、やってない人多いんだよね」

「え?」

最初の? ……あのゲームで遊び始めたのは発売してしばらくしてだったから……だから、知らなかったのか。

「期間限定だからってヤバい性格にしたんだけど、評判が良かったから他にも隠れキャラが出るようになったって聞いたよ。どれも死ぬルートがあるらしいって」

「……隠れキャラって、みんなそんな物騒なの?」

そんな人たちがこの世界に存在しているの?!


「他の隠れキャラって、誰なんだ?」

ラウルが尋ねた。

「さあ、私はシリル様しかやってないもん」

「やってなくても何か知らないか」

「さあ……あ、そうだ。今思い出した」

アリスはぽんと手を叩いた。

「期間限定イベントといえば、うちらが死んだ日、新しいイベントの予告がSNSに出てたの知ってる?」

「イベントの予告?」

「いいや」

「クリスティナがヒロインになってプレイできるんだって」


「え……」

私?

「王太子とか義弟との恋愛ルートとか、あと『あの幻の人気キャラが復活』ってあったから、多分シリル様じゃないかな」

(え、待って。それって……)

「まさか、この世界はクリスティナがヒロインの……」

ポツリとラウルが呟いた。


「ねえ。もう帰っていいかな。ヨセフも解放されたよね」

「ヨセフ?」

「一緒に何でも屋をやってるの。元騎士見習いで、あの怖い人が上司だったとかで、あんたを探すのに協力しろって連れてかれたの」

はあ、とアリスはため息をついた。

「あーあ、今日は割りのいい仕事があったんだけどなあ。それで馬車を買う予定だったのに」

「その分以上を出すよ。今回の事件解決に協力した謝礼として」

「え、うそ。やったあ」

ラウルの言葉にアリスは目を輝かせた。

「馬車があると仕事の幅が広がるのよね! これでもっと稼げるわ!」

「……君は今の生活が楽しそうだね」

「楽しいわよ。憧れてたのよね、稼ぎながら旅するのって」

笑顔でアリスはそう言った。




「クリスティナがヒロイン……」

アリスが部屋から出ていくと、私は呟いた。

ゲームとは関係なく生きてきたと思っていたのに……本当は、ゲームの世界そのもので。

「私がシリル様に攫われたのも、エディーや殿下に好かれたのも……その期間限定イベントのせい?」

知らない間にゲームをなぞって彼らを攻略していた?

そう思ったら、胸の奥がチクリと痛んだ。


「シリルが現れたのはゲームのせいかもしれないけど、クリスティナ嬢が彼らに好かれたのはゲームとは関係ないんじゃないかな」

ラウルが言った。

「……そう?」

「だって中身はねーちゃんなんだし。エディーも殿下も、見た目じゃなくて中身が好きなんだから」

「……そう、かな」

だったら……いいんだけど。


「それを気にするってことは、決めたの?」

「え?」

「殿下と復縁するのか、エディーを選ぶのか」

「それは……」

「まあ、助かった時の反応見てたら分かるけど」

え、分かる?


「あいつには可哀想だけど、でもクリスティナ嬢自身の気持ちが一番だから」

そう言い残してラウルは部屋を出て行った。


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