表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/16

#閑話 天上会議1


「一体どうなってんだよこの世界は!」

荒々しく猪口がテーブルに叩きつけられる。その衝撃音は、果て無く続く白い無機質な空間に吸い込まれ、静寂の後、猪口の中で酒が揺れる音だけが残っていた。

「今日はずいぶんとご乱心ねぇ」

大あくび交じりの声が答える。猪口はビキビキと音を立ていた。

「お前は!おかしいと思わねぇのか!?えぇ?!」

「わっ、ちょっ、ねぇ揺さぶらないでよ。吐くから、待って待って待って」


会議、一時停止。


再開。


「あんたねぇ......突然おかしいって言われたって、何の事かすら分からないわよ。」

湿った布を床に擦り合わせる音が、呆れた声と共に響いていた。

「この!世界の事だよ!見て分からねぇのか?!俺達が知らねぇうちにすっかり狂っちまった!俺はこの世界を救いてぇんだよ!」

荒々しい息遣いが、白い空間の空気を貪っていく。

「はいはい、誰でも願うことは同じなのね。

でも、おかしいったって、結局はいつも予想できないことばかりじゃない。最初からそんな事ばっかりでしょ?

それが面白いんじゃない」

クスクスという笑い声の後に、恐ろしい程に静かな間が遮った。

「でもこんな状況を、黙って見守れって言うのかよ」

静かに震える声が、再び無音の空間に吸い込まれては消えた。

「そうするしか無いじゃない。

どうにかったって、私達にできることなんてないんだし。私達にできることは、ほら、寝転がって、面白い結末をただ待つだけよ」

四肢が床に投げ出され、また大欠伸が広がる。

「じゃあ、俺たちは何のためにここにいるんだよ!」

行き場のない怒りが、無機質な空間に響いては消える。

「さぁ......尚更そんな事知らないわよ。更なる上位存在がいるのだか何だか知らないけれど。

私達にできることなんて結局いっつも無いじゃない。

いつの間にか他の皆も居なくなっちゃったし。ホント何が何やら」

言葉は軽く投げられ、行き場も無く消えて行く。

「何も出来ないってのがもどかしいんだろうが!じゃあなんだ、世界がこうやって魔法だか何だか訳の分からない物のせいで、仲間がいなくなって均衡もすっかり崩れちまって!ただただ壊れていくところを見守ってろって言うのかよ!」

怒りに満ちた声は、猪口の中の酒を再び揺らしていた。

「今日に限って何なのよ〜。

したいようにすればいいじゃない。私達に役目なんてないんだから」

欠伸が一つ、再び空間に溶けては消える。

「......そもそも、なんでアイツらは居なくなっちまったんだ?なんでアイツは海から出てこねぇ。なんでルキアはこの状況に何も言わねぇ!」

「そう思うなら、本人に聞きに行けば?向こうから出てこないなら、こっちから行けばいいじゃないの」

「それもそうか!お前、天才だな!」

「えぇ......」

呆れきった声が響き、また無機質な空間に吸い込まれていく。


今日も今日とて神は騒ぐ。

会議は進む。会議は進む。

けれども結末は出ず、何も導けず。


それでも会議は進む。会議は進むのだ。



「ふむ。最善ではないが善と言った所か。

召喚された者を手に入れられなかったのは惜しいが、この世界の者をこの世界に飛ばしただけと言うなら問題ないな。


そう焦る事でもない。

それだけで大きな収穫となったのだし、良しとしよう。」


白い衣服を羽織った男は、 デンワ と呼ばれる異世界の技術を応用して作った黒い箱をそっと棚に仕舞う。


「しかしアレの召喚に成功したということは、仕込みも成功しているはずだ。

早急に処分せねばなるまいな」


彼はそう言って、またブツブツと独り言を呟きながら、壁へと巨大な魔法陣を描いてゆくのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ