6日目
目覚めの良い朝だった。
今日は何も予定がない一日。暇だ。どこかへ行くにも金欠で厳しい。
家で大人しくスマホ音ゲーでもしていよう。
そう思って液晶画面を見ると、フリマアプリから通知が来ていた。
「『連打用マイバチ』にコメントが付きました、か……なんだろう」
僕は持っているバチのうち一セットをフリマアプリで出品したのだ。バイトを始めても給料を得られるまでには少し時間がかかってしまうだろうし、手持ちのお金では足りないと判断したから。
あと、僕は連打がそれほど得意ではなかったというのもある。
コメントの内容は、反発は良いですか? というものだった。
良いのだろうか。連打の下手な自分ではよくわからない。
だが、さらゆりかにこのバチを使わせたことがあった。
彼は僕よりも連打が上手く、ロール一振り二十打だったかな、それくらい出していた記憶がある。
その旨をコメントに返信しておいた。
それにしても、なぜ僕は連打ができないのだろうか……。
連打バチは今までに四セットほど使ってみたが、あまりにも上手く使えなく三セットはすでに売ってしまった。今売りに出しているバチが最後の一セットだ。
僕のロールの最高記録は一振り十七打。連打バチではなく万能型のバチで出した記録であった。
せっかくの最後の連打バチだし、売れる前にロールの練習でもしようかな。
そう思い僕はサイトで連打の方法を解説している動画を見た。
まず、軽く持って落としてみるだけ。
机に響く反発の音。
万能バチと比べてみると、連打バチの方が明らかに反発が良い。これを見て改めて僕はロールが上手くできていないんだなと感じた。
次に力を入れて反発させる。
先端がブレないように、というのがコツらしい。
こちらは万能バチの方が上手くいくのだ。なぜ周りのドンだーは細いバチを上手く反発させることができるのだろうか。
「ちょっとー、カンカンうるさいんだけど」
突然ドアの向こうから声が響いた。
この声は、姉の雪羽だ。
彼女は僕と隣の部屋。あぁ、確かにバチの音は響くだろうな。
下の階にいる両親にも聞こえていたかもしれない。
「ごめん、気をつけるよ」
そういって僕は連打の練習をやめた。
結局僕には連打バチでのロールは上手くできないのだろうな。
スマホを見ると、ちょうど
「『連打用マイバチ』が購入されました」
と通知が来た。さっきコメントをくれた人が購入してくれたようだ。
早く発送してお金を稼ごうっと。