3日目
僕は朝から一駅隣のショッピングモール内のゲーセンに来ていた。
本当は柏に行きたかったのだが節約しなくては。
お金がないのに今日も太鼓の達人をプレイするのには理由がある。
今日は、太鼓の達人ニジイロ2020ver.の稼働開始日なのだ。
グリーンver.は昨日で終わって新しくなった。
今まではイエロー、ブルー、グリーンなどと色からバージョン名が取られていたが、今回の大型アップデートではそれが変わる。
というか、バージョン名以外にも大幅に変わった。
選曲画面や、スコアの出し方や、細かいスピードや判定の調整機能など。
そして何より遅延の解消と液晶画面の変更。
この二つが一番の良い変更点だろうと思っている。
僕は、その大幅に変わった太鼓の達人をいち早くプレイしようと近くのゲーセンに来ているというわけだ。
朝早いこの時間なら学校の知り合いも少ないだろうし。
筐体に百円玉を入れて、バナパスをタッチする。
あれ、バナパスの読み込みが速くなったな。すごい。
新しい綺麗な画面に表示されるグリーン名人の称号を見て、僕は昨日のことを思い出した。
僕は腕慣らしで1クレ分プレイした後、すぐに段位道場をやり始めた。
最初は一曲目で思いっきり叩き間違えて落ちてしまったが、次のプレイでは可二つの差で不合格。
その次のプレイで可を三つ残して合格した。
こんなに早く終わると思っていなくて、さらゆりかと発狂した。
前日は昼から午後六時まで頑張っていても合格することができなかったのだが、この日はなんと三回目で終わってしまった。
最初の一クレと交通費を合わせても昨日かけたお金はたったの九百円だ。
名人に合格した後は、さらゆりかがラーメンを奢ってくれた。
今までの人生で一番美味しく感じたことを覚えている。
……と、昨日を思い返していたらどんちゃんから選曲時間残り三十秒の声がかかった。
そうだな、今日もまずは名人三曲目をプレイしよう。
僕のニジイロver.初プレイの感想。
「は? なんだよこれ」
一人なのについ声に出してしまった。
だって、無反応も多重も酷いのだから。
ここのゲーセンはショッピングセンター内にあるから、元々メンテナンスが良いという訳ではなかった。
でも、グリーンver.のときは普通にプレイできる程度だったのだ。ロール処理だとかは難しかったが。
そのはずだったのに無反応の頻発。
軽いマイバチでやっているせいかと考え、ハウスバチに変えてみると多重が酷い。
もう一つの筐体でもプレイしてみたが、同じだった。
確かに、画面は綺麗になった。今までと同じ感覚で叩くと早可が出て、遅延がなくなったことを感じられた。
だが無反応と多重が起きてしまえばゲームをするどころではなくなる。
楽しみにしていた大型アップデートなのに。
僕はがっかりして家に帰った。