22日目
週の初めだ。
拓哉におはよう、と挨拶をしたけどいつも通り笑顔は見せてくれなかった。
今日も話しかけることは控えた方がいいだろう。
そう思っていたが、やはりぼっちは辛かった。
特にこの荒れている学校では。
今日から授業が始まる。
最初の授業だから、先生の自己紹介やこれからの授業方針、ルールなどについての話が中心だった。
皆私語ばかりでまともに聞いていなかったが。
だが、四時限目での英語の授業で事件は起こる。
ペアを作って英語での自己紹介をするという時間だった。
「じゃあ自由にペア作ってー、適当にやってていいから」
そう英語の先生が言った途端、すぐに二人組で話し始める周りのクラスメイト達。
「マイネームイズユウト!!」
「アイラブユー♡」
「アイイズヒューマン!!!!!!」
ほとんどの人は内容ふざけてるし、発音できない僕が言えたことじゃないけど、思いっきりカタカナ発音だし、わざとだろと思うような文法の間違いも聞こえてくる。
だけど先生は一応英語を使っているクラスメイト達を見て満足そう。
僕はというとペアなんて作れるはずがなく。
「ん? 晴斗なんで座ってんだ。ペア探しに行け」
先生にこう言われてしまった。
どうしようか……。
そう思って周りを見てみると、一人だけ僕と同じように黙って席に着いている人がいた。
拓哉だ。
彼はまるで休み時間中みたいに、堂々とスマホを触って座っている。
話しかけない方が良いと思ったけど、拓哉の他にはペアになれそうな人はいない。
なら、仕方ないだろう。
僕は彼の席へ歩き出した。
「拓哉、ペア組もう?」
「……うん」
あっさりペアを組むことができた。
拓哉は塩対応だけど、僕を突き放すような事は言わないんだよな。
本当に嫌われているのかわからなくなってくる。
とりあえず僕から自己紹介をすることになった。
「ハロー、マイネームイズハルト。えっと、マ、マイホビーイズゲーム」
……。
英語は苦手なんだよう。
次に拓哉の番。
彼も僕に合わせたのか名前と趣味だけを言ったようだ。
でも、カタカナ発音に慣れてしまった僕では聞き取れないくらい、発音が良い。
拓哉ってもしかして頭良い人?
「え、すごい発音いいね」
素直に褒めた。
「そうかな、ありがと」
彼はそっけない。けど、心なしか笑顔を浮かべているような気がした。
放課後、僕は銀行へすぐに向かった。
昨日のバイト代がもう振り込まれているはずだ。
ATMに通帳とキャッシュカードを入れ、残高を確認する。
画面に映っていた残高は、七千円とちょっと。
「あれ?」
おかしい。
僕は時給千円で八時間働いたはずだ。
通帳記入で振り込まれた額を確認すると、六千七百円だった。
どうしてだろう。
即座にスマホを開いて、メールを見返した。
確かに時給千円、八時間勤務と書いてあるぞ。
「……あっ。」
メールの隅から隅まで確認しようとして、ある文章をすぐ見つけた。
そして僕はメールを最後までしっかり読んでいなかったことを後悔した。
『翌日振込の場合は手数料として給料の十パーセントを頂きます。また、初回の方は登録手数料五百円を頂きます。』
そんなのってアリかよ。
メールをしっかり見ていなかった僕が悪いか……。
はぁ、お金を稼ぐのって、大変だな。