21日目
「えっと、ここで合ってるはずだよな」
午前八時二十分、最寄りの隣の大きな駅の近く。
僕は独り言をつぶやきながら、とあるバスを探していた。
そのバスというのは、今日のバイト先への送迎バスだ。
昨日の夜、ゲーセンから帰った僕は特にすることがなく暇だった。
ふと、ならこの時間に日雇いのバイトを探せば良いのでは? と考え、僕は求人サイトを覗いてみる。
高校生も募集している日雇いの求人はシール貼り、倉庫内軽作業、梱包作業、検品などの種類がある。
そして、ほとんどが事前の面接が必要だ。ウェブ面接というのもあるらしいが、友達以外との電話が苦手な僕は、できれば面接は不要な所が良いなと思った。
何件も求人の詳細を見て回って、ようやく見つけた面接不要の勤務先。
なんとメールで名前や住所など、個人情報を送るだけで登録は完了する。
翌日から働くことができることのことで、僕はすぐに翌日勤務希望のメールを送った。
すると、早速勤務先が決まったのだ。
こんなに早く日雇いのバイトができると思っていなかったな。
送迎あり。
勤務内容は検品作業。服装は自由。
八時間勤務で時給は千円。
支払いは翌日、銀行振込。
悪くないだろう。
だが、送迎バスが中々見つからない。
早めに来ておいて良かったが、迷っているうちに集合時間を過ぎてしまうかもしれない。僕はバスを探し回った。
五分後にようやく見つけることができた。
どうやら僕は場所を勘違いしていたようだ。
遅刻せずに済んで良かったぜ。
正直、日雇いというから怖いおっさんとかが多いのかと思っていた。
しかし乗客の中には若い女性もいて少し意外だった、というのが感想。
バスに乗って三十分ほど経ち、勤務先に着いた。
到着後の詳しい説明は無かったのでどうしたらいいんだろう、と思っていた所、他の乗客達が次々にバスを降りどこかへ向かっていく。
僕みたいに周りの様子を見てオロオロしている人は一人もいない。
もしかして、皆は日雇いで来ている訳ではではないのだろうか。ベテランかな。なんだか怖い。
周りの人達に着いていくと、靴箱がたくさん積まれている倉庫に到着。
靴の検品をするようだ。
始めての人はこっちへ来て下さーい、とどこからか声がする。
声の方を向くと、私服の人達の向こうに一人だけスーツ姿の人がいた。その人は僕を見つけると声をかけてきた。
「お、君始めて?」
「はい……」
「そっか、それじゃあ検品のやり方を教えるから」
検品方法は、靴やタグに汚れが付いていないかを確認して仕分けるだけだった。
簡単じゃないか。
こんなことで時給千円ももらっていいのかな。
「高校生かな?」
方法を教えてもらった後、聞かれた。
「そ、そうです」
「若いのにえらいねぇ」
褒められた。わーい。
その後、僕はすぐに人生初のお仕事に取り掛かった。
作業内容は確かに簡単だった。
だけど、休憩はあるが八時間も立ち仕事はきつい。
終わった頃には足がかなり痛かった。
お金を稼ぐ大変さが少しわかった気がするな。
とにかく、これで僕は八千円をゲットしたということだ。
明日銀行に行くのが楽しみだな。