18日目
今日は遅刻することなく、無事始業三分前に教室に到着した。
朝のホームルームを終える。
よし。
拓哉に話しかけに行くぞ。
拓哉とは友達……になったのだろうか。
彼から話しかけてくることは一度も無かった。
だが、僕から話せば無愛想な感じではあるが相槌を打ってくれる。
最初は拓哉はコミュ障で緊張しているだけなのかもしれないと考えた。
でも、僕が頑張って話題を振りまくった結果、会話の回数自体は結構多くなったのだが、相変わらずだ。
彼の会話スタイルは、きっとこうなのだろう。
そう思っていた。
拓哉はホームルームが終わるとすぐに教室を出てしまう。
僕は彼を追った。行き先は一年E組。
E組の教室のドア前にいた生徒が、拓哉に話しかけた。
すると二人はとても明るく話し始めたのだ。お互いに高校生活の様子とか、言い合っている。
……あれ? 拓哉が自分から普通に喋っているぞ。
二人の話を立ち聞きしていると、話題はなんと音楽ゲームの話に変わった。
どうやら彼等はバンドリというスマホ音楽ゲームのプレイヤーらしい。拓哉じゃない方は茶髪ピアスのいかにも陽キャという感じの人だから意外だ。
そうか、きっと二人は趣味が合うから会話が盛り上がるのだろう。あの様子を見るに相当打ち解けているし。
バンドリなら、僕も少しプレイしている。
同じ話題で盛り上がれるじゃないか。
彼等の話が終わるのを待っていたら、チャイムが鳴った。
まずい、教室に戻らなきゃ。
着席すると、担任の先生が言った。
「大体揃ったみたいだし係決めするぞー」
クラスのリーダー、そして副リーダー。
美化委員、図書委員、体育委員、放送委員、イベント実行委員。
黒板係、自転車係、号令係、便利屋係など。
様々な役割の中から一人一つ選んでいく。
僕は特にやりたいと思う係がなかったから、周りの様子を見てから決めることにした。
やりたくない係ならあるけどな。リーダーとか、死んでもなりたくない。
「じゃあまず、リーダーやりたい人手あげて。お、佐々木だけか。なら決定だな。
次、副リーダーは? 水野と木村か。二人じゃんけんしろ!」
このように、順番に立候補する人が決まっていく。
そして。
「次、放送委員」
拓哉が手を上げた。
僕もつられるように手を上げる。
同じ委員になれば話す機会を得られるだろうと思ったから。
「えーっと、三人でじゃんけんな」
もう一人立候補していたため、じゃんけんをした。
負けた。
結局、僕は体育委員になってしまった。
リーダーほどじゃないけど、い、嫌だ……。