12日目
僕達は松戸にやってきた。
今日も太鼓の達人をプレイしに。
さらゆりかはまた尖閣をしていた。
一切の躊躇なく、当然のように改札を通っていく姿を見ると、彼は何度も尖閣をしてきたのだろうなと感じてしまう。
正直、やめさせたい。一番仲の良い友達が犯罪行為をしているのだ。
でも指摘したら彼は僕と遊ばなくなってしまうのでは、という不安もあった。
とりあえず、見て見ぬフリをすることに決めたのだ。
ぼ、僕はちゃんと運賃払ってるからね!
さらゆりかは下の階にあるトイレに行くからと、先に太鼓やってていいよと言われた。
というわけでゲーセンに入ると、太鼓をすでにプレイしている人がいた。
女子高生、一人だ。
彼女の来ている制服は確か、松戸北高校のだろう。僕の姉である雪羽と同じ高校である。
一人で太鼓の達人をしている女性はなかなかいない。僕は少し彼女のプレイを眺めていた。
難易度は星七で、使っているのはハウスバチ。
クリアがギリギリだから初心者ドンだーのようだ。でも、運手が交互だからきっとこの子は伸びるだろう。
僕は最初ヴァーナス、利き手を多く使う運手だったから上達するのに苦労したな。
称号はなし。名前はれなぷぅ。
名前には聞いた覚えも見た覚えもなかった。
だけど、彼女の姿になんだか既視感があった。どこかで会ったこと、あるのだろうか……。
あぁ、思い出した。
らさっきぃさんとここで太鼓して騒いでいたとき、僕達のことを後ろで見ていた人だ。
あと、さらゆりかの前にバナパスを購入していた人。今まで気づかなかったが同一人物か。
明るい髪色の女子高生だから僕の記憶の片隅に残っていたのだ。
僕は彼女の隣の筐体に百円玉を入れる。
一曲目、好きなボカロ曲を選択した。難易度は星九だ。
プレイ中、なんだか隣から視線を感じた。
曲が終わって後ろを向いたらさらゆりかが戻ってきていた。
「あの子かわいくね?」
彼は隣の女子高生を見ながら言う。
「んー、確かにかわいいかな」
「やっぱり?」
さらゆりかに聞かれて、僕は彼女の顔をそれほどよく見ていなかったことに気づいた。
見てみると中々かわいい。
顔立ちは僕の中学時代のクラスなら三番目くらいになるだろうか。
茶髪に茶色の瞳、そして色白だから垢抜けている感じだ。モテそうだな。
さらゆりかはその子をニヤニヤしながら見ていた。
変なこと企んでないだろうな……。