11日目
「はい、これ今月の小遣いね」
「ありがとうお母さん」
四月一日。
今日から僕は高校一年生だ。
入学式はまだもう少し先だけど。
月の初めということで、母親にお小遣いをもらった。
金額を確認してみる。三千円。
進学したからと金額が増えていないか少し期待していたが、今まで通りであった。
そして、今日はフリマアプリからの振込予定日である。マイバチの売上だ。
これで少しだけお金に余裕ができたかな。
高校一年生にもなったからバイトをすることができるし。
僕はまず、来週の土日のどちらかで一日だけのバイトをし、手渡しですぐに給料をもらう。その後に継続してできるバイトを探す。
こんな予定を立てていた。
これからは太鼓の達人もたくさんできるし、さらゆりかや他の友達ともたくさん遊びに行ける。
遠征だってしてみたい。関西とか、遠くのドンだー達に会ってみたい……!
あとは、高校でドンだー以外の友達も作ろう。
中学ではプライベートで遊びに行くような友達はできなかった。だが、環境が変わるのだ。チャンスだ。
学校帰りに寄り道もできるようになったから、カラオケとかゲーセンとか行ったりしたいな。
僕は、高校生活への期待で胸を膨らませていた。
そんな時、スマホの通知音が鳴った。
さらゆりかからのラインだ。
「今日から僕達高校生だね! お互い頑張ろう! 僕は明日まで千葉にいる予定だから空いてたら明日遊びたいな。茨城に引っ越してもよろしくな!」
え。
茨城? 引っ越し?
聞いてない、そんなこと。
僕はすぐに彼に電話をかけた。
「お、チルから電話くれるなんてめずらしいな! 明日遊べるのか?」
彼は普段通りの声でそう言う。
「ちょっと待ってよ、茨城に引っ越すなんて聞いてないんだけど? 明日絶対遊ぶぞ!?」
「ん……? あはははっ、もしかして信じちゃった?」
いやー、普通気付くだろー、と笑っているさらゆりか。
えっ、嘘なのか?
「あ」
今日は四月の一日じゃないか。
エイプリルフールだということを完全に忘れていた。完全に騙された。
「明日遊べるんなら普通に遊ぼうぜ」
「うわああああああっ」
こうしてまた僕達は遊ぶことになった。
やられたけど、さらゆりかとこれからも遊べるのだから安心したよ……。