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実験作  作者: げるとう
4/13

不快

世の中には明るい話題も暗い話題もある。

どんなに暗澹たる年にさえ明るいニュースは存在するものだ。

しかし個人の話となると別である。

本当に暗い出来事しか起きない人もいる。

そういう人は原則として心を病むのだ。

「っていう話がモーニングニュースにあってさ」

「時節柄、明るいニュースが流しにくいっスもんね」

いつの記憶だか、あまりはっきりは覚えてないのだが。

そんな会話をした覚えがある。

「クレームを入れる人とかっているでしょ?」

「いますね」

「本当に辛い人はクレームを入れないんだって」

つまり、クレーマーってのは余裕がある人だから相手にするのは云々。

いやいや、クレーム来るぞそれ。

「でもさ、本当に暗いニュースばっかだよね」

「あー、最近は猟奇的な通り魔事件も続いてるしね」

「そうそう。あれ、まだ犯人捕まらないんだって?」

最初はあんなに「すぐ解決する!」みたいなこと言ってたのに。

「途中から犯人像がぐちゃぐちゃになっていったらしいな」

「ここだけの話なんだけどさ」

おばちゃんが割り込んできた。

「最初の方の被害者、いるでしょ?」

「最初って言うと……若い女の子?」

「そうそう。次の事件から全部、その子のDNAとかも検出されてるんだって」

「……死人の?」

「それどころか、事件の度に前の事件の被害者の痕跡が増えてくって」

「随分なホラーだね」

誰が?何のために?

その場にいる皆がそんな感想を抱いているようだった。

「仮に、目的があるわけじゃないとしたら……」

「……返り血とか付けたままってこと?」

「最初の犯人とされた人の痕跡は毎回見つかってるのよ」

「じゃあ、やっぱりその人が犯人?」

「でも、最初の犠牲者の痕跡も毎回見つかってる」

「……犯人が、毎回少しずつ置いていってる?」

「何のために?」

「…………さあ」

何か目的があるにしても狂気じみた行動だ。

仮に捜査攪乱のためだとしても、そもそも怪し過ぎて危険だろう。

だからこそやるとは普通、思わない。

「じゃ、ぼくはこれで失礼します」

「あ、はーい。また明日ね」

おばちゃんとほか数名の世間話から抜けて足早に裏路地を往く。

自分には大事な用があるのだ。

……ところでだ、こんな言葉がある。

深淵を覗く者は、深淵に覗き返される。

あまり暗い出来事に目を向け過ぎていると、自分も暗い気持ちになる。

強い憎しみを抱いていると、強い憎しみを向けられることになる。

目の前にあるのはヒトの形をした……のかどうかもやや分からなくなりつつある、何か。

触れれば吞まれてしまいそうな、その何かに手を伸ばし……

その日、1人の男が闇に沈んだ。

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