42話 謎の光
「さぁ行くよ」
ネアン達は10階へと踏み入れた。
5階毎にダンジョンの敵は強くなるのだが、その節目ごとに必ずと言っていい程ボスが現れる。
そして、その現れたボスは次の階からは普通に多く出現する。RPGゲームもビックリする程に早い格落ちである。
「9階と出てくるシャドウは変わらないが、ボス部屋があるはず。部屋に入るときは十分に気を付けるよ」
「わかったにゃ」
そろそろ瘴気の壁と天井に見飽きてくる頃だが、そうも言っていられない。
「居るよ。戦闘準備」
「にゃ!」
シャドウは今の所、問題なく処理できている。
――バンッ!
「よくやった! 後は私に任せて」
「任せたにゃ……!」
ネアン達は順調に10階の最後のフロアへと進んでいった。
・・・
「ふおお……瘴気の濃さが全然違うにゃ。いやでもここがやばいって分かるにゃ」
「そうだね……多分シャドウウォーカーやシャドウナイト辺りが出ると思うけど……」
「にゃるほど……」
「フォルチー、シャドウナイトが出たら一人で戦闘して見ようか」
「え! シャドウナイトって結構強いんじゃないのかにゃ?」
「強い……けど外来種のフォーム1の足元にも及ばない。ナイト相手にどれ程か念のため確認しておきたいんだ。他のシャドウは全部私が処理しよう」
「わかったにゃ」
(フォルチーなら一瞬で処理できるだろう。だが、徐々にステップアップするに越した事は無い……戦闘経験は重要だ)
「よし、行くよ」
そうして二人は瘴気の濃い部屋へと足を踏み入れた。
「グォォォ……」
「シャドウナイト2体とウォーカーが4体か」
「ひぃ、数が多いにゃ!」
(ネアン)――シャイニング・レイ
ホーリーランスに形態、形状変化、状況によって移動術式を追加
無数の光の槍をを魔法陣から出現させる。
ネアンの魔法は光の槍を複数出現させ、シャドウナイト1体を残し、全滅させた。
――シュゥゥゥ……
「どうぞ」
「仕事がはやいにゃ……」
そう言いながらもフォルチーは構えた。
(シャドウナイト)――シャドウブラスト
瘴気を溜め、剣を振り切る。半月状の影と瘴気を放つ
「にゃ!?」
シャドウナイトが剣を振り上げると同時に衝撃波が飛んできた。
フォルチーはそれを咄嗟に避けた。
(流石だ。十分に回避が間に合っている)
ネアンはヒーリングライトを描きかけていたが、それを解除した。
「シャドウナイト以降は剣技や魔法を使う場合がある。気を付けてね!」
「もう少し早く言ってほしかったにゃ!」
フォルチーはそう言いながら魔方陣を描き始めた。
「こうなったら全部出しにゃ」
フォルチーはまた毛を抜いてシナジースペルを3つ生成した。
ファイヤスピアx獣毛(猫耳種)
アイススピアx獣毛(猫耳種)
サンドスピアx獣毛(猫耳種)
――ボンッ!
フォルチーの描いた魔法陣から3匹の猫が現れた。
サンドはフォルチーの周囲に留まり、火と氷はシャドウナイトに向かって行った。
「これもくれてやるにゃ!」
(フォルチー)――エアカッター
ウィンドボールに形状変化、移動術式を追加し射出
鋭い風の刃を放つ。
エアカッターでシャドウナイトの足を切り裂いた。
シャドウナイトはそのまま体勢を崩し、そのタイミングで火と氷の猫がコアにめがけて飛んでいった。
――ザシュッ!
猫がぶつかり合い、水蒸気が発生した。
そして、シャドウナイトのコアは破壊され、そのまま消滅していった。
「ふう。一匹なら何とかなりそうだにゃ」
「お疲れ様。初めてなのに凄いよ」
(それに召喚魔法みたいで楽しそうだな……私も使いたいなあの魔法……しかし毛を抜くのは……)
「なんだか反応が薄いにゃ……」
「え? そんな事無いよ! 本当にすごいよ! 流石フォルチー!」
ネアンは勝利より、シナジースペルへの興味が勝ってしまっていた……。
・・・
・・
・
――あれから9日後
二人は既に19階まで到達していた。
ダンジョンの内部も下に行くにつれて広くなり、1日1階降りる程の速度まで下がっている。
このペースで最下層まで行ければ1ヵ月と半月で程で到着だが、そうは行かないだろう。
「何だか少しづつ寒くなって来てるね」
「寒いのは苦手だにゃ……ネアン!」
「おっと……」
フォルチーはネアンに飛びついた。
どうやら膝枕をされるのが好きなようで、最近の寝る前はこうなる事が多い。
「にゃ~。頭を撫でで欲しいにゃ」
「ふう……しょうがないね」
そう言って、ネアンはフォルチーの頭をガシガシ撫でた。
「にゃはは……」
膝枕……最初の方は頑なに断っていたネアンだったが、毎晩お願いしてくる為ネアンは遂に折れた。
(相変わらずふわふわな髪だ……猫を撫でるとこんな感じなのかな……)
そんな事を思いながらネアンは、膝にフォルチーの頭を乗せながら眠りについた。
・・・
・・
・
「ついに20階かにゃ!」
「ああ、また強い奴が現れるはずだよ。気を引き締めて行こう」
そうして20階についた時、バッグから違和感を感じた。
「ん……?」
ネアンはバッグを開けると、シャドウノヴァの柄が少し光っている。
「光ってるにゃ」
ネアンは柄を手に取った。
すると、非常に細い光の線が揺らめきながらどこかへ伸びている事に気がついた。
「フォルチー、君にも見えるかい?」
「光る線にゃ? 見えるにゃ……」
「なんだろう。ちょっと行ってみようか」
「了解だにゃ!」
そうしてネアン達は細い光が向かう方へと進んでいった。
・・・
・・
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