36話 実戦練習の末
――ウォンド側
「スンスン……イミー、二人は動きを止めたようだ」
「そうやね。あのロックウォールの中におるみたいや」
「なるほど……四方を壁で塞いで一旦様子見と言う訳か……」
「ほんなら近づいて上から乱射すれば勝ちちゃうか!」
「よし、慎重に近づいて上から一斉射撃だ!」
二人は四方をロックウォールで囲まれた壁にゆっくりと近づいて行った。
「いくぞ……!」
「よしきた!」
イミー達は岩壁を足で蹴って一気に登って行った。
「よっしゃ貰った! ――ッ?!」
勢いよく飛び出し、岩壁の中を見たが、二人の姿は無かった。
「服だけ……?」
――ドンドンッ!!
「ぐあ!」
その瞬間、中心の塔から2発の発砲音がした。
塔の上にはライフル型トリガーを構えたさなえとツグユが居た。
「まさか服脱いでるなんて……」
イミーとマージャスは退場となった。
・・・
「さて5人ともお疲れ様! 1回目はさなえ達の勝利ね」
「わーい!」
「イミー達はハンバーガーの匂いを探知できるようにしたのはいいけど、しっかりと視認した上で狙撃するべきだったわね。焦り過ぎよ? 大体の位置把握だけでは当てる事は出来ないわ」
「くー! まだうちの嗅覚は完璧じゃないみたいや……」
「そうね。そっちの修行もしっかりしないといけないわね。匂いだけで目を瞑っていても全ての景色が把握できるくらいにね!」
「それが出来るのは獣人族の中でも一握りやで先生……」
「あと今ので見えた課題を描いていくわ。よく聞いてね」
そうしてイオエル率いるさなえたちのチームはその後も実戦練習を行い、精度を高めていった。
・・・
・・
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「さなえちゃん、今日はいっぱい動いて疲れたね!」
「そうですね」
さなえたちは汚れた服を洗っていた。
――カランッ
その時、さなえの服から5cm程の真っ黒なサイコロが落ちた。
「さなえちゃん、それ何ー?」
「え? ああ、何でもないですよ。ただの石です」
「ふーん。綺麗な石だね!」
「そうですね」
さなえはそそくさとその石をポケットにしまった。
――「それを額に当てて、白い部分を押してください。貴方の記憶障害が治りますよ」
ゼンレの言った言葉がさなえの脳内で響いた。
(記憶……あたしは正直このまま……今のままで幸せ。だけど……)
さなえはツグユを眺めた。
(もし……あたしが犯してた罪なのであれば……責任を取らなければなりません……)
「さなえちゃん? どうしたのぼーっとして!」
「何でもないですよ! さ、帰りましょうか」
そうしてさなえたちは宿へと帰っていった。
・・・
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