34話 新たなる魔法
中に入ると、目の前には大きな大穴が開いており、降りる為の階段が伸びていた。
そこをどんどんと降りて行くと、豪華で大きな扉が構えていた。
――キィ……ガタン!
扉を開いた先には真っ白の円形ホールのフロア
扉から見て奥には玉座があり、更に後ろには黒く輝く大きな宝珠が台座の上で浮かんでいる。
ここは、フィアンとネビアが最後に……自身を封印した場所だ。
「フィアン、ネビア……君達の魔力と闘気を感じる……優しい力だ‥…」
ネアンはそっと宝珠に触れた。
もう二人の声を聞く事は叶わない。だがそこに居る……存在感は感じ取る事ができた。
ネアンはそのまま、少し目を閉じて思い出に耽っていた。
・・・
「さて……始めようか」
ネアンはゆっくりと目を開けた。
(ネアン)――天衣・無明法典
ネアンの背中からは翼が出現した。
その状謡で両手を宝珠に当て、力を込め始めた。
――シュゥゥゥゥ……
「ぐ……う……!」
ネアンの翼から無数の小さな羽が散っていく。それはとてつもない輝きを放ちながら四散した……そして、その羽は吸い込まれるように宝珠に吸収されていった。
「結構……きついな……!」
大汗をかきながらも、ネアンは宝珠に力を全力で注いでいく。
翼は徐々に剥がれて行き、最終的には完全に失われてしまった。
――シュン……
「――かはぁッ!」
ネアンは苦しそうな声を出し、膝をついた。
宝珠は以前より更に輝きを増しているようだ。
「はぁ……はぁ……」
ネアンは自身の震える両手を見ながら呟いた。
「肌で感じるほどに……魔力と闘気が落ちている……」
(あんまり無駄撃ちは出来ないな……多分上級魔法なら1万発も撃てば魔力が尽きてしまうだろう……)
有限とは言え、それでも規格外だと気づいていないネアンだった……。
・・・
(とにかく、新しい魔法を描いてみるか……)
ネアンはいつも通り、ライトペイントを操作し、ベーシックバレットの魔法陣を描いて発動しようとしてみた。
――パリンッ!
「……え!?」
(まさか代償が無くなっていない……!)
そう思ってネアンは次にウォーターレーザーの魔法陣を描いた。
(ネアン)――ウォーターレーザー
水を形状変化し、超高速で射出する。
スペルシールドを貫通する威力を誇る。
――ガンッ!
「発動できた……!」
ネアンは安堵したと同時に、街できいたトリガーに関する話をふと思い出していた。
「そうか。バレット系の魔法は、トリガーにも魔法陣が組み込まれていて、カードをそこに重ねないと発動しないんだったな……」
ネアンは一通りの魔法を試した後、その場を後にした……。
「……」
「グォォォ……」
「こんな所にまで……」
箱から出ると、目の前にはフォーム2が2体……今にも襲い掛かろうとしている所だった。
「あの時と同じ二体か……」
ネアンはそのまま、間髪入れずに魔法陣を複数生成した。
(ネアン)――ウォーターレーザー
魔法陣からは複数のウォーターレーザーが射出され、フォーム2を容易く貫いた。
「グォォォォ……」
そのままフォーム2は二体共消滅していった。
「……相当魔力を使う……その量は天級魔法以上だが、威力は規格外だな……」
(だが、これできっと二人を守る事ができる……!)
ネアンはそのまま、祠へと向かった。
・・・
「さて……どうだ!」
ネアンは来た時と同じく、ありったけの魔力と闘気を込めた。
だが、魔法陣は一切光ったりせず反応を示さない。
「……やはりダメなのか……」
有限とは言え相当な量の魔力を持つネアンだが、それでも転送装置を発動させるほどの力は失っていた。
「ぐ……!」
ネアンは諦めず、何度も……何度も挑戦した。
「だあ! 駄目だ……」
ネアンは大の字で地面に寝転がった。
「魔力も闘気もほぼ使い切ったのに、光もしない……と言うかこの疲労感……久々な感覚だ……」
今まで、体力的な疲れを知らない身体だったネアンは、久々に感じる疲労感を懐かしんだ。
そして、そのままその場で眠りについた……。
・・・
・・
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