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32話 決意の時

「リングスペル[フォーム1:スターライトストライク]キドウ……」

「リングスペル[フォーム1:スターライトストライク]キドウ……」


(さっきと違う事を言っている……!)


 2体の背中のリングは一つだけ上空へ飛んでいった。

 そのリングから魔方陣が発動したかと思えば、巨大な光り輝く隕石が二つ飛び出してきた。

 それは空中で一つになり、地面へと激突した。


――チュドン!!!


「熱ッ!」


 地面に着弾すると同時に熱風が広範囲に広がった。

 ネアンはかなりの火傷を負った為、即座にヒーリングライトを発動し治癒した。


――ドンドンッ!


 ネアンは光っている目や関節部に銃弾を撃ち込んでみたが、効果は薄そうだ……。


(駄目か……シャドウみたいにコアがあればわかりやすいんだが……!)


「リングスペル[フォーム2:オルタレーション]キドウ……」


「またか……! 発動前に言葉にしてくれるのが救いだ……」


――ドンッ!


(ネアン)――閃光脚!


 ネアンは魔法を回避し、一気に詰め寄った。


――ガッ!


 外来種の肩に立ち、首にある隙間へと銃口を向けた。


「これでどうだ!」


(ネアン)――キャノンバレット!

――ガンッ!!


 ネアンはトリガーを引いた瞬間後退した。


――チュドン!!


「グォォォォ!」


「どうだ……!」


 外来種は全身の隙間から煙を噴き出して動かなくなった。


「動かなくなったが……魂片にならない……!」


「リングスペル[フォーム2:オルタレーション]キドウ……」


 もう一体の方がネアンに向けて再度魔法を放とうとしている。

 その時、ネアンにある作戦が浮かんでいた。


――ドンッ!


「お前がこれに当たったらどうなる?!」


 ネアンは煙を吹いた外来種の腕をつかみ、オルタレーションにぶつけた。


――バリンッ!!


「グォォ……」


「よし! 上手く行った!」


 オルタレーションに直撃した外来種は全身粒子となっていった。

 トップたちと同様に粒子はその場で停滞している……。


「さて……こいつはどう倒すか……」


(流石に撃った後にあいつを引っ張って当てるのは厳しい……)


 ネアンはそう言いながらバレットカードを手に取った。


(キャノンバレットは後2枚……)


「リングスペル[フォーム2:オルタレーション]キドウ……」


――ドンッ!


「くそ、少しくらいゆっくり考えさせてくれ……!」


 その時、ネアンにはオルタレーションが壁に着弾し、壊れる様を見た。


 まるでガラス玉が砕け散るようにバラバラになり、地面に落ちきる前に粒子になり消えていた。


(少し触れただけで身体が粒子化するから触る事は出来ない……だがこの魔法は岩魔法と同じく、しっかりと質量がありそうだね……)


――ザシュ!!


「が――ッ!!」


 外来種はオルタレーションに気を取られていたネアンの腹部を突き刺した。


「ぐぅ……しまった、近距離攻撃も出来るんだったな……」


 ネアンは咄嗟に後退し、ヒーリングライトで治癒した。


(危ない……後20㎝上だったら心臓を一突きだった……。しかし、魔装魂をいともたやすく突き破られるとは……)


 ネアンはそのまま外来種と距離を取った。

 何度も近づいて来ては斬られそうになるが、不意を突かれなければ当たる事は無い。


(さぁ撃ってこい……)


「リングスペル[フォーム2:オルタレーション]キドウ……」

「きた……!」


 ネアンはそのまま正面で構えた。


――ドンッ!


(ネアン)――ロックウォール!!


 ネアンはオルタレーションを射出されたと同時にU字になった岩壁を出現させた。

 するとオルタレーションはそのU字に擦れ、そのまま外来種の元へと帰っていった。


――バリンッ!!


「グオオオオ!!」

「よし!!」


 外来種にオルタレーションは直撃、そのまま粒子と化していった。


「……はぁ……はぁ……やった」


 緊張の糸が切れてしまったのか、ネアンはその場で膝をついた。


「トップ……テコン……」


 ネアンは二人の魔法装具一式とトリガーを拾い上げた。


「というより……粒子は停滞したまま……これは一体……」


 ネアンはその粒子に触れようとするも一切触れる事ができない。

 その場で見えているのに、干渉が一切できないのだ。


「昔は死んだときに魂片に還った……今は死ぬと死体として自身の身体は残るが、この状態は魂片に近いな……」


 1000年以上前、この世界では生物は死ぬと魂片に還っていた。寿命が尽きて死ぬ時、誰かに殺される時……どんな死を迎えても、綺麗な粒子となって上空へと消えていくのだ。

 だが今の時代は違う。

 魔力の高い者は魂片となり、魔力が無い者は死体として残るのだ。

 宗教的な話になってしまうが、魔力の無い者は魂片に還る資格がない。そもそも魂片の帰る道へ乗る事ができないと言われている。


 ネアンは二人の粒子を前に考えこんでいた。

 魔力が無い二人が魂片になった理由……そして停滞している理由を……。


 だが、その時……


「――ッ! 何か来る……」


 ネアンは瘴気が既に晴れている入口への道から誰かが来る気配を感じ取った。

 咄嗟に向こう側の通路に隠れ、気配を消した。


――ザッ……ザ……


 昔のテレビにあった、砂嵐の画面の音が断片的に聞こえる。


 その音は徐々に近づいて来ていた。


(あれは……リングが3つ……フォーム3か……!!)


 ネアンの様子には気がついていない様だ。

 フォーム3は粒子の前に立ち、声を出した。


「リングスペル[フォーム3:スフィアゲート]キドウ」


(新たなリングスペルか……!)


 フォーム3がそう呟くと、背中のリングが3つ正面で三角形に並んだ。

 すると、その中心に白い渦の様な物が発生……粒子がそこへ吸い込まれていった。


(私が一切触れる事ができなかった粒子をすべて吸い込んでいる……)


 フォーム3はそのまま4つの粒子の塊を全て吸い込んでいった。


(なんなんだ……あれを吸い込んでどうなるんだ……!)


 そう思った瞬間、吸い込んでいたフォーム3自身もその渦に飛び込み、3つのリングと共に吸い込まれ、跡形も無く消えていった……。


 全てが消えた時、ネアンの額からは汗が流れ落ちた。


「……あれには勝てない……古代魔法無しでは……」


 圧倒的な存在感に一切動く事ができなかったネアンは自身の不甲斐なさに唇をかんだ。


「もし……私が新生魔法を使えれば……トリガーでは無くて、ちゃんとした剣を持っていれば……。


 ネアンの目からは再び涙が溢れた。


「何が無限の魔力……闘気だ……! そんなものがあっても目の前の人を助けられないじゃないか……!」


 その時、さなえとツグユが脳裏に浮かんだ。


(もし……もし今と同じ場面にツグユとさなえがいる時に出会ってしまったら……!)


――パン!!


 ネアンは自分の頬を思いっきり叩いた。

 その顔は覚悟を決めた表情だった。


「もう迷っている場合じゃない。代償を捨てる時が来たんだ……力と共に……」


 ネアンはそう呟き、シャドウホールの最奥にいるボスを倒し、帰還した。


・・・

・・

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