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31話 1年後

~ネアンのデバシー日記~


 二人が学園に入学してから、今日で丁度1年が経った。私はギルドでの依頼をこなす日々が続き、さなえ達も毎日学園へ行き授業を頑張っている。

 聞いた事が無い魔法の知識を得たら私にも共有してくれるので、本当にありがたい。

 まぁ、代償のせいで実際に撃てるわけでは無いが……。


 ギルドでの仕事は、順調にこなした甲斐あって、シルバー(45)まで昇格した。

 仕事仲間である、テコンとトップは既にシルバー(90)でゴールドが見えてくる日が来るとは! と歓喜していた。

 二人は既に一人で依頼を受けられるランクではあるが、3人で仕事をする方が効率がいいと言い、ずっと組んでいる。

 この仕事を始めた時はシルバー(50)になればソロで仕事をしようと考えていたが、今はこの二人と共に仕事をする日々も悪くないと思っている。


 私が復活した理由……

 それは未だに分からない。たしかに外来種が出現するようになったし、シャドウホールも頻繁に発生するようになった。だが……それだけだ。私が居なかったとしても十分に今を生きる人たちで対処できている。

 このままこうやって生きても良いのではないか? と錯覚してしまう程だ。


 しかし、調査を辞める訳にはいかない。常にアンテナを張り、異変に気が付けるようにしようと改めて思う。


――――


「……ふぅ。さてそろそろ行かないとな。今日はシャドウホールの調査だったな」


 ネアンはデバシーを閉じて、宿を出た。


・・・

・・


「おっす! 待ってたぜネアン」

「よし、さっさと行きましょう」

「ああ!」


 3人はいつもの通り、指定された場所……シャドウホールが出現した場所へと向かった。


・・・


「お、あるぞ! 入っちまおう!」

「あ、待てよ! 不意打ちされないように、3人で一気に入って各自すぐに構える……だろ?」

「大丈夫だって! 不意打ちなんて一度もねーだろ?」

「その通りですよ」


「あっ……おい!」


 ネアンの抑止を無視して、二人は自分のタイミングでシャドウホールへと入った。


「ダンジョン攻略指南書に書かれた事はしっかり守って欲しいものだ……」


 ネアンも続いてシャドウホールへと入場した。


「周囲、異常無し」


 ネアンは辺りを見渡した。そこは岩壁に囲まれた洞窟で目の前には横穴が一本続いていた。


「お、ネアンおせーぞ! なんもねーだろ?」

「ああ、でも次は分からないよ? 指南書に書かれた事は守るべきだよ」

「ネアン、最近そればっか言ってるよな!」

「最近になって守らなくなってきたからだろ!」

「あはは、ネアンは慎重だな~ほら進もうぜ!」

「おい! ……まったく……」


 3人は目の前に見えている横穴を進み始めた。


・・・

・・


――ドンッドッ!


「おっけ、クリアだぜ!」

「このシャドウホールにもシャドウとハイシャドウしか居ないようですね」

「ほんとな~外来種くらい出てきてもいいんだけどな!」

「外来種何て倒しても何も出さないし、うま味が無いってのに……」

「まぁでもスリルはあっただろ? この前フォーム1を倒した時なんか久しぶりに手に汗握ったぜ!」

「何を言ってるんだ……あの時、死に掛けたってのに……」


 緊張感の欠片も無いまま洞窟の奥へと向かって行く……。

 実際1年前に比べて、3人のトリガーの扱いは遥かにうまくなっているし、シャドウやハイシャドウなら銃弾を外す事は無い。

 丁度、慣れてきたような時期である……。


「二人とも待て」

「え?」


 ネアンは声を殺しながらも二人を急いで止めた。


「なんだっていうんだ――」


 テコンの口をふさいだトップは、目の前のフロアを覗き込んで呟いた。


「外来種……! 2体も居ますね」

「ああ……」


 通路の先にある開けたフロアに2体の外来種がふらふらと動いていた。


「戻ろう。すぐにギルドに報告しないと」

「え? いや、大丈夫だって! 武装さえしてなければ襲われねーしさ!」


「おい、テコン……何言ってるんだよ。指南書――」

「指南書には外来種のリングが1つなら近づくな。リングが2なら一目散に逆側に逃げろ! だろ? 分かってるって!」

「あいつはリングが二つ……フォーム2だ。本当にやばい! 今ここで留まっているのだって危険だ。さぁ分かっているなら……」

「待てよ、ここまで来るのに山を登ったりかなり苦労しただろ? ここで引き返したら報酬がもらえないぜ? この前もそうだったじゃねーか! 無報酬はきついぜ。今回は広いし端を通ればスルー出来るって」

「テコンの言う通りです。あいつらはスルーして最深部のシャドウを倒し、真っ黒の魂片を砕けば外来種諸共シャドウホールは消滅するでしょう。進むべきです」

「トップまで……」

「さぁ話している時間がもったいない。行くぜ!」


 二人は武器をカバンにしまい、見えない様に隠した。


「おい……くそ、仕方がない」


 ネアンも武器を隠し、二人に追随した。


「な……? 襲ってこねーだろ?」


 テコンはこっそりとネアンに話しかけた。


「話してないで早く通り抜けよう」


 そうしてそのフロアの丁度真ん中あたりに来たその時だった。


――グォォォォ!


「おい……こっちみて叫んでねーか?」

「叫んでますね……!」

「くそ! しかも来た道が濃霧瘴気で溢れている……トラップフロアだ……!」


 濃霧瘴気……ダンジョンで発生する現象の事で、最奥のボスがいる場所に入った時などに発生する。

 その瘴気は触れると感触があるほどに濃く、それに近づいているだけで体調は悪くなり、顔を突っ込もうものならすぐに死んでしまうだろう。


 フォーム2は2体共こっちに向いて武器を構えた。


「そんな……! とりあえず帰り道は無い! あっちに逃げるぜ!」


 テコンは咄嗟にダッシュでそのフロアから抜けようとした。


「テコン! 下手に動くな――」

「リングスペル[フォーム2:オルタレーション]キドウ……」


「なんだ……? 外来種が今何かを……」


 外来種のリングが交差し、水晶の様な弾が出現した。

 それは一瞬で射出され、テコンに命中してしまった。


――バリンッ!


「テコン!!」

「おい……なんだよこれ! おい! 助け――」


――シュゥゥ……


 テコンは弾が直撃した腹部から徐々に粒子となっていった。

 一瞬でそれは全身にいきわたり、テコンは完全に粒子状になった……。

 粒子はその場で停滞している……。


「一体何が起こった……? 今の魔法は何だ……!」

「テコン……そんな……! くそ!! テコンを返しなさい!!」


――ドンドンドドド!


「トップ! 落ち着け! フォーム2にはトリガーは殆ど……」


「そんな……何でダメージが無いんだ! フォーム1は少しづつでも破壊できたのに……!」

「リングスペル[フォーム2:オルタレーション]キドウ……」

「またこの声……トップ! 避けるんだ!」


――ドドドド!


 トップは水晶の弾を向けられているのに、その場でトリガーを撃つのをやめなかった。


――バンッ!!


 水晶弾は真っ直ぐにトップへと飛び出した。


「くそっ!」


 ネアンは慌ててトップの手を掴み引っ張った。


――バリンッ!


「くそ……なんとか逃げないと……!」

「ネアン……」

「よし、ケガは無――ッ!?」


 ネアンはトップの姿を見て驚愕した。

 先程のテコン同様に、右手の指先から粒子化しているのだ。


「僕……さっきの魔法……指先を少し掠めてしまっただけなんです」

「そんな……少し触れただけで……」

「ごめん、ネアン……君の言う事をしっかりと聞いておけば……」


 トップはそのまま全身が粒子となってしまった……。


「今更後悔しても遅いだろうが……!」


 ネアンの目には涙が浮かんだ。

 しかしすぐにそれを振り払い外来種二体を見た。


(古代魔法は効かない。トリガーのダメージの微々たるもの……どうすれば……!)


 ネアンは通路の方をちらりと確認した。


(来た道は防がれているが、進む道は開いている。だが、真っ直ぐに狭い通路な為、あれを後ろから撃たれたら終わりだ……)


――グォォォ!


「どちらにせよ、ここでこいつらを倒すしかない……ッ!」


 ネアンはトップの落としたハンドガン型トリガーを拾い上げ、2丁のトリガーを構えた。

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