30話 それぞれやる事
――翌日 中央都市ギルド
「あ、ネアンさん。お待ちしておりました」
ギルド施設の中に入ると、二人の男性と受付嬢が待っていた。
「お待たせしてしまったかな? 申し訳ない」」
「いえいえ、約束の時間通りですし大丈夫ですよ!」
「君がネアンだね? 俺はテコンだ。よろしく!
「僕はトップです」
「お二人がネアンさんと共にダンジョンへ潜るチームです」
「なるほど……私はネアン。よろしくね!」
「お二人はブロンズ(80)で、ネアンさんより少し先輩です。何か分からない事があれば頼るといいですよ!」
「おう! 何でも聞いてくれよ! といっても学園上がりで最初から80だけどな……何度かダンジョンには潜ってるぜ」
「有難う。頼もしいよ」
ネアンは二人と握手を交わした。
「早速ですが、依頼がありますよ。受けますか?」
「そうだな! 3人で仕事をやってみねーと感覚つかめねーしな!」
「そうですね。ネアンさんは良いですか?」
「ああ、もちろんだよ」
「では依頼内容です」
――――
依頼難易度:ブロンズ
報酬(一人当たり):ブロンズスコア+10 白50枚
支給品(一人当たり):ベーシックバレット1枚
シャドウホールから漏れ出したシャドウの処理
中央都市より南の森林にシャドウホールが出現し、シャドウが漏れ出していたようだ。
シャドウホールは既に消滅しているが、漏れ出した残党を討伐して欲しい。証明として魂片を持ち帰る事。
最低3匹は漏れ出しているようだ。
――――
(白50枚……美味しい仕事ではないけど……こういった仕事でランクを上げて行かないとな……)
「よし、朝飯前だ! 行こうぜ!」
「ああ」
「お気をつけてー!」
そうして3人は依頼の場所を目指した。
・・・
・・
・
――同刻 さなえ達
「むうううう!」
「ツグユ凄い! 8個出てますよ!」
「でも……これを全部操作できる気がしないよお!」
「大丈夫! きっと出来るようになりますよ! あたしも頑張らないと……!」
「8個でこんな大変なのに……お兄ちゃんは50個以上操作してるんだよね? もう訳が分からないよ……」
「とりあえず、規格外のネアンさんは置いといて……まずは10個を目指しましょう!」
「うん!」
本日二人は、飛ばすライトペイントの数を増やして、操作する練習をしている。
空中で操作するライトペイントの個数が増えると、その分操作が難しくなるが、魔法陣を描く速度は格段に上がる。
発動の速さは最も重要と言っていい。ネアンはそれを理解している為、二人にその練習を命じていたのである。
・・・
・・
・
――森林 ネアン達
「なんとか支給品のベーシックバレットで決めちまいたいな」
「一人20発で計60発……3匹だとしたら余裕ですね」
「二人とも、前方に1体いる」
「は? 見えないけどな……」
「前方の木の裏だね。気配を感じる」
「すごいなネアン……なら、慎重に近づこうぜ」
3人はゆっくりと木まで近づき裏を覗き込んだ。
「本当だ。よし、気づかれる前に倒しちまおうぜ」
「僕がやるよ。先輩のいい所を見せる時です」
「トップ、じゃぁ任せた!」
トップはライフル型トリガーを構えた。
――ドンッ!
――グォォ……
トップの撃った銃弾は見事にコアに命中。コアは砕け、シャドウは消滅し始めた。
「よし」
「流石だなトップ!」
テコンは完全に消滅した事を確認し、シャドウが落とした透明な魂片を拾った。
「まずは一匹! この調子で行くぜ!」
「だね。1体ここに居たって事は近くに居るはずだ。慎重に探そう」
そうして一行は残りのシャドウを捜索した。
・・・
「目の前のあいつが3匹目だ。ネアン、やれるか?」
「ああ、やってみるよ」
ネアンはそう言ってハンドガン型トリガーを構えた。
「おい、この距離でハンドガンはきついだろ……てかライフル持ってきてねーのか!?」
「家に置いて来てしまったんだ……」
(本当はデバシーに入ってるけどこのタイミングでは出せない……)
「僕は初めから背負ってないなとは思っていましたけどね」
「いや、なら最初に言えよ……」
――ドンッ!
ネアンの撃った銃弾はコアに直撃した。
「おお……」
「大丈夫。この距離ならこれでいけるよ」
「すげえなネアン! 見直したぜ!」
「よし、3体倒したし報告に帰りましょう」
「そうだな! お疲れ!」
「ああ、お疲れ様」
そうして3人は魂片を回収し、その場を後にした。
・・・
・・
・
「はい、確かに確認しました! 報酬をお受け取り下さい」
「やったぜ!」
「まだ昼過ぎだけど、もう一個くらい依頼を受けるかい?」
「いや、今日はもういいだろ! 一日一依頼! それ以上受けるもんじゃぁねえぜ!」
「……そうか」
「それより、これから一杯どうよ!」
「賛成です」
「あまり遅くならないなら私も行くよ」
「決定だ! 行こうぜ!」
そうして3人は酒場へと向かって行った。
・・・
・・
・
――翌日
「おはようございます。ネアンさん今日は休みですか?」
「今日は昼頃に集合なんだ」
「なるほど!」
「だから、午前中は時間がある! 仕事も一応途切れなくありそうだし入学してしまおう! 入学金無料を忘れられない内にね!」
「わかりました! ツグユ! 起きなさい!」
「ふああ……お腹空いた」
「ふふ、ではご飯食べたらすぐに行きましょうか」
「だね!」
そうして一行は朝食を食べた後、学園へと向かった。
「おはようございます! 入学の手続きですか?」
「うん、その通りだよ。この二人をお願いしたい!」
「畏まりました。理事長から入学金免除の話は聞いています。こちらに必要情報を描いてください」
そうして二人は用紙を読みながら記入していった。
・・・
「この学園のシステムですが、授業は自身で選択していただき、各授業で一定以上の成績を収める事で学内スコアが溜まります」
「ふむふむ」
「DからSまであるのですが、スコアが上がるにつれて、取得できる科目難易度が上がります」
「なるほど……」
「説明は以上です。まぁ基本分からない事ができたらここに来てもらえれば大丈夫ですよ!」
「有難う御座います!」
「では早速授業を選択してください」
ウチさんはそう言って、分厚い本を出してきた。
そこには受けられる授業が色々と書いているようだ。
「うわー……分厚いですね」
「さなえちゃん……選ぶのは任せたっ……」
「ツグユちゃんも一緒に見るんですよ!」
「うう……」
「あはは。あ、私はそろそろ行かないと、二人とも頑張ってね」
「うん! 頑張るー!」
「ネアンさんも仕事頑張ってくださいね! 行ってらっしゃい!」
そうしてネアンは二人と別れ、ギルドへと向かった。
今日からネアンはギルドで本格的に仕事。
さなえとツグユは学園で授業を受けながら日々を過ごす事になる。