29話 さなえvsツグユ
――学園 結界コート付近
「何だろう……人が大勢集まっている……」
ネアンは学園の結界コートの近くまでやってきた。
すると、一つのコートに沢山の人が集まっているのにすぐに気がついた。
ネアンはとりあえずそのコートに近づいてみた。
(さなえ)――アイスバレット!
ウォーターボールに形態、形状変化、移動術式を追加し射出する。
氷の球を放つ
――バンッ!
(ツグユ)――アイススピアx2!
――ザンッ! ザッ!
(さなえ)――ウォータースプラッシュ!
さなえはアイスバレットを放ち、ツグユはそれを回避しながらアイススピアを2本撃った。
その後、さなえはすぐにウォータースプラッシュを自分の目の前に発動し、アイススピアの軌道を変えた。
「むう! 全然当たらないよ!」
さなえとツグユはスタイリッシュに動き回り、魔法を撃ち合っている。
それに見学者が群がっていたようだ。
見学者は男女問わず色々な人がいるようだ。
「おお……! バングルを使わずにさっきから古代魔法を撃ちまくっているぞ!」
「だろ? まじでやべえよこの少女達……しかも、指先のライトペイントで魔法陣を描くんじゃなくて、ライトペイント自体を飛ばして描いているだろ? 遠隔で魔法が撃てるなんて強すぎる……」
「ああ、みれば分かる……どうやってんだよあれ……」
見学者は皆ざわついている。
その見学者と共にネアンもその様子を観察していた。
(魔力総量はツグユの方が高いな……ただ、魔法の使い方は単調だ。一方でさなえは魔力総量は下回るが、魔法の使い方がかなり上手いな……)
「適当に撃っても当たりませんよっ!」
(さなえ)――ウォータースプラッシュ!
「きゃあ!」
(さなえ)――アイススピア!
――ザッ!
さなえはツグユの頭上でウォータースプラッシュを発動、ツグユは大量の水を被った。
それで目が見えなくなった瞬間、すぐにアイススピアを発動しツグユを貫いた。
そして、結界コート内は真っ白に輝き、二人は元の状態へと戻った。
(二人ともライトペイントを操作して、遠い所に対しても魔法陣を描き、魔法を発動させるのはかなり上手くなったね)
「おお、今度は金髪の子が勝ったぞ!」
「また凄い戦いだった……!」
「むー! 負けたー!」
「ふふ、3連敗はなんとか回避しましたよ!」
「よーし、もう一回……」
ツグユがもう一度戦おうとした時、ネアンと目が合った。
「あ、お兄ちゃん!」
「ネアンさん!」
ネアンは微笑みながら手を振った。
その姿はまるで、参観日に参列する保護者の様である。
「いや、手を振ってる場合じゃないですから、こっち来てください!」
ネアンはさなえに手を引かれ結界コートへと入った。
「なんだろうあの人……保護者?」
「にしてはエルフ族に見えないわね。でもちょっとタイプだわ……」
突然の3人目の登場に周りはざわついている。
「ふふ……ネアンさん、あたし達と勝負しましょう!」
さなえはネアンを指差しながら言った。
「おお、突然だね……! まだ早い……とも思うけど、色々な人と実践するのは良い事だね。いいよ!」
「よし、ツグユ! 頑張りましょう!」
「うん!」
「じゃぁ……私はハンデとして初級魔法以下だけを使うよ。全属性使うけどね」
「そんなきっついハンデをつけるんですか? 余裕で勝ってしまうかも知れませんね!」
「あはは。それは楽しみだね」
そうして3人は配置についた。
「あの男性は何を言っているんだ? さっきの戦いでは中級魔法が飛び交っていたのに初級だけで勝てる訳がない……」
「しかも二人相手……何を考えているのか……」
見学者はネアンの発言に疑問を持つものばかりである。
「では、ナイフを投げて地面に刺さったらスタートです!」
「了解!」
さなえはそう言ってナイフを上に投げた。
――ザッ
「いくよ!」
(ツグユ)――アイススピアx2
(さなえ)――ウォータースピアx2
ウォーターボールに形状変化、移動術式を追加し射出する。
水の槍を放つ。速度によっては大きなダメージを与える。
二人は水平に4本の槍を射出した。
「詠唱、かなり早くなったね……!」
ネアンはその成長ぶりに感動しながら、上空へとジャンプし回避した。
「ツグユ! もう一発!」
「うん!」
二人はすぐさま次のスピアを詠唱していた。
空中に回避した場合、次は避ける事ができない……そう読んでいたのだ。
(ツグユ)――アイススピア
(さなえ)――ウォータースピア
二本のスピアはネアンへと真っ直ぐに伸びた。
「上手い……けど」
(ネアン)――サンドボール
砂を球体に留める。
(ネアン)――ファイヤボール
火を球体に丸める。
ネアンはそれに対し、空中で二種の魔法を両手で発動。
アイススピアはサンドボールに突き刺さり停止、
ウォータースピアはファイヤボールに当たり蒸発した。
「まだまだ甘いね」
ネアンはそう言って地面に着地しようとしたその瞬間だった。
「いまです!」
(さなえ)――アイススパイク!
ウォータースプラッシュに形態、形状変化、状況によって移動術式を追加
複数の氷の刃を魔法陣から出現させる。
「な――ッ!」
ネアンの着地場所にアイススパイクが張り巡らされた。
「二つの属性を一度に使用したのには驚いたが……! だがあのアイススパイクは避けれないだろう」
「というよりあの少女達……上級古代魔法も使えるのか……何て子達だ……」
見学者が言った通り、だれもがネアンにアイススパイクが突き刺さり、試合終了……と思った時だった。
(ネアン)――エアータッチ
自身の闘気を空気中に定着させ、一瞬だけ足場を作る。
「ええ!? 空中でジャンプしたよ!」
二人はネアンの飛ぶ姿を目で追ってしまっていた。
「二人とも、常に周りを見ないとだめだよ」
さなえとツグユの周りにはウィンドボールがいくつも出現していた。
「な――ッ。いつの間ですか……!」
(ネアン)――ファイヤバレット
ファイヤボールに魔法移動術式を追加し射出する。
――バァン……
「きゃぁっ!!」
ネアンの放ったファイヤバレットはウィンドボールに当たり火の強さを増した。
全てのウィンドボールに連鎖し、さなえたちの周囲は火の海と化した。
その景色が一瞬映った後、結界コートは真っ白に光り、最初の状態へと戻った。
見学者はその光景を見て騒然としている。
「まけたー!」
「悔しいですね……」
「びっくりした……まさかアイススパイクを使えるようになっているとはね……凄いよ!」
「次からは使える事がバレた状態ですから、同じ不意打ちは出来ないですね……まぁ失敗してますけど」
「不意打ち速攻はどんな時でも強い。色々やってみるといいよ!」
「わかりました!」
「さなえちゃんもう一回戦おうよ!」
「いいですよ」
「なら私は見ておくよ。アドバイスをしながらね」
「お願いします!」
「まずはさっきの空中でジャンプした技! あれなんですか!」
「ああ、あれは剣技の一種でね……」
そうして3人はその後も、実技を交えた練習を続けた。
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