27話 旧友?
「さて……じゃぁまずはこのうちのチーム2位のジローが相手だ」
「先生、一回目の試合を見て辞めるなんて言わないでね?」
「はっはっは! むしろそれはこちらの台詞って奴ですよ。心配ご無用」
「それを聞いて安心したよ」
「じゃぁさなえ、頼んだよ!」
「え……ええ、頑張ります!」
さなえはトリガーを構えているがその手は震えている。
実戦的なのは初めてな上に、人前で試合となると無理もない……。
その姿を見て向こうの生徒はくすくすと笑っている。
「さなえ! 緊張しなくていいよ。言った通りに動けば勝てるよ」
「はいい!」
「では始めるぞ? 審判がトリガーを撃ったらスタートだ!」
さなえとジローは構えた。
少し静寂の後、トリガーは上空へ放たれた。
――パンッ!
「いくぞ!」
ジローは盾を前に突き出しトリガーを構えた。
だが、目の前からさなえは消えていた。
「あれ……?」
「ジロー! 上だ!」
先生が焦ってジローに向かって大声を出した。
「上……?」
「もう遅いです」
さなえは上空からジローの背中へ飛び込み、そのままトリガーを突き付けた。
「ふふ、確かにこれだと外さないですね」
――ドン!
「がはっ……」
ジローはそのまま背中を撃たれ、倒れて行った。
そして結界内が真っ白に輝いた。
「……えっとさなえさんの勝ち!」
「やりましたよ! ネアンさん!」
「ナイスだよさなえちゃん!」
「よくやった! 次はツグユだよ? しっかりね!」
「うんー!」
「そんな馬鹿な……」
先生はもちろん、笑っていた生徒も真顔になっていた。
「ええい! 次、ワーズ! 行ってこい!」
「はい!」
続いて出てきたのは、チーム内1位のワーズという少年だ。
「絶対に目を離すんじゃないぞ! 上も警戒するんだ!」
「はい!」
「えへへ~よろしくねワーズ君!」
「は! そんな呑気で居られるのも今だけだ」
「ではよーい――」
――パンッ!
銃声がした瞬間、ツグユは真っ直ぐに突っ込んでいった。
「早……! だが、真っ直ぐなんてただの的……」
ワーズはそのままトリガーを構えて真っ直ぐに突っ込んでくるツグユに撃った。
――ドンッ!
(ツグユ)――閃光脚!
銃声が聞こえた瞬間、ツグユは閃光脚で瞬時に斜めに移動した。
「なッ……!! 避けたの!?」
ツグユは斜めにダッシュした後、そのままワーズに近接近し、脇腹に銃口を当てた。
「はい、おわりっ!」
――ドン!!
ツグユがトリガーを撃つと、ワーズは倒れまた結界は真っ白になり、二人は最初の位置へ戻っていた。
「し……勝者ツグユさん!」
「そんな馬鹿な!! なんて速さで動くんだ! エルフ族ってのは体力がないんじゃないのか!?」
先生は頭を抱えて悔しがっていた。
「よし、これで入学金はただ――」
「まて! 最後の先生同士の戦いがまだだ! 上がってこい!」
「ええ……」
先生は結界コートに入り、ネアンを指差した。
「ネアンさん頑張ってくださいね!」
「しょうがない……ああなったらもう止まらないだろうしね……」
「ほうネアンと言うのか、最後は大人の戦いだ……何でもありルールで行こうじゃないか」
「何でもあり……?」
「ああ、とにかく相手を倒せばOK……どうだ?」
「なるほど。シンプルで良いですね」
ネアンはそういって結界コートへと入った。
「えっと貴方の名前は?」
「俺はローモンだ」
「そうですか。ローモンさん、多分私に傷一つ付けれないと思いますよ。私、バレットでダメージが……」
「始め!」
――パン!
「食らいやがれ!」
――ドンドンドンドドド!
ローモンはライフル型トリガーを取り出し速攻で発砲してきた。
「出た、ローモン先生の超連射!」
「あれ、指の動ききもいけどかなりの速度で撃つからすげえよな……」
「ネアンって人に全部当たってるぞ……終わったね……」
ジローたちが話している通り、ローモンの放ったバレットは全てネアンに命中した。
「これでとどめじゃ!!」
ローモンは全弾撃ち尽くした後、スペルカードを新たに挿入した。
(ローモン)――キャノンバレット!!
――チュドン!!!
最後のキャノンバレットもネアンに着弾し、砂煙で結界コート内は見えなくなった。
「……今のキャノンバレット……」
(あたしが見た外来種のキャノンバレットに比べるとサイズが半分以下……)
「どうしたの? さなえちゃん」
「え? 何でもないですよっ」
ツグユとさなえはあれだけ撃たれたネアンを見ても一切焦る気配が無い。
煙は徐々に薄くなってきた
「何故結界コートが元に戻らない……?」
「それは私が無傷だからでしょうね」
「は……?」
煙が収まると、無傷で立っているネアンの姿が見えた。
「は?! 一体何故……全弾当たったのに……!」
「これも自身の闘気を鍛えたおかげさ!」
「闘気……! くそ! これ程とは!!」
ローモンはドンと胸を叩いて無傷のネアンを見て、かなり悔しがっている。
「いや、あんな恐ろしい防御力はネアンさんだけですよ……」
「ネアンさん凄いな……剣技の講義取ろうかな……」
「俺も俺も……」
生徒はそんな会話をしながらざわついていた。
「ローモン、部外者と何をしているの?」
突如、ネアン達の前にエメラルドの髪色で腰まで伸びたロングヘアーの女性が現れた。
「り……理事長!」
ローモンはびしっとした姿勢になり、お辞儀をした。
ネアンはその女性の容姿を見て、目が輝いた。
「サクエル! 生きていたんだね。会いたかったよ……。昔馴染みに今の時代で会えるなんて!」
ネアンは結界コートを飛び出し、女性の手を取った。
「なっ! 何なのよ貴方! 突然失礼よ!」
(だ、男性と手を握ってしまったわ……!)
女性は赤面し、ネアンの手を振り払った。
「サクエル……? 私だよ。長い事会わなかったから忘れたのかい?」
ネアンは再び女性に顔を近づけた。
「な……ちょ……近いわよっ!」
女性は両手を前に伸ばしてあたふたしている。
「わたくしの名前はイオエルよ!」
「イオエル……? サクエルじゃない?!」
「ええ、違うわ。サクエル……わたくしの曾祖母と同じ名前ね……」
「曾祖母……! そうか……冷静に考えたらそうだよね。ごめんよ。突然手を握ったりして……」
ネアンはシュンとした表情になった。
「ま……まぁいいわ。それより、部外者とうちの生徒が何故戦っているのかしら?」
「えっと実は……」
そうしてネアン達は事の経緯を話し始めた。




