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26話 学園見学

――翌日 学園前


「おおお……!」

「す、すごい広い学校ですね!」


 一行は早速学園の様子を見に来ている。

 目の前には大きなゲートがあり、門には警備兵が3人も立っている。


「ここまでくると、石像の迫力は増しますね……!」

「そうだね。私の記憶と大きく形が変わっているけどね……」


 石像は右手にトリガーを持ち、左手には本を持っているローブ姿の女性がモチーフとなっている。


「銃と本を持つってなんだかカオスな感じだね……」


「君達、学園にはなんの用だい?」


 石像を見上げていると、警備兵の人が話しかけて来た。


「あ、すいません。ちょっと入学を考えておりまして……どんな学園なのかなと……」

「案内希望の方でしたか。ではこちらへどうぞ」


 そういって警備兵に誘導され、ゲートの門横にある小さな扉を通り、学園の中へと入った。


「うわ……すごーい!」


 目の前には広大な広さのグラウンドが広がっている。

 そのグラウンドにはテニスコート4面分程のサイズのエリアが等間隔で数十カ所以上設けられている。

 そして、そのエリアはそれぞれ四方八方を光の壁で覆われていた。


 グラウンドの奥には石像を挟むように、立派なお城に見える校舎がどんと二つ構えている。


(1000年も経つと学園だって様変わりはするか……そもそも学園自体の大きさが昔より遥かに大きい気がする……)


 ネアンはいきなり広がったその光景に圧倒されていた。


「どうですか? 初めて学園を目にされる人は皆この広さに圧倒されるんですよ」

「外堀の壁が相当長かったから、かなりでかいだろうなとは思っていたけど……こうやって見ると本当に凄いと感じたよ……」

「そうでしょう? さ、こちらへ」


 グラウンドを横目に警備兵について行くと、真っ白な建物で出来た総合案内施設へと連れて行ってくれた。


「さぁここです。ウチさん! 学園入学希望者ですよ!」


 警備兵は女性に手を振った。

 するとその女性は手を挙げて答えた。


「あ、はーい! こちらへどうぞ!」

「さ、あの手を挙げている女性の方へ行ってください。学園の案内はあちらの方がしてくれますので」

「ありがとうっ! 警備兵さん!」

「いえいえ。ではこれで……」


 警備兵はそのまま門へ戻っていった。

 ネアン達は手を挙げている女性の方へと向かった。


「こんにちは。入学希望の方ですね?」

「えっとまぁ入学希望と言うか、この学園の事を全然知らなくてまず説明が聞きたくて……」

「なるほど、では簡単に説明させて頂きます!」


・・・


 ウチさんはそういうと学園のパンフや本を出してきてこの学園で出来る事を説明してくれた。

 

 その話を要約すると……。

 この学園は大昔は魔法と剣術に二大頭で運用されていたが、今は状況が大きく異なる。

 剣術は受けたい人が任意で取る方式になっており、基本的には魔法とトリガーの勉強が中心の学園に変貌していた。

 誰にでも使えるトリガーの普及により、剣術は一気に廃れてしまったようだ……。

 とは言っても、剣術も一応ある。だが、内容は実戦向きでは無く、身体を動かして汗を流したい人やダイエットをしたい人向け……フィットネスのような存在となったようだ……。


 学園で主に力を入れているのは魔法・トリガー技術・シールド技術の3つだ。

 古代魔法自体は地下ダンジョンでのシャドウに対して大きな力を発揮するし、弾の消費を抑える事ができる。

 トリガーも外来種を倒す際には必須、シールドもトリガーとは逆手に持ちシャドウをいなすのに必須。


 学園から優秀なダンジョンアタッカーは多く輩出されている。

 それも上記の3つに絞り、しっかりと学習する場を構築できたからだそうだ。

 剣術も愛している私は、


「剣術も実戦用に習えば、ダンジョンで剣も使えてより安全になるのでは?」


 と質問したが、一蹴された。


 というのも、

 地下ダンジョン突入に使われる装備は、

 魔法装具・盾・トリガー(ハンド、ライフル)が基本である。

 それを装備した上で、必要な食料や荷物を持ち込んだら、戦闘で使えるような剣を持つスペースは無いだってさ……。


・・・

・・


「とまあそんな感じですね! 座学はグラウンドの後ろの校舎、実技はグラウンドの結界コートで行います」

「なるほど……」

「結界コートって何!」


「あ、結界コートは実戦用のスペースですね。その中で戦うと、どちらかが致命的なダメージを受けたら即座に真っ白に光り、最初の状態に戻るんです」

「ほえ~……」

「まぁ簡単に言うと、あの中で戦って死ぬ程のダメージを受けたとしても、すぐに完治して元に戻るんだよ」

「すごい技術ですね……」

「一緒にヒーリングライトも発動するから怪我は全部完治だよ」

「帰りにでもじっくり見てみるといいですよ! なんなら外部の方でも1回白30枚で借りられるので使っていただいても構わないですよ!」

「ほ~とにかく帰りにじっくり見てみるよ。ところで、入学する為には何をすれば?」


「入学は一人当たり黒300枚で出来ます!」

「黒300……!」

「ええ、もちろん一気にでは無くて、在学中に支払っていただければ結構です。入学金として黒30枚はお支払いいただきますが……」

「分割できるんだね! なら大丈夫そうだ」


 今にも払いそうなネアンをさなえが抑止した。


「いや、ちょっと待ってください。300枚って相当ですよ?」

「それでも行く価値はあると思うよ!」

「ツグユ、勉強して賢くなって大黒柱になるよっ!」

「あはは。そんな言葉を知っているんだね……!」

「ウチさん! とにかく一度持ち帰ります! じっくり相談させてください!」

「はい、もちろんです! またお待ちしてますね!」


 さなえはウチさんの用意した資料を頂き、二人の手を引いてそのから出て行った。


・・・

・・


「あれ、入学しないのかい?」


 呆気にとられるネアンにさなえは声を大きくして答えた。


「黒300枚ですよ! 二人で黒600! まだここでの仕事も決まってないのに入るわけにはいきませんよ!」

「う……確かに……私はいってみれば無職……!」

「お仕事だってお手伝い出来ますし、もっと収入が安定してから通わせてください!」

「そ、そうだね……!」

「学園もそりゃ行きたいですけど……まずは今後の暮らしを考えないとですよっ!」

「さなえの言う通りだ……! よし、私もここでの仕事を早く探すよ!」

「そうしましょう!」

「ただ……仕事見つかり次第、入学してしまおう。黒60枚ならすぐ用意できるしね」

「いやもっと貯金をですね……」

「その意見も間違ってないんだけど……なるべく早く学園で実践を交えて勉強した方が良いんだ」

「そうなんですか……?」

「ああ、魔力と闘気は一定まで成長した後では上限が増えなくなってしまうんだ。エルフ族がいつまで伸びるのかは分からないけど、ヒト族は10歳程になると上限が成長しなくなると言われている」

「なるほど……」

「正直、君達の身体年齢? は何歳か分からない……でも現状は上限が伸びている感覚はあるだろう?」

「確かにあります……日に日に描ける枚数は増えましたし……」

「なら! それが終わってしまうまでに詰め込まないとね!」

「……わかりました! てか、それもっと早く行ってくださいよ! ツグユちゃん! 今日もスペルカードいっぱい書く練習しましょう!」

「うん! もちろんやるよ!」


 いずれ伸びなくなってしまう事を悟ったさなえは今まで以上やる気を出してくれたようだ。


「そうだ、せっかくだから結界コートを見て行こう」

「はい! 丁度誰かいますね」


 丁度学生が実戦授業を行っているようで、4コートが使用されている。

 そこには学生らしき人が大勢と、先生と思われる人が数人集まっており、今丁度4コートでそれぞれ戦っているようだ。


・・・


「相手から目を離さない! トリガーの引き金には常に指を触れさせておけ!」


「はぁはぁ、はい!」


――ドンッ! ガッ!


 コートの中で戦っている二人の生徒は、右手にハンドガントリガーを持ち、左手には小さな盾を装備している。

 テニスコート4面分の広さがある為、二人は走り回りながらトリガーを撃ち合っている。


「おや、見学者ですかな? 丁度今度の大会にでる上位8名を選考している所でしてね……レベルが高い試合だと思いますよ」

「ほえ~すごい!」


(これが今の戦い方か……シールドを前に突き出し、トリガーを放つ……だが……)


 ネアンはその戦いを見ながら凄くもったいないと感じていた。

 というのも二人の生徒はもちろん魔力は使っていない為感じないのだが、闘気は感じる事ができる。

 この世界の生物は、日常的な動きなど行う際に基本的に体力に直結する闘気を、極微量だが使用している。


 自分の限界に近い動きを行う事で、その部位から闘気を大きく感じるのだ。


「すいません、貴方が先生ですよね? 闘気の使い方などは学園で教えてないのでしょうか?」

「うん? 闘気? 剣技で使う奴だな。トリガーやシールド術では教えるのは知識程度なもんだ! 実際には使わん!」


(なんてことだ……剣技=闘気みたいな間違ったイメージがついてしまっているのか?)


 剣技……一概に剣技と言えど剣を使う技ばかりではない。

 実際にネアンが使用した閃光脚やシャドウウォークは剣技に分類されるのだ。


(闘気の使い方さえ理解できればもっと素早く動けるだろうに……!)


――ドンッ!


「ぐあ!」


 決着がつくときは一瞬だった。

 一人の生徒から撃たれたベーシックバレットが顔面に直撃……そのまま結界コートは真っ白に光り、二人は無傷で最初に立っていた場所へと戻っていた。


「どうでしたかな? こうやって毎日のようにトリガーとシールドの実戦を行い、日々精度が上がるように練習しているのです」

「ええ、素晴らしいですね。闘気の勉強をしていないのがもったいないと感じましたが……」

「ふふ……先ほどから闘気を気にされているようですが……剣技を使う訳では無いから不要だと思いますがね?」

「闘気はもちろん剣でも使うけど、日常的な動きでも自然に使っている。少しだけでも闘気についての勉強を取り入れれば生徒はもっと早く動けるかと……」


 すると先生と思われる人はむっとした表情になり、口調が少し強くなった。


「貴方のような素人には分からないでしょうな。限られた時間の中で闘気の勉強など無駄でしかない」

「そうですか……先生が皆貴方の様な考えなのであれば残念です。では、今日は失礼します」


 ネアンはそう言ってその場から離れようとした。


「君、そこまで言うのであれば闘気については学んでいるという事かね?」

「ええ、もちろん。この二人にも教えていますよ」


 そういってネアンはさなえとツグユの頭を撫でた。


「ならその子たちをうちの生徒で一戦しないか? トリガーが無いのであれば貸してやろう。その闘気の大事さとやらを教えてくれんかね?」

「あはは。いえ、流石に私達に勝ち目はないと思いますよ。トリガーは二人とも持っています。けど、実際に撃ったことはまだないですから――」

「うちの生徒に勝てた方は入学金を無料にしてあげよう。初心者であればなおさらそういった賞品は必要でしょう」


 先生がそういった瞬間、ネアンはぴくっと動いた。


「……それは本当ですか?」


「ええ、もちろん!」

(うちのチームは最近負け続けでストレスが溜まっている……このエルフ二人でストレス解消させてもらおう……!)


「受けて立とう!」

「ええ!? ちょっとネアンさん! 絶対勝てませんて! トリガーなんか狙ったとこに飛んでいかないですよ……!」

「大丈夫、私の言った通りに動けば勝てるよ」


 そういってネアンは二人に耳打ちした。


・・・


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