表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/45

25話 中央都市へ

 列車は高い外壁に囲まれた中央都市へ向かう。城壁はとても高く分厚い……そこに列車用の門があるのだが、入念なチェックが行われた後、門が開き、列車は再び進み始める。

 中央都市に入るには身分が証明できる魔法装具の装着が必須で、電車に乗る際にそれは確認される。

 だが、それでもこっそり乗車する者や途中で飛び乗って来る者も稀に存在する。

 そういった者が居ないかをチェックしているのだ。


「トンネルみたいだね!」


 列車は街を囲む外壁の中へと入っていった。

 トンネルのようになっており、走っている時間を考えると城壁の厚さが物凄い事に気がつく。列車はどんどん上へ向かっているようだ。


「うわー高ーい! すっごい大きい街だね!」


 外壁に沿いながら徐々に上に向かっていた為、トンネルを抜けた瞬間は街が一望できるほどの高さで、絶景であった。

 ヨーロッパのような街並みでその中心には大きな石像が立っている。

 この街が一望できる景色を見れるのは列車で中央都市に入ったこの少しの間だけ……この景色を見る為に何度も乗車するマニアも居るそうな……。


「街の中心に大きな石像が見えるだろう? あそこが学園だよ」

「うわー。自由の女神みたいだね!」

(しかし……昔は2体あったのに今は1体しか石像が無いのか……)


「あ、二人とも! 魔装魂が消えているよ」

「え! ……本当ですね……!」

「むう、悔しい!」


 さなえが緑水晶を手に入れて戻ってきた頃から二人は闘気の練習も本格化している。

 今2人が行っているのは、意識せずとも魔装魂が張れるようになる為の練習だ。

 瞬間的に移動する閃光脚などを使う際に、魔装魂で闘気を纏っているか否かで技の発動速度が格段に変わる。

 シャドウによる不意打ちのダメージも大幅に軽減できる為、常に張っている方が良いのである。


・・・


 そんな事を話している内に列車は停車した。どうやら駅についたようだ。


――中継駅に到着しました。足元にはお気を付けください。


「中継駅?」


 ナレーションに疑問を持ったが、列車に降りた瞬間意味は理解できた。


「ここで更に分岐するのか……」


 今いるところはまだまだ高所である。

 目の前には3つの列車が停車しており、それぞれ向かう場所が異なるようだ。

 場合によっては待機する時間が長い為、休憩所も併設されている。


(駅自体が外壁にくっついているような構造……すごい技術だな……昔とは大違いだ)


「学園付近へはこの列車みたいですよ」


 さなえは一つの列車を指差した。

 ネアン達はその列車に乗り込み、出発を待った。


・・・


――まもなく発射します。急な下り坂となりますので、ベルトは必ず装着するようお願いします。


「ベルト……これか。二人ともしっかりつけるんだよ」

「はーい!」


 ベルトをした後、すぐに列車は動き始めた。

 アナウンス通り、結構な下り坂で、まるで遅めに進ジェットコースターに乗っている気分である。


「あはは! 楽しーい!」

「中央都市から出る為には毎回これに乗るんですか……! 恐ろしい街です……」

「あはは。落ちない様に気を付けないとね」


 中央都市……昔からとんでもない広さだったが、より広くなった上で城壁が出来ている。

 今は列車に乗る事で街の端から端まで数時間で移動する事ができる。しかし1000年以上前、当時は街の端から端まで行くのに数日掛けていくのが一般的だった。

 その為、民宿のような宿が本当に多く、昔の冒険者は安い宿を探す為に奮闘したものだが、今はそういう時代ではないだろう。


「この列車は学園付近まで行くみたいだけど、その一つ前で降りるからね」

「えー! なんでー!」

「今日からまた長期で止まれる場所を探さないといけないからね! 手前は学生向けの宿が沢山あるんだ」

「ほえ~」


 そうして列車は言っていた駅に到着した。

 3人は荷物をまとめそのまま降車した。


「よし、宿探し頑張りましょうねっ!」

「うんー!」


(さなえ、突然元気になったな……電車では何かを考えていたけど……とにかくよかった)


「とりあえず、学園へ向かう道に宿は並んでいると思うから、その方向へ向かおう」


 一行は大きな石像を目印に、その方向へと歩き始めた。


「昔は木の家ばかりだったけど、今は石とかで作られた家が多いなぁ」

「そうなんですか?」

「うんうん。というか……これ魔法を用いて作ってるみたいだ……」


 ネアンは家の壁に手を当て、そっと触ってみた。


「ほえー。見た目じゃ全然分からないですね」

「完全にって訳じゃなさそうだけどね。大きな岩壁の部分は魔法で出して、隙間とかを何かで埋めているようだ……」

「なら、木で作るより遥かに簡単になってそうですね~」

「うんうん。建設費用もきっと安価になっているだろうね」


 ネアンの言う通り、今の建設は魔法士と建築士がタッグを組んで行う事が殆どである。

 今新たに家を作るとなると、木造より岩で作る方が遥かに安価で建つ。


 そこに木の板を張ったり、岩壁に色を塗ったり……家の形も魔法士の技術で割と自由に出来る事もあり、個性的な家が増えてきているようだ。


「さて、この辺から宿が立ち並んでいるようだね。相場を調べて、よさそうな所へ泊まろう!」

「おー!」


 そうして3人は色々な宿に入り、長期間泊まれるよさそうな宿を探し始めた。


・・・

・・


「では、半年で黒60枚です。前払いです」

「はい、お願い致します」


残金[黒78枚と白10枚]


「有難うございます。では、こちらが部屋のブレスレットキーです」


 受付嬢は3つの部屋のカギとなるブレスレットをネアンに手渡した。


「二人とも、これ渡しておくね。無くさない様にね!」

「はーい!」


 この宿は、4階建てになっており、入ると右手には受付があり、その隣には軽食が食べられる喫茶店がある。

 そのまま真っ直ぐに進むと扉があり、横の壁にはブレスレットをかざす場所がついていた。

 

――ピッ


 そこにブレスレットを当てると、目の前の扉が開き、中へ入る事ができた。

 構造は完全にエレベーターで、扉が再度締まると、勝手に上昇し始め、自分たちの泊まる部屋がある3階で停止し扉が開いた。


「すごいですね……なんだか高級なホテルっぽい機能です」

「うんうん。自分達の泊まる階にしか行けないから防犯的にもよさそうだね」


 そんな会話をしながら3人は少し歩いた場所にある部屋の中へと入っていった。


「は~~疲れた!」

「うわー! ベッドだ! ふかふか!」


 二人は荷物を適当に置いてベッドに飛び込んだ。

 この部屋はこの宿で一番安い部屋だったのだが、間取りが少し変である。

 2LDKの物件なのだが、3部屋が真っ直ぐに並んでいるような形だ。

 まず、いきなりベッドが二つ置かれた部屋、引き戸を開けそこを抜けるとリビング。そしてさらに向こうの引き戸を開けるとベッドを一つ置いた部屋がある。


「3つの部屋が直列で繋がってるんだね。たしかにあまり見ない間取りだ」

「でもかなり広いですし、十分ですよ! とくにリビングもこれだけスペースがあれば魔法の練習もできますね!」

「いろんなところで泊まれて楽しいよ!」

「まぁ二人がいいならいいか!」


 そうして荷物を整理し、3人は休憩を取った。


・・・


「んん……はっ!」


 リビングで寝転がっていたネアンはいつの間にか寝ていたようだ。

 二人も横ですやすやと眠っている。

 起こさない様に、ネアンは窓の外を見た。


「もう夕方か……」

「ん~……あれ、あたし寝ちゃってましたか……」

「おはよう。ちょっとだけ休憩のつもりが思いっきり眠ってしまったね」

「んー……もう朝? お腹空いたぁ」


 さなえに続いてツグユも起きてきた。


「夕食の時間だからね。1階の喫茶店やっているかな? 行ってみようか」

「賛成ー!」


 そうして1階までおりて、喫茶店までやってきた。


「お、夜も営業しているようだね」

「あたしも身体が起きて来たのか、お腹が空いてきました……」


「いらっしゃいませ。お好きな席へどうぞ」


 3人は店内奥にあった丸テーブルの椅子へと腰かけた。


「お客様、初めてですよね?」

「あ、そうですね」

「では簡単に説明を……朝、昼、夜それぞれ1種類しか定食を用意してません。毎日内容は変わります」

「そうなんですね、じゃぁ……その定食を3つ下さい」

「畏まりました」


 店員は会釈をし、カウンターへと戻っていった。


「選ばなくていいなら逆に楽かもしれないね」

「毎日変わるって言ってましたよ! 毎日来ても飽きないですね!」

「なによりもね……子供は無料らしい!」

「ええ! 凄くお得ですね!」

「だから極論3食ここでも良い……!」

「ずっとここで食べよう!」


 そんな会話をしていると、定食がやってきた。


「どうぞ、ラビットナゲットと野菜のサンドイッチです」


 大きめのお皿に、ラビットの肉で作ったナゲットと結構大きい野菜たっぷりのサンドイッチがドンと乗っている。


「おお……美味しそうですよ!」

「パン類を久しぶりに頂くね……有難い!」

「ツグユ、パン好き!」


 そうして3人は夕食のひと時を楽しんだ……。


・・・

・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ