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22話 さなえ、ダンジョン攻略中

「薄暗くて妙に寒いです……」


 さなえはライトペイントの光の球を周囲に3つほど出現させ、浮遊させている。

 さなえのライトペイントはネアンの光の球に比べ光が強い。十分に光源としての役割は果たしているようだ。

 

――ピチャ……


「ひっ……」


 肩に冷たい水滴が落ちてきた。さなえはそれに驚いたが、首を振り冷静さを取り戻した。


「あたしが頑張らないと……」


 洞窟は中へと進むにつれ、水気を増している。地面には冷たい水が流れており、天上部にはつららがいっぱいである。


「……あ……あれは……」


 さなえは無意識に姿勢を低くしていた。


 その目線の先には真っ黒のもやの様な塊……シャドウが居たのだ。


「あれは……ネアンさんから聞いていたシャドウ……!」


 さなえは咄嗟にネアンの授業を思い出した……


――――


「シャドウにはコアと呼ばれる部分があるんだ。基本的にそこを壊さないとすぐに再生して倒す事ができない……。下級であるシャドウとハイシャドウは一目でコアが見えるはずだよ」

「はーい!」


――――


「青く光っている球体……あれがきっとコアですね。シャドウには古代魔法が効く……」


 さなえはそう呟きながらライトペイントで魔法陣を描き始めた。


(しっかりと狙って……!)


(さなえ)――アイススピア!!


――バシュッ!!


――クォォォ……


「やりましたっ!」


 さなえのアイススピアは見事にコアに命中……シャドウは一瞬で消滅したのだった。


「ふふん。相手が動かなければ余裕ですねっ」


 さなえはそのまま元気よく奥へと進む……

 この時、既に1時間以上の時間が経っていた。


・・・

・・


――長老の家


「長老!!」

「む、なんじゃ騒がしい……」

「ツグユ! 一体どうし……さなえは?!」

「はぁ……はぁ……ネアンさん落ち着いてくれ……まずはツグユを見てやってくれないか」


 そういって男性はツグユをゆっくりと布団に降ろした。

 ツグユは汗をかきながら苦しそうにしている。


「一体どうしたんじゃ……熱が高いな……」


 長老はそういって魔法陣を描き始めた。


「ツグユにも同じ魔法陣を使う。ネアンよ、一旦中断するぞ」

「ええ勿論です。ツグユを見てやってください」


 心配そうにツグユを見た後、ネアンは振り返った。


「あんた、さなえはどうしたんだ!」


 ネアンは今にも男性に飛び掛かりそうな勢いだ。


「すまない……本当にすまないと思うが聞いてくれ!」


 そうして男性は事の経緯を説明した。さなえは一人で行くと言った事、外来種が武装していないにもかかわらず突然襲ってきた事。

 そして、ツグユがそれを倒した? 事……。


「そんな事って……さなえが一人で……くっ!」


 ネアンはそのまま立ち上がり、出て行こうとしたが……


「待つんじゃネアン……これをみるんじゃ」


 そういって長老はツグユの右肩を見せた。


「これは……魔法陣……!」

「ああ、身体に刻み込まれておる……」

「全然気づかなかった……これは……」

「エルフ族の刻印魔法陣じゃな……」

「いつからあったんだろう……それより、この魔法陣、見た事が無い……めちゃくちゃだ」

「とにかくネアン、この魔法陣からとんでもない熱気が出とるんじゃ……わしだけでは抑えられん! 手伝え!」

「はい! しかし……!」

「馬鹿者! さなえはお前の為に一人で行く事を選択した、危険を覚悟でな! お前が今あっちに行ってツグユに何かあったらさなえは何というか! しっかりと考えるんじゃ!」


 長老の大声でネアンは我に返った。


「……すまない。長老の言う通りだ。どうすればいい?」

(こういう時に選択を間違いそうになるのは昔から変わらない……何百年も生きているのに恥ずかしい話だ……)


(そもそも、私のせいでさなえは危険な所へ行く羽目になった……私の無茶のせいで……)


 ネアンはツグユに寄り添い、長老の指示を聞いた。


「ここに手をかざすんじゃ!」

「わかった!」


(しかし……フーちゃんの父親が武装せず通った時、外来種には襲われなかった……だが、同じように進んださなえたちは襲われた……一体何故……)


 ネアンの疑問は膨れるばかりであった……。


・・・

・・


――さなえ 洞窟内


「足が濡れて気持ち悪いですね……もう少し身長が欲しい所ですね」


 今さなえが歩いている場所は、ずっと足首まで水が浸かるような場所である。

 洞窟内は寒い程に冷えている事もあり、どんどん体温が奪われてしまう……。


「ぐぬぬ、こんな事なら……火の魔法も先に学んでおけばよかったです……」


 スペルカードに描いていた火の魔法陣を思い出そうとするも思い出せない。

 その状況にさなえは悶えていた。


・・・


(誰かいます……)


 さなえは再び壁の陰に隠れた。

 通路をずっと行くと大きなフロアが見えてきたのだが、そこに一人の男性が立っていたのだ。

 さなえは目を凝らして何者なのかを確認した。


「……え! あれはゼンレさん? どうしてこんな所に……」


――ガチャ


「そこに居る人、出てきなさい。撃ちますよ」

「……!」


 その男性はゼンレの姿をしているが、雰囲気はいつもと違う……。

 さなえは大人しく両手をあげて、ゼンレの前に立った。


「おや……貴方はネアンと一緒に居た……」

「さなえです。あたしは貴方の横にある緑水晶を取りに来たんです」


 さなえは凛とした態度でゼンレに言った。


「これですか……どうぞ、気にせず取りに来ればどうですか?」


 ゼンレはトリガーをしまい、緑水晶から少し離れた。


「……言われなくともです……!」


 さなえは不気味な雰囲気のゼンレに恐怖を抱きながらも前に進み、ゼンレの横にある緑水晶を手に取ろうとした。


「貴方……妙な状態ですね。記憶がないでしょう?」

「……ッ!」


 ゼンレはさなえの顔を覗き込んだ。


「なっ! いきなり近いです!」


 さなえは緑水晶を掴んだ後、咄嗟に後退した。


「しかし……[女神の力]は感じませんね……やはり、もう一人の方……」

「女神の力? 何を言っているんですか。あたしはもう行きますよ?」

「さなえと言いましたね。ここで会ったのも何かの縁……これを差し上げましょう」


 ゼンレはそう言うと5cm程の真っ黒なサイコロの様な物をさなえに投げた。


「……これは?」

「それを額に当てて、白い部分を押してください。貴方の記憶障害が治りますよ」

「……ッ!」

「要らなければちゃんと破壊して捨ててくださいね。この世界の物では無いですから」

「この世界の物では無い……? とりあえず貰っておきます! じゃぁあたしは急ぎますので!」


 そういってさなえは来た道へと戻っていった。


・・・


「さなえ……記憶が無い……というより封印されている状況……女神が何かの理由でやったか、あるいはシャドウの影響なのか分かりませんが……」


 ゼンレは不気味な笑みを浮かべた。


「まぁ封印が解ければそれも分かるでしょう……」


 ゼンレはそのまま粒子となり消えていった……。

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