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1話 復活の時

 昔々、世界は魔王影により支配されていた。

 地上にはシャドウと瘴気が溢れ、大地は汚れ切っていた。


 そんな世の中、この[始まりの森]に勇者であるフィアンとネビアという双子が生まれた。

 二人は毎日勉強と修行を行い、自身の魔力と闘気を高めあった。

 そして、ヒト族だったのにも関わらず天族へと覚醒し、仲間と共に魔王影討伐へと向かった。


・・・

・・


「そうして勇者一行は、数々の苦難を乗り越え、見事に魔王影を討伐したのじゃった。おしまい」


――パタンッ


「えー! もうおわりー? もっと聞きたいよ村長ー!」

「今日はこれでおしまいじゃ。さ、広場で遊んでおいで」

「はーい!」

「勇者ごっこしよ! 俺フィアンな!」

「私はネビア!」

「えー! いっつも二人がフィアンとネビアじゃん! ずるいよ!!」

「へっへー! タッチ出来たら代わってやる!」


 紙芝居を見ていた子供たちは皆広場へと走っていった。

 村長もそれを穏やかな目で見つめている。


「おや、君は見ない顔だね……旅の方かい?」

「すいません。勝手に一緒に見させてもらって……」

「いや、いいんじゃよ。にしてもこの森は何もないじゃろう?」

「いえ、とてもいい森ですよ。どこか懐かしさを覚えます……」

「昔はここも、[瘴気の森]と呼ばれる程に瘴気とシャドウで満ちておったそうじゃ……。こうやってわしらが暮らせるのも、すべては勇者様が世界を救ってくれたおかげじゃ」


(良かった。平和な世界は続いてそうだな……)


 ネアンは周囲を見渡した。

 空気は澄んでおり、温かい日の光が優しく村を照らしている。瘴気の森と呼ばれていたなど、この美しい森の姿をみたら想像もつかない。


「それよりお主……今時[魔法装具]をつけておらんみたいじゃが……」

「[魔法装具]……?」

「知らんのか?! これらの事じゃよ」


 そういって村長は腕輪とベルトについたホルダー……そしてその中に入っているカードをネアンに見せた。


「えっと……形状は分かったんですが……」

「この道具自体を知らないとは……さては島国から来た者じゃな?」

「あはは、まぁそんな所です」

(島国ってなんだろうか……この世界はこの大陸しかないはずなのに)


「折角じゃ、簡単に説明だけしてやろう」

「有難うございます」


・スペルカード

元は触媒紙と言う紙だったが、技術が進歩し、丈夫なカードになった。


・スペルカードホルダー

スペルカードを収納するベルト


・スペルバングル

腕輪状で、スペルカードを差し込む部分がある。

差し込んだ後、手を開くと、その場所に魔法陣が生成され、魔法が発動する。


・スペルシールド

[古代魔法]に属する魔法を無効化する。

防ぐ毎に消耗するので、消耗してきたらスペルカード[シールドバッテリー]で補充しなければならない。


その4つのアイテムを総称して

魔法装具という


「触媒紙が進化してカード状になったんですね……これは凄い……!」


 ネアンはカードを見て驚きを隠せなかった。


「触媒紙が使われていた時代なんて、もう何百年も前の話じゃよ? そんなに驚く事でも無いだろうに」


 村長はそう言いながら、ホルダーからカードを1枚取り出し、腕輪の挿入口にカードを入れた。

 そしてそのまま腕輪のついた方の手を開くと、掌の上で魔法陣が浮かび上がった。


――バーンファイヤ

魔法陣から焚き火のような火が燃え盛る


「ついでじゃ、どうやって吸収するか見せてやろう」


 そういって村長は同じ手順でファイヤボールを発動し、自身に当てた。

 すると、ファイヤボールはスペルシールドに触れたところからキラキラとした粒子に変化していき、そのまま何事も無かったかのように静かに消えた。


(凄まじいな……衝撃も無く完全に消えるのか……)


「ファイヤボールも綺麗に発動されるんですね……」

「触媒紙の時は使用者の魔力が必要じゃったが、これになってからは魔力は一切必要とせん……わしらのような魔力が低くなった老人にはありがたい話じゃよ」

「便利ですね……一度使うとカードは消耗はしてしまうんですね。カードが無くなったらどうするんですか?」

「そうなれば村の中央にあるネットワーク端末から注文するだけじゃよ! こんな場所でも注文してから2~3日以内には宅配鳥が運んでくれるんじゃよ」

(ネットワーク端末……?! 気になるが、あまり色々聞くのも悪いな……)


「なるほど……有難うございます。色々と勉強になりました」

「いやいや、久しぶりに村以外の人と話せて楽しかったぞい。聞きそびれていたがお主名前は?」

「私はネアンと言います」

「おや……この星と同じ名前とは……覚えやすくていいのう」

「よく言われます。では私はこれで……」

「ネアンよ、また遊びに来るがええぞ」

「有難うございます」


 そういってネアンはその場を後にした。


(村長少し笑いそうになっていたな……まぁ私は地球です。と言っているようなものだもんな……)


 ネアンはそんな事を考えながら、村から離れ、森の中へと入っていった。


「あった……」


 ネアンが見つめるその先には、一つの洞窟があった。

 洞窟の入り口には周りの風景には全く似合わない、機械的な扉で閉ざされている。


「かなり古びているように見えるが……」


 扉に張られた根をかき分け、丸い窪みのある部分が見えた。


――スッ


 ネアンは右の太ももにつけたホルダーから筒状の道具を出した。


「デバシー……ちゃんと動いてくれよ」


 ネアンの所持する筒状の機械はデバシーという電子機器である。

 大昔にある研究者からもらった超高性能な代物だ。

 現在この世界で所持する者はネアンくらいしか居ないだろう……


デバイスシリンダー(通称:デバシー)

見た目は鉄の筒で両端の先端部分にスイッチがあり、押すと起動する。起動すると、両端から一本の光る線が円柱を走り、その線部分が少し飛び出してくる。

それを引っ張り出すと、液晶画面だけのタブレットの様なものが出せて、スマホのように操作できる。手から離れて一定時間経つと消滅するが、なんども取り出しも可能。

デバシーには下記の機能も備わっている。


・次元倉庫

デバシーからタブレットを引き出し、その上にアイテムを置き名称登録することで収納することができる。容量は何とほぼ無限大だが一部収納できない物がある。


・周辺立体MAP

デバシーにはナノマシンが無数に入っており、それでタブレットなどに変換し使用するのだが、瞬間的にナノマシンを周囲5キロメートル範囲に散布し、立体mapを生成する。一度生成した場所は保管される。ただ、形を生成するだけで、より鮮明なMAPを作成するには実際に行かなければならない。


・デバシー同士での通話

その名の通りだが、現状は一本しかない為意味が無い。


(便利な機能は沢山あるが、ナノマシンを少し補充して、スリープ状態を解除しなければ、MAP機能や次元倉庫への収納機能が一切使えない)


 ネアンはそのデバシーを窪みにつけた。


――ガンッガシャ……


「よし、開いたぞ……」


 デバシーを当てた瞬間、扉に光の線が走り、扉が開き始めた。


 ネアンはそのままその洞窟の奥へと向かって行った。


・・・

・・


 時は少し遡り……


――1週間前


「ん……」


 森の奥深く……草木が生い茂る場所で、ネアンは突如目を覚ました。


「まぶしい……」


 その場所は、木々の間からは日が差し込んでおり、程よい湿気と気温を保っていた。


「何故……」


 ネアンは状況をすぐには理解できていなかった。

 遥か昔、地球で過労死した男性が死に、この世界へと転生した。それがネアンなのではあるが当時は少し状況が複雑であった。

 というのも、転生後はフィアンとネビアという二人に分かれ、この世界で暮らしてきた。奇妙な話だが、自分自身が二つに分裂しそれぞれ別人として転生していたのだ。


 今のこのネアンという姿は、フィアンとネビアがユニオン……つまり合体した時にだけなれる姿……第三の姿なのだ。


「そうか……私がこうして再びこの地に来たという事は……」


 ネアンは軽く目を瞑り、自身が眠りにつく直前の会話を思い出していた。

 フィアンとネビアの会話である。


・・・

・・


 真っ白の円形ホールのフロア

 扉から見て奥には玉座があり、更に後ろには黒く輝く大きな宝珠が台座の上で浮かんでいる。

 その宝珠を挟むように、二人の男性が立って話をしている。


「フィアン、もう闇の宝珠は枯れています。僕の無限の魔力……そしてフィアンの無限の闘気を還元しないとこの星は無くなります」

「ああ、そうだな。早速始めよう」

「フィアン……未練はないのですか?」

「ふふ……それはネビアが一番分かっているだろ?」

「ですね……」

「未練なんてあるわけがないだろ?」

「はい。僕たちは十分に生きて、十分に楽しみましたね!」

「ああ。何百年も生きた。十分すぎる程の幸せを感じる事ができた」

「そうですね」

「まぁ……結局、取り除く事ができなかった不安があるがな……」

「ええ、僕たちが宝珠と一体化し、居なくなった後……また女神やシャドウがこの世界を狙ってくるかもしれません……強いて言えば未練はそれでしょうね……」

「ああ……その為に、ネアンで復活できる様にお互いの力を還元しよう」

「ええ、それがいいですね」


――ゴゴゴ……


 宝珠が大きな振動を引き起こし、ひびが入り始めていた。


「もう時間が無いな」

「ですね」

「始めよう」


 そうして二人は両手で宝珠に触れた。

 すると、二人は真っ白に光り輝き、そのまま闇の宝珠に吸い込まれるように吸収されていった……。


 真っ黒で濁っていた宝珠は再び光り輝き、ひびは修復され、生気を取り戻した。


(このまま……何事も無くこの星が平和でありますように――)


・・・

・・


「……私が現れたという事は、この世界に脅威が迫っている……そうなんだな? フィアン、ネビア……」


 ネアンは目を開け、空を見上げた。


「よし」


 気を取り直して、ネアンは自身の装備を確認した。

 どうやら、所持している物はデバシーだけ……。

 念の為に、次元倉庫の中身を確認したが、空っぽになっていた。収納機能も今は使えない様だ。


(あるのはデバシー1本……しかも機能が制限されたスリープ状態になっている。倉庫には何も入ってない……無一文か……)


「……よし、とにかく周囲を探索しよう。まずは私が住んでいた家と研究所へ向かおう」


 そうしてネアンは行動を始め、小さな村を見つけたのであった。

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