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17話 謎の人物

「ここ数日、一人で店を開いてるようだね」

「そうだね。ここは子供が来るようなところではないからね」

「なるほど。まぁ今日も頑張りたまえ」

「ああ、言われなくとも頑張るよ」


 そうして、開店時間になった。


残金[黒210枚と白50枚] と 借金[黒150枚]


(借金は十分に返済できるが、返済するのはここで商売を辞める瞬間で良いだろう)


 ネアンがそう考えたのには理由がある。

 というのも早めに返すメリットが無いし、それだけの売上があると知られれば、何かと理由をつけて借金を増やしてくる可能性も否定できない。

 辞めると同時に全額一気に返済……これが無難であると考えたのだ。


(あいつらは……)


 客として店内に入ってきた二人組……ネアンはその二人の顔に見覚えがあった。


(駅で泥棒を撃った警備兵の内の二人だな……上官っぽい一人は見当たらないな。にしてもこんな所へ警備兵もくるのか……)


 さすがにその二人は警備兵の格好をしていないが、顔を見る限り間違いは無さそうだ……。


「……」


 二人は入場すると一直線に奴隷商の元へと向かった。


「へっへ。3人とも可愛い顔してんなぁ?」

「ええ、言葉は話せませんが、”使う”分には十分ですよ旦那」

「じゃぁこいつを貰おうかな」

「まいどぉ!」


 そういって警備兵は奴隷商に金を支払い、一人の腕をつかんだ。


「あ……あ……」


 少女は二人に助けを求めるが、拘束されていて動けない。

 ガシャガシャと首輪と鎖の音が響き、3人の少女の目には涙が見えた。


――ガシッ


「あ? なんだお前……」


 ネアンは手を無理やり引く警備兵の腕をつかんだ。


「女の子をそんな風に乱暴にしてはいけないな」

「うるせえ! これは俺が買ったんだよ。誰だよてめえ、口出しすんじゃねえ」

「というより、警備兵がこんな所へ入って奴隷を買ってるなんて知られたらどうなるだろうね?」

「お前……どこかで会ったのか?」

「駅前で泥棒を助けた姿は本当に格好良かったのに……残念だよ」

「ちっあの時の野次馬の一人か。だが……ここを出入りする連中に知られたって別段問題ないんだよな!」


 そういうと警備兵はハンドガンを取り出し、ネアンの頭に突き付けた。


「……」

「お前はここで死ぬ」


 周囲がざわついた。


(こんな短期間で二回もトリガーを突き付けられるとはね……)


 ネアンがそんな事を思っていると……


――ザシュッ!! ザンッ!


「は……?」


 警備兵が持っていたトリガーは突然バラバラになり、服も全部斬り刻まれ全裸の姿になった。


「お客様……ここでのトラブルは許しません。いかなる人でもね……」


(速い……!)


 目の前に現れたのは片手にナイフを持ったゼンレだった。


「うお! お前……こんな事して、ただで済むと……!」

「ただの警備兵風情がここで騒ぎを起こさない方が良い。君、警備隊にも居られなくなるよ……良いのかね?」

「……ちっ! おい行くぞ!」

「あ……!」


 全裸になった警備兵は再び少女を強引に引っ張り何処かへ去ろうとした……その時だった。


――グオォォォォ!!


「あ……? 今度は何だ?」


――ドゴン!


 突然お客用の扉が破壊され、そこから複数の外来種が姿を見せた。


「うわああ! 外来種だ!! 何故こんな所に!!」

「ひいい!」


 客たちは我先にと従業員用の出口を目指し逃げ出した。

 それは露店を開いていた商人達も同様だ。


「うわあ! 何でこんな所に……! しかも何故いきなり攻撃してくるんだ!!」 


 警備兵慌てて逃げて行った。少女はその際、押し退けられ倒れた。


「まったく……非番でも働いてほしいものだね。警備兵なら」


 ゼンレはそう言ってナイフを構え、3匹の外来種と対峙した。


「ゼンレ、一人じゃ厳しいだろう? 手を貸そうか?」

「ふう。ネアン殿、大丈夫だと言いたいが3匹は手に余る。ぜひお願いしたいものだ」

「分かった。代わりに借金を残黒100枚にしてくれ」

「ふっ……ちゃっかりとしている人だ。借金額は弄れないが、報酬として黒20枚を出そう」

「……まぁそれでいいだろう!」


――ピピピ


 すると、ゼンレの方から電子音が鳴った。ゼンレは耳につけているインカムの様な機械に触った。


「どうしたのだ? ……わかったすぐに行こう」

「ネアンよ、すまないがあちらにも一匹出た。こちらは任せたぞ。報酬は黒30枚、上乗せしよう」

「あ? おい!」


 ゼンレはそう言い残し、従業員用の扉へと走って行った」


――グォォォ!


「幸い全員フォーム1だ。右手だけで何とか行けるだろう……」


 ネアンはそう言って手を手刀の形にした。


(ネアン)――魔装・剣舞4連!

身体を高速回転させながら閃光脚で四方ステップし、相手を切り刻む。


――ザンッ! ザ……ザシュッ!


――グガァァァ!

――ドサッ


 ネアンは、まるでダンスを踊るかのように軽快にステップし、外来種を手で斬り刻んだ。

 外来種はそのままバラバラになった後、粒子となり消えていった。


「……痛い」


(ネアン)――ヒーリングライト


 ボロボロになった手をヒーリングライトで治し、周囲を見渡した。

 すると奴隷として売られていた少女3人が目に入った。


――バキッ


 繋がれていた鎖と首輪を砕き、少女3人を解放した。


「……」


 少女達は顔を見合わせ困惑している。


(このままお逃げ……と言った所でどうすればいいかもわからないだろうし、また変な奴らに捕まる可能性もある……)


「3人とも、とりあえず私と来るかい?」


 3人はまた顔を合わせ、その後すぐに大きく首を縦に振った。


「よし、じゃあこの騒ぎのうちに行こうか」


 そうしてネアンは3人を連れて、客用の出入り口から地上へと戻っていった。


「3人とも、このフードを被って」


 そういって渡したのは、ツグユ達に着させていたフードと同じ物だ。

 3人は深くそれを被り、出口へと共に走って行った。


・・・

・・


――宿


「あ、ネアンさんおかえ……?!」


 さなえはネアンと3人の少女を見て目を見開いた。


「あ、向こうで立ってた3人だね! どうしてここにー?」

「実は……商売していた場所に外来種が現れてね……」

「ええ!?」

「何とか3人を助けて逃げて来たって訳なんだ」

「それは大変でしたね……!」

「あの……有難う……」


「おや、話せるんだね!」

「うん。わたしだけ話せるよ……二人も昔は話せたんだけど……」

(……心因性の声が出ない症状だろうか……どちらにしても大変な目にあったんだろうな……)


「そっか……とにかく座って。お腹は空いてないか?」

「すいた……」

「よし、じゃぁ夕食を一緒に食べようか!」

「うん!」

「一気に3人子供が増えましたね。よし、多めに作りますね!」


 そうして皆で食事を取った。


・・・

・・


――少し遡り……

――外来種襲来直後


――グォォォ!


「まったく、指定した場所に出て欲しいものですね」


 ゼンレはぶつぶつと言いながら懐からトリガーを出した。

 ゼンレの姿はいつもと同じだが、雰囲気が異なる。


「ぐあああ! 助けてくれ……!」


 外来種に足を切断された男は3人の少女を売っていた奴隷商だ。

 ゼンレの足にしがみ付き助けを求めているが、ゼンレはその男にトリガーを向けた。


――バシュンッ


「が……何で……」

「丁度いい機会です。奴隷商……嫌いなんですよね。貴方が居なくなればもう奴隷商はここから消えますからね」


 ゼンレの持つトリガーは誰のものでもない特殊な形状をしており、飛び出した弾も矢のように長い形だった。


――バシュッ、バシュ……


 外来種はゼンレの放つ2発の銃弾を受け、そのまま消滅していった。


「ネアン君……あの時よりかなり強くなっていますね。まぁいくら強くなろうとも……古代魔法しか出来ないのであれば、無意味ですがね……」


――ピピピッ


「ふぅ……外来種の近くに居ると、”あっち”の通信を受信してしまうのが欠点ですね。場所までは分からないでしょうけど……」


 ゼンレはそう言いながら取り出したのは、ネアンしかもっていないと思われたデバシーだった。

 そして、通信先情報には"ヴァンガード"と写されていた。


「さて……そろそろ私も準備をしなければなりませんね」


 そういってゼンレはどこかへと消えてしまった……。


・・・

・・

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