表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/45

16話 客層の違い

――閉店時間前


「……結局、売れたのは最初のお客様だけだったね」

「ですねー……」

「これは少し考える必要があるね……帰ったら会議だ!」


「やぁ初日の調子はどうだったかな?」

「ゼンレ……まぁ正直売上だけを見ると過去最高だったよ……」

「そうか、それはよかったよ。この露店は今までのは大きく環境が違うのは見て分かるだろう」

「ああ、そうだね。こんな高級な露店は見た事が無いよ」

「客層ももちろん違う。どうだ、助言をしようか?」

「……お金をとられないならね」

「あっはっは。もちろん無料だよ。こちらとしても早急に借金を返して欲しいからね。僕の助言で売れる様になればお互いにとってメリットだよ」

「わかった。じゃぁ教えてくれ」

「よし、といってもここの客層の話についてだがね」

「ああ、それで十分だよ」


「さて、今日一日の客層を見て気付いているかもしれないが、ここに来るお客はお金を持て余した方々だ」

「ああ、服装や装飾を見てわかるよ」

「そんなお客様たちは上の雑貨装飾通りなどで買える商品には飽き飽き……刺激を求めてここへ来店される」

「……」

「珍しい商品であればどれだけ高くとも、購入する人はいるだろう。ここでの商売は数を捌くのではない。大物のみを狙うと良い」

「なるほど……」


 ゼンレの助言はネアンを納得させるものだった。自身の考えにも近しかったことから、明日からの方向性が見えてきたようだ。


「ありがとう。参考にするよ」

「いえいえ」


 そういって3人は荷物をまとめ、帰路についた。


・・・

・・


「大物ですか……」

「最初のお客が特殊だったけど、上級の光と闇魔法を店頭に並べてみるといいかもしれないな」

「ネアンさん、光と闇ってどんな魔法があるんですか?」

「そうだね……上級だと危ない魔法ばかりなんだけど……」


 ネアンはそう言ってデバシーの画面を二人に見せた。

 そこには光魔法と闇魔法について描かれていた。


――――

・闇魔法


シャドウスパイク

シャドウスピアに形態、形状変化、状況によって移動術式を追加

無数の闇の槍をを魔法陣から出現させる。


シャドウエクスペンション

シャドウボールに形状、形態変化し移動術式を追加

シャドウボールを放ち、触れたところで膨張し辺りを飲み込む。

飲み込まれたものは闇の中で、魔力と闘気を大きく削られる。弱いシャドウなら消滅。


チェーンシャドウ

シャドウスピアに形状形態変化、移動術式闇の鎖で相手を束縛する。


アブソリュートシャドウ

シャドウボールに形状形態変化し、シャドウボールが消失すると同時に辺りを吸引する


・光魔法


チェーンライト

光の鎖が相手を束縛する。チェーンシャドウより束縛力は低いが、シャドウ等には絶大な効果がある。


シャイニング・レイ

ホーリーランスに形態、形状変化、状況によって移動術式を追加

無数の光の槍をを魔法陣から出現させる。


シャイニングウォール

ホーリーランスを形状形態変化し、光の壁を生成する。


フラッシュエクスプロージョン

ダメ―ジは無いが、とてつもない光を発して爆発する。目つぶしに効果的である。

――――


「上級はざっとこんな感じだね。全部スペルシールドに吸収されちゃうけどね……」

「攻撃スキルは売れなさそうですよね……」

「だね。一応考えているのはチェーン系魔法2種とシャイニングウォールかな」

「シャイニングウォール?」

「ああ、こんな魔法だよ」


 ネアンはそう言って魔法陣を描き始めた


――シャイニングウォール


 すると、魔法陣から長方形型の光り輝く壁が現れた。


「おお……優しい光ですね……」

「この魔法、本来は闇魔法とかを防ぐために使う魔法なんだけど……攻撃が当たらない場合持続時間が結構長くてね。ろうそくのような役割で照明やサプライズの時に使えないかな? とね!」

「なるほど……いつもと違う空間をこれで演出する訳ですね……売れるかもしれないですね!」

「サンプルとして、この魔法を露店で発動させておけばきっと目に付くはず」

「いいですね! 明日はその作戦で行きましょう!」


 そうして簡単な会議は終了、3人は眠りについた……。


・・・

・・


――4日後


 上級魔法に絞って商売を行う手法は結果としては順調である。

 この3日間、購入してくれたのは4名のみだったが、

 シャイニングウォールとチェーン魔法合わせて15枚を単価、黒5枚で売ったため合計黒75枚の売上だ。


(接客機会は大幅に減少したが、やはりゼンレの言う通り一人当たりの購入単価が高い。こんな上級魔法、上の露店で黒5枚なんかでは売れないだろう)


残金[黒145枚と白20枚] と 借金[黒150枚]


「今日で借金分くらいは稼ぎたいところだね」

「頑張りましょう!」


 そういってネアン達は準備を行い、いつも通りに開店した。


・・・

・・


 目の前に行きかう人の種類は変わらない。人寄せに置いたシャイニングウォールの照明もチラ見する程度の人が殆どだ。


「あら、可愛いエルフ族だねえ」

「え! 有難うございます」


 そう言って話しかけて来たのは太ったマダムの様な女性だった。


「おや、言葉を話せるのかい! お兄さん、いくらだい?」

「え……どちらの商品でしょう」

「この子達さ!」

「……は? いや、すいません。この子達は売ってないですよ。私の大事な友人です」

「あーら、それは失礼! でも本当に残念だわぁ……」

「スペルカードなら何でもご用意できますよ。如何ですか?」

「いえ結構。じゃぁ失礼するわね」

「はい」


 そういってマダムは何も買わずに去っていった。


「ねぇお兄ちゃん、今のはどういう意味ー?」

「いや、意味とかは無いよ。なんか勘違いしてたみたいだね」

「そうなんだね!」

「ああ……さて、残りの時間も頑張ろう」

「はーい!」

 

・・・


「今日もお疲れ様です!」

「二人とも、一瞬片づけを任せるよ」


 ネアンはそう言ってツグユが見つけた3人の少女の方へと一人で近づいた。

 その時、少女たちが首輪で拘束されている事に気付くと同時に、奴隷として売られていると悟った。


(奴隷制度はまだ無くなっていないのか……)


 拘束を外し逃がしてやりたい気持ちを堪え、ネアンはその場を後にした。


・・・

・・


――その夜


「二人とも、明日から店番に来なくていいよ」

「え!? 何でですか!」

「理由は簡単だよ。修行に集中して欲しいんだ。上級魔法だけど、まだ通常発動も出来てないだろ?」

「そうですね……」

「店は私一人で見れるし大丈夫さ。学園に入学する前に古代上級魔法までは使える様になって欲しい所だしな!」

「分かりました……!」

「えーじゃぁお留守番なの?」

「お留守番じゃないよ。修行だね!」

「ツグユちゃん二人で頑張りましょう! 帰ってきたネアンさんを驚かせましょうね!」

「わかった!」

「いい子だね! じゃぁ今日も寝ようか!」


(これで少女が売られているなんて事実に、気づく事は無いだろう……)


 そうして3人は明日に備え眠りについた……


・・・

・・


 ネアンが一人で露店を開くようになってから、3日後……ある事件が起きた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ