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15話 高級露店

――翌朝


「やぁ待っていたよ」


 ネアンが約束の場所に来た時、既にこの前の男は立っていた。


「快諾いただき、本当に有難う。申し遅れたが、僕の名はゼンレ。ブラックマーケット商会の者だ」


 ゼンレはそう言いながら右手を出した。


「……快諾した覚えはないけどね。私はネアン、まぁ宜しく頼むよ」

「ネアン……非常に覚えやすい名前だね」

「よく言われるよ。このやり取りばかりで嫌になるね」

「……それは失礼。では僕について来てくれ」


 そういってネアン達はゼンレについて行った。


・・・


 闇露店通りをどんどん奥へと進んでいく……。

 段々と人の気配も少なくなってきたようだ。


「どこまで行くんだい?」

「ええ、もうすぐ着くよ。出店者用の入り口は遠くてね。すまない……っとここだ」


 そういって目の前に1枚の鉄扉が現れた。

 そこには一人の門番が立っている。


「あ、ゼンレ様お疲れ様です!」


 門番はゼンレに元気よく挨拶をした。


「ああ、いつもご苦労。さて、ネアン、このバッジを渡しておくよ」


 そういってゼンレに手渡されたのは、青いバラのバッジだ。


「それを入場する際に門番に見せたまえ」

「……わかったよ」


「さぁでは皆さまどうぞ中へ……」


 門番は鉄扉を開けた。


「……」


 中に入るとシンプルな通路が続き、その先にはまた鉄格子の扉が現れた。

 ゼンレはその鉄格子を引き戸の様に開け、ネアン達を中に入れた。


「少し揺れるから気をつけたまえ」


 そういって、ゼンレは壁に設置されたレバーを引いた。


――ゴゴゴゴ……


「わっ……すごい! エレベーターだー!」

「ツグユ、大人しくしておいてね。ちょっとでも手を出すと削れてなくなっちゃうよ」

「うう……こわいエレベーター……」


(しかし、結構下に降りるな……)


――ガコンッ


 エレベーターは停止し、そのまま通路を真っ直ぐに進む……目の前にはまた扉が見えた。


 そこを開けると……


「え……なんだいここは……」

「綺麗な場所ですね……」


 目の前には予想外な光景が広がっていた。

 中央には大きな噴水、赤いカーペットの床、天井には豪華なシャンデリアが飾っており、出ているお店も高級感が漂う店舗ばかりだ。


「まるで高級カジノだね……」

「ここでお店を出すんですか? あたし達……」

「その通りだ。君達はこっちだ」


 客はまだ入っていない様だが、出店されている店舗は既に準備が終わっているようだ。


(同じ露店でも出店場所の違いでここまで大きく雰囲気が変わるとは……だが……)


 高級感があるのは間違いないが、店の商品を見ると物騒な物が並んでいる。


(違法な薬や飲み物……臓器まで売っているな……)


「ねぇねぇ、あっちに可愛い子が立ってるよ? あの子達もツグユみたいに店番かな?」

「よく見えるね……きっとそうだろうね」


 ツグユは遠方に見える3人の少女を指差した。

 3人ともヒト族の様だが、遠目で見る限りはドレスを着ており決まっているように見える。姿勢もかなり良い。


「さて、君達はここだ」

「おお……」


 目の前には綺麗な木目調のイスとテーブル、ガラスケースは二つ設置されている。


「見栄え的に、このガラスケースに何枚かカードを飾って欲しいね。基本的にはこの机でカードを描くとよいだろう。それと……」


 ゼンレは話しながら横に置いていたアタッシュケースを開いた。


「その恰好では見栄えが良くない。客が来る前にこれに着替えてくれ。さ、急いで」


 そういって出してきたのは男性用のタキシードスーツ、そして二着の小さいメイド服だ。


「わー! かわいい服! 着たい着たい!」


 そう言いながら3人はその服へと着替えた。


「ぴったりだね……」

「ええ、僕の目に狂いはなかったようで良かった」

「さなえちゃん可愛いー!」

「ツグユも凄く可愛いですよ」


 メイド姿の少女とタキシードスーツの男性……

 この場所では非常にマッチしていた。


「さて……僕は仕事があるから行くとしよう」

「こんな所で場所代が要らないなんて……これは来てよかったね!」


 ネアンは喜んでいたが、その瞬間ゼンレが1枚の紙を出してきた。


「最後にこれ……服飾台とガラスケース、机などの費用だ。支払いはゆっくりで構わない。だが、返済前に出店をやめる事だけはお勧めしないよ」

「え……」


 ゼンレはそのまま紙を机に置いて何処かへ行ってしまった。


「費用って……黒150!? おい! ゼンレ!」


 紙の内容はどうやら請求書だったようだ。ネアンはすぐにゼンレを呼んだ。


「もう居ないですね……」

「く……! 騙された! すぐに抗議しに――」


――まもなくお客様が来店します。開店準備を急いでください


 会場に声が響き渡った。


「もうお客さん来ちゃうみたいですよ!」

「くそ……仕方がない。やってやろう。黒150なんてすぐだよきっと」

「そうですね! 頑張りましょう!」

「可愛い服で頑張るぞー!」


(まぁ……メイド服で喜んでるし良いか……)


 少し怒ったネアンだったが、二人のうきうきな姿を見て少し微笑ましい気分になった。


残金[黒15枚と白20枚] と 借金[黒150枚]


・・・

・・


――開店です!


 声が響き渡った。


 しばらくすると、高級そうな装飾で身を包んだ人たちが沢山入店してきた。


「お客さんも皆金持ちそうですね……!」

「そうだね……でも、こんな人たちが上級魔法とか買ってくれるんだろうか……前の所で冒険者相手に商売している方がよかったんじゃ……」


 客層をみて、ネアンは早速不安になってきたようだ。

 だが、その不安もすぐに払拭されることになる。


「お兄さん、魔法何でもスペルカードに描けるんだってね?」


 丸坊主の男性と小太りで猿ぐつわと首輪をつけられた中年がお客としてやってきた。


「……ようこそ、何なりとご注文してくださいませ。オススメは古代上級魔法です!」

「ふご……ふご……」

「ふーん。じゃぁこれは描ける?」


 そういって丸坊主の男性が見せてきた紙にはこう書いていた。


古代闇上級魔法:チェーンシャドウ

シャドウスピアーに形状形態変化、移動術式闇の鎖で相手を束縛する。


「闇魔法ですね……これはかなり大変なので、1枚黒5枚ですが……」

「ええ、いいわよ。描けるのね? とりあえず1枚描いて頂戴」

「あ、はい……」


(くそ! もう少し吹っ掛けられたのでは!?)


 ネアンはそんな邪心を見せながらも、さっとチェーンシャドウを書いて渡した。


「素晴らしいわね……でも本当に使えるのかしら」


 そういって男は黒5枚をネアンに手渡し、バングルにスペルカードをセット、猿ぐつわの男に向けて発動した。


~~チェーンシャドウ!!


「フゴォォォォン!」


 チェーンシャドウは猿ぐつわの男に巻き付き、男はそのまま倒れてしまった。

 その表情はとても嬉しそうだ……。


「……」

「あ~ら……いいわねええええ! ねえお兄さん、後10枚程貰えるかしら?」

「え!? 有難うございます!」


 そういってネアンはその男の事は考えない様にし、10枚のスペルカードを描いた。


・・・

・・


残金[黒70枚と白20枚] と 借金[黒150枚]

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