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13話 強襲

――翌日 闇露店通り


「おじいさん、今日も宜しくね」

「よお……旦那……」


 おじいさんの顔は大きく腫れあがり身体中怪我をしている様子だ。


「その様子だと……昨日は頑張ってくれたようだね」

「あいつら金も返したのにその後この仕打ちだ……ヒーリングライトも滅多に出回らねえし、治療費で大赤字じゃ。まったく……」


――ヒーリングライト

回復魔法、擦り傷切り傷捻挫等なら治せる。ネアンの魔力量をもってすればより複雑な怪我も完治する。

だが死に直結するような致命的なダメージは治らない。


「うぉ……! 痛みが……完全に引いたぞ! お主……光魔法も使えるなんて本当に何者だ……!」


 ボコボコになっていたおじいさんの無数の怪我は全て完治していた。


「凄い! 怪我もすぐに治せるんだね!」

「あの程度ならね。死に直結するような致命的な怪我までは治せないけどね……」

「光魔法も使えるし上級も描けるし……ますますお主がここで商売する意味が分からなくなってきちまった……」

「光魔法と言っても……ヒーリングライトは初級魔法に分類される。カードも出回ってそうなものだけど……」

「光と闇魔法は特別じゃ……よっぽどの適性が無いと使う事は出来ん……少なくともお主の様なヒト族で使える奴は初めて見たぞ。エルフが使うのならまだわかるんだがな」

「成程……まぁとにかく場所を守ってくれてありがとう。おじいさん」

「ああ、いいって事よ。こうして怪我も治ったしな! じゃぁまた時間になったら戻る!」


 そういっておじいさんはまたどこかへと消えていった。


「さて、今日も頑張って売ろう!」

「はーい!」

「二人はスペルカードに印字の修行ね!」

「が……頑張る!」


 そうしてネアン達は今まで通りに商売を始めたのであった。


・・・

・・


――夕方片付け中……


「できたよおおお!」


 帰り際、ツグユが1枚のスペルカードを掲げて叫んだ。

 手にはアイススピアが描かれたスペルカードを持っている。


「お! ツグユもついに出来たね!! おめでとう!」

「やっとさなえちゃんに追いついたよ!」

「ツグユちゃん! よく頑張りましたね!」

「えへへ……」


 どうやら修行の甲斐あって、スペルカードに古代中級魔法であるアイススピアを印字できたようだ。


「二人とも、これが印字できるようになったって事は格段に魔力の量が上がっているはずだよ。古代上級魔法の練習も初めていいかもしれないね!」

「ついにですね! よく売れるアイススパイクを描けるようになれば……ネアンさんの手伝いができます!」

「ありがとう。でも上級を印字となるとまたとてつもない魔力が必要だ……まずは普通に魔法を発動できるようになるのを目指そう」

「はーい!」


 そんな会話をしながら片付けが終わり、3人は帰路についた。


・・・


 還る際にいつも通る、人通りが殆どない通路。今日は更に人の気配がない。


「……」


 その事に少し違和感を持ったネアンだったが、その瞬間……


――バッ!


――ガチャ……


「あばよヒト族」


――ドンッ!


「え! ネアンさんッ!!」


 この間、ほんの数秒の出来事だった。

 突然、ネアンの頭上から狼人間のような容姿をしている二人の獣人族が飛び降りてきて、ネアンの頭にトリガーを突き付けた。

 そいつは、間髪入れずにそのトリガーを撃ったのだ。


 ネアンはその衝撃で吹き飛び、倒れた。


「ひゃはっは! こいつで丁度10人目だ!」

「おい、そこのエルフ族二人、大人しくしろ。撃たれたくなかったらな」


 そう言って獣人の一人はトリガーをツグユとさなえに向けた。

 ネアンを撃った方はネアンの様子を見ながらゆっくりとネアンのカバンを漁り始めた。


「さなえちゃん……怖い……お兄ちゃんはどうなったの……!」

「大丈夫ですよ……大人しくしましょう」


「お前らの事は見ていた。スペルカードに印字が出来るんだってなぁ?」

「ええ、だとしたら何ですか」

「俺達の為に、印字をするってなら命だけは助けてやるよぉ」

「……」


「ぐあ!!」


 その瞬間、ネアンの所持品を漁っていた獣人の悲痛な叫びが聞こえた。


「おいどうし――」


 さなえたちにトリガーを突き付けた獣人はネアンの方へと振り向いた。

 その目にはトリガーを奪われ、ネアンに突き付けられている様子が写っていた。


「ためらいも無く引き金を撃ちやがって……私で10人目と言ったな……屑野郎が……!」

「ひぃぃ脳天を撃ったのに何で生きてやがる……! やめて……助けて……」

「あの世で9人に土下座しな」


――ドンッ


――ズシャァ……


 獣人は顎からトリガーを撃たれ、即死した。


「お前! くそ! 何で生きてやがる!!」

「すまないね。その程度の威力では私の魔装魂は打ち抜けないよ」

「魔装魂……! 今時そんな技を使える奴が……くそ!」


 そういってさなえ達にトリガーを向けた獣人はさなえ達に駆け寄り、二人を捕まえようとした。


(ネアン)――閃光脚 

足に闘気を溜め、瞬間的に移動する。


――ザンッ!


「ぐぁぁぁ! 腕がぁぁ!」


 ネアンは一瞬で詰め寄り、手刀で二人を掴もうとした腕を両断した。


「頼む……待ッ――」


――チュドンッ!!


(ネアン)――ファイヤエクスプロージョン

バーンファイヤに形状、形態変化、場合によって移動術式を追加

魔法陣から爆発を発生される。


 ネアンは相手の返事を待つことも無く、魔法を放ち二人の獣人を葬った。


「ネアンさん……」

「ごめんね二人とも……とんでもない光景を見せてしまった……」

「いえ、助けて頂いて有難うございます……」

「すごい……」


 さなえが恐怖で怯えている横で、目を輝かせてこの光景を見ていたツグユに、ネアンは少し複雑な気持ちになっていた。


・・・

・・


――翌日 闇露店通り前


「号外がでてるよ~」

「1枚もらえるかい?」

「はいよ」


 そういってネアンは新聞の様な媒体を男性から受け取った。


「……」


――

ブラッドブラザーズ、闇露店通り付近で死体で見つかる。


一人はトリガーによる死亡、もう一人は焼死体で発見されたようだ。

懸賞金が掛けられているのにも関わらず、死体が放置されていた事から、

二人の間でのトラブルにより共倒れになったのではとの見方が強いようだ。


(中略)


ブラッドブラザーズは殺人・強盗・詐欺の容疑でギルドより懸賞金が掛けられていた。

闇露店通り付近で見つかった事から、他の指名手配者も闇露店通りに隠れているのでは? との声も上がっているようだ。

そう言った理由で、改めて闇露店通りの一掃をした方が良いとの声が強まった。

――


「これって……ネアンさんが……」

「ああ、絶対そうだね……。まさか懸賞金なんて掛けられていたとは……!」

「気になるのはそこですか! でも、とんでもなく悪い奴だったみたいですね……こんな人、殺して正解ですよねきっと」

「……」

「さなえちゃん、当たり前でしょ! 悪い奴はやっつけなきゃダメなんだよ!」


 ツグユは興奮気味に話している。


「ツグユも絶対悪い奴を倒せるようになるんだから!」

「さなえも思う所があるかもしれないけど、この世界は昔からこんな感じだ……悪い奴はいるし、やらなきゃやられる場面だって今後も出てくるかもしれない……」

「そうですよね……」

「まぁ私は、なるべく二人が誰かを殺さなければならないような事態にはしない。人殺しなどしないに越した事は無いよ」

「はい……」

「まぁ外来種とシャドウみたいに問答無用で襲ってくる奴は倒してもらうけどね!」

「うん! ツグユ倒すよ!」

「あはは、心強いね」


 この会話の時、さなえは浮かない顔をしていた。


(さなえ……大丈夫だろうか……)


 トラウマになってなければいいが……そう思うネアンだった。


・・・


「お。旦那! 今日も宜しく!」

「おじいさんどうしたんだ? なんだか機嫌がいいみたいだね」

「おうよ! ブラッドブラザーズが倒されたみたいでな! 久々に天国の母ちゃんに吉報を伝える事ができるってもんだ……」

「天国……」

「だいぶ前の話だがな! 母ちゃんは奴らに殺されてな……まさかあの古ぼけたスペルカードを売ってたやつらがそうだとは、思いもよらんかったがな……」

「……そうだったのか。きっと無念も晴れただろうさ。じゃぁ今日も場所を貸してもらうよ」

「へへ、まいど! って旦那? 10枚って間違いすぎだろ!」


「今日は墓参りするんだろ? それで立派な花でも供えてやってくれ」

「いやしかしだな……」

「人の善意は黙って受け取っておきな。さぁ、早く母ちゃんに顔を見せてあげると良い」

「だんなぁ……有難う! 立派な花を添えるよ!」


 おじいさんはそう言って駆け足でその場から離れた。


「ネアンさん、優しいですね」

「まぁここを借りてるおかげで、だいぶ儲けさせてもらってるしね。日頃の感謝も込めてだよ。さ、開店準備だ」

「はーい!」


 そうしてネアン達はいつも通りに露店を開いた。

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