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第九話~花々~

 俺の部屋には兄と姉妹の三人がそろっている。


 お兄ちゃんは白いシャツに動きやすいズボン。ところどころに銀の装飾が入っていてお兄ちゃんの銀髪とマッチしている。


 お姉ちゃんもラフな格好をしている。こちらは金色が差し色に使われている。お姉ちゃんは金髪だしお兄ちゃんと正反対だ。


 そんな俺は帽子にワンピース。これが麦わら帽子で虫網もあればただの虫取りに来た小学生だが、あいにく虫網は無い。


 という訳で、今日は四葉のクローバー探しだ!


「セシリーと一緒にお外を散歩できるなんて楽しみだわ」


「おいおい。散歩じゃなくて四葉のクローバー探しだろう?」


「あはは。でも見つからなかったら別にピクニックにしちゃっても良いよ?」


「ほら。セシリーだってこう言ってるじゃない」


 本当は俺一人で探しに行くつもりだったのだが、今日は学園が休日ということで兄と姉が二人して俺の部屋に揃った。そして、着付けをしていた俺の事情を聞いて、二人して出て行って、今再集合したという訳だ。


 流石にお兄ちゃんの方が戻ってくるのは早かったが、動きがそろっていて兄妹だなあと思った。


「さあ、行くわよ!」


 待ちくたびれたのか、そう言ってお姉ちゃんは部屋から飛び出していった。


 取り残された俺とお兄ちゃんで顔を見合わせる。


「あはは。僕たちも行こうか」


「うん」


 お兄ちゃんに押してもらって部屋の外に向かう。


「そう言えば、何で今日なんだい?」


「あれ?言ってなかったっけ?」


「うん。今セシリーが受けてるクエストに必要だから探しに行くということしか聞いてないね」


 そうだっけ。言った気になってた。


「えっとね。四葉のクローバーが必要は必要なんだけど、そのまま使うんじゃなくて、加工して使うの」


「ああ。押し花みたいにするのかい?」


「どっちかって言うとコーティングなんだけどね。そのコーティング剤になる素材が今日届くみたいだから、今日探すことにしたんだ」


 できるだけ新鮮なまま加工しなければいけないらしいからね。


「まあ、すぐ見つかるとは限らないし、見つからなくても四葉のクローバーが関係しない部分の加工をすれば良いだけだし気長に探すよ」


「そうかい?」


「それよりも、お兄ちゃんとお姉ちゃんとピクニックする方が大切だしね!」


「あはは。嬉しいことを言ってくれるね」


 そう言って俺たちは笑いあった。




 階段はお兄ちゃんが下ろしてくれた。さすが鍛えてるだけあって軽々だった。


「遅いですわ!」


「ごめん」


「ごめんなさい」


 玄関を抜けると、そこには、腰に手を当て仁王立ちしたお姉ちゃんが居た。


 まあ、ゆったりしすぎた俺たちが悪いんだが。


 しかし、絵になるなあ。


 胸を張っているので、年齢にそぐわない大きさのお胸様が強調されている。訓練で引き締まった肉体には綺麗なくびれが出来ていて、完璧なプロポーションだ。容貌もお母さんに似て端正なので、大層モテるだろう。


 あんまりそういう話は聞かないけど。


「まあいいですわ」


 お姉ちゃんの金髪が風に舞う。


 おおー!すごい、お姉ちゃんみたいな美人が髪を払う姿はまるで絵画のよう。


「さあ、行きますわよ!」


 今度はお姉ちゃんが車椅子を押してくれるみたい。


 車椅子を押してるだけなのにとても楽しそうだ。こんなほころぶ様な笑顔を見せられたら俺まで楽しくなってくる。


 浮き上がる気持ちに逆らわず、小さな手を掲げる。


「お散歩にしゅっぱーつ!」


「おー!」


「お…おー」


 


 遊歩道を進んで行く。春の風が気持ち良い。


 夏になる前にしか楽しめない風を楽しんでいると、気づけば知らないところまで来てた。


 動けるようになってから外にも何度か出たけど、こっちの方には来たことないなあ。


「さあ、ここが我が家の花壇よ」


 そうして辿り着いた場所には色とりどりの花が咲いていた。


 花壇に咲いている花もあれば、プランターのものもある。


 と言ってもどれが何の花かは分からないけど。例によって図鑑は当てにならない。ていうか植物って写真で見ても良く分かんないのに絵じゃなおさら分かんないよ!


 まあ、前世でも有名な奴なら分かるけど。


 ほら、あれとかチューリップじゃない? あれは…多分、マーガレットかな?


「これはベゴニア、こっちがバーベナだね」


 お兄ちゃんが説明してくれる。


 なんだか、すごく似合う。花言葉とかも知ってそう。


「これは?」


 目についた花を指さす。


 お祖母ちゃんの眼みたいに優しい青色の花だ。どっちかって言うと薄紫かもしれないけど。


「それはロベリアだね。青や紫、赤、白色のものもあるよ」


「「へー」」


 あれ?


 上を見上げると、感心しているお姉ちゃんの顔が。


 そのお姉ちゃんと目が合う。


 気まずい沈黙。


「わ、私も知ってたわ…」


 言葉尻が震えてますよ、お姉さま。


 俺がジト目で見ていると、つい、と目線をそらした。


 可愛い。


 しかし、目をそらした先で何か見つけたのか、その顔に笑顔を浮かべる。


 なんだなんだ? 目線を追っても良く分からない。


 そんな俺を乗せて、お姉ちゃんは車椅子を押してずんずん進んでいく。


 すると、そこ一帯には見慣れない花が。


「これがカレンデュラよ!」


 満面のどや顔でそう言った。可愛いお姉ちゃんだなあ。


 ムフフと笑いそうになるが、ごまかせたと思っているお姉ちゃんに悪いのでやめておく。


 それにしても、なんか見覚えのある花だな。名前は聞いたことがあるような気もするが、実物を見たのは初めてだと思うけど。


「うーん…。あ!ヒマワリだ!」


 すっきりすっきり。鮮やかな橙色をした花で、よく見れば違うけど、なんとなく似ているのだ。


「やっぱりそうよね?だから私も覚えていたのよ」


 お姉ちゃん。それ墓穴掘ってない?


 まあ、本人が気づいてないみたいだしそっとしておこう。


「よく気付いたね。カレンデュラもヒマワリも同じキク科なんだよ」


 そんな感じで和気あいあいと進んで行き、色とりどりの花壇エリアを抜けてその先へ向かう。


 花々の濃厚な香りもしなくなったころ、今度は一面緑の草原に出た。ところどころに白い花が見える。


 なんか、子供がかけっこしそうな場所だ。


「この道を真っ直ぐ辿ると東屋があるんだ」


 そう言って、お兄ちゃんが草地にできた飛び石の道を指さす。


 おお。調和してて分からなかった。これも庭師の仕事かな。


 車椅子では行けないので、お兄ちゃんが抱え上げてくれる。


 そのまま歩いて行くが、体幹がしっかりしているのか全く揺れない。


「あの白い花がクローバーの花だね。あの辺りを探せば見つかるかもしれないけど、一旦東屋まで行こう」


 へえ。あれってシロツメクサだよな? 花冠とか作る奴。


 そう言えば前世で聞いたことあるな。シロツメクサとクローバーって同じものなんだっけ?


「あの花なら訓練場にも咲いてるわよね?」


「訓練場のは雑草防止だね。でも、端っこの方はともかく、使ってる場所はほとんど踏みつぶしちゃってるし、こっちの方が見つけやすいと思ったんだ」


 そう言って、何時もより近い位置にある美形顔が微笑む。


 そこまで探す気はなかったけど、ちゃんと考えてくれてたんだ。嬉しい。


 せっかくお兄ちゃんが考えてくれたんだし、今日見つかってくれれば幸先がいいんだけどな。


「ありがと!」


「どういたしまして」

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