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第八話~クエスト~

「どうかしたのかい?」


 背中のお父さんが心配そうに顔を覗き込んでくる。


「大丈夫」


「本当かい?」


「うん。ちょっと驚いただけだから」


 ふう。いろいろ言いたいことがあるが、ひとまず落ち着こう。


 うん。クエスト。これって神様が言ってたイベントの一環かな。というかそうに違いない。


 なら、さっきの声が神様が言っていた統括AIってことかな。こちらの世界では神様扱いされているって言う。


 なんか思ってたより機械的だった。あと女性の声だった。


 っていうかそれよりも、駄洒落ですか!?


 賢者の遺志って賢者の遺志って!?


 いや、落ち着け俺。初めてのイベントだからって興奮するな。予想以上にゲームっぽくてテンション上がるが落ち着くんだ。


「本当に大丈夫かい?」


 ほら、心配させてしまったじゃないか。


 一度深呼吸して落ち着く。


「うん。もう大丈夫」


 そう言ってもう一回手紙に目を落とす。


 やっぱりさ。賢者の()()ってことは、この人亡くなってるのかな。なんだかやるせないな。


 さてと。気持ちを切り替えよう。


 そう思って顔を上げると、お祖母ちゃんと目が合う。慌てて後ろを振り返るとお父さんの灰色の目もこちらを向いていた。


 あ。俺の中で完結してた。


「えっと、クエスト、賢者の遺志って言うのが始まったみたい」


「なるほど、クエストの通知が来て驚いたのかい?」


 安心したように、お父さんは俺の髪を撫でながら言った。


「賢者の遺志ってことは…隠しクエストね」


 あれ?何でお祖母ちゃん分かったんだろう。


「知っているんですか?」


「ええ。隠しクエストの中では結構有名なクエストね。在野に埋もれてしまった賢人たちの願いを叶えるクエストだそうよ。必ず最初に手紙が届くことと、それを読むとクエストが始まること、それから、手紙が届くのは一定以上の書物系スキル持ちって言うのが共通点ね」


「共通点ってことは、それだけ多くのクエストがあるってこと?」


「そうね。各分野において、在野に埋もれた賢人っていうのは過去を含めれば多いのは確かだし、必然的にクエストの数は増えるわ」


 なるほど。俺のは四葉の護符という題がクエストについているが、他の奴は別の題がついてるってことかな。


「しかし、魔法言語で書かれて読める者がいるのですか?」


「いないでしょうね。私が知ってる限り、普通はちゃんと読める言語で書いてあるはずよ」


 それは…多分作るものが関係してると思う。


 今回作る魔道具の肝は魔法陣なのだ。これが不完全だったせいで魔道具は完成しなかった。


 だから、少なくともこの手紙の書き手と同程度の知識がないとお話にならないのだろう。(ふるい)という訳だ。


「でも、そんなに珍しくないクエストみたいだけど、なんで隠しクエストっていうんだろう」


「それはクエストの分類の決まりに則っているからよ」


「クエストの分類?」


 何だろうそれ。


「クエストはイベントクエストとユニーククエスト、レイドクエストに分けられるわ」


 ユニーククエストは限られた人間にだけ発生するクエスト。レイドクエストはレイドボスの発生をアナウンスするもの。


 そして、イベントクエストは条件を達成すれば不特定多数が受けられるクエスト。


「その中でも、隠しクエストは回数限定だったり人数限定だったりするクエストね」


 ユニーククエストとの違いは、隠しクエストの方は条件さえ満たせばだれでも受けられるという点らしい。つまり、今回ので言えば、この手紙が読める程度の知識があれば俺でなくても受けられたということだと思う。


 それにしても、本当にゲームみたいだな。


「それで、どうする?」


 ん?どうするってどういうこと?


「そのクエストをセシリー自身でやるか、俺たちでやるかっていうことだよ。本当ならクエストが発生したセシリーがやった方が良いけど、セシリーが出来ない、やりたくないというなら俺たちの誰かか、できる人に斡旋するということも考えないといけないからね」


 ああ。そう言うこと。


 これもイベントクエストだからこそかな。しようと思えば別の人が進行できる。


 実際、手紙が届いたのはお祖母ちゃんだし、このクエストを最初に発生させたのはお祖母ちゃんだと思う。けど、開始アナウンスは俺に来たわけだし。


 でも、答えは決まってる。


「私がやる」


 初めてのクエストだし自分でやってみたい。


「分かったよ。でも、協力ができることがあれば何でも言ってね」


 良かった。自分でやるって言っちゃったけど、子供の俺じゃ用意できるか分からない物もあるし。


「じゃあ、早速だけど…」


 そう言って、必要なものを書き出したのだった。




 さあ早速始めよう、と思ったけど、必要なものを揃えるのに時間がかかるみたいなので、結局今日中に始めるのは無理だった。


 という訳で、今俺はお父さんと外にいる。


 お祖母ちゃんはお母さんを巻き込んで、早速必要な物の準備に行ってくれた。必要な物の内、一つはお祖母ちゃんに心当たりがあって、もう一つは女性の方が手に入れやすいんだって。


 そう言う訳で、外に行く俺に気分転換がてらお父さんが付き合ってくれることになった。


「お父さん、あれは?」


 お父さんに車椅子を押してもらいながら庭を進むと、見かけない鳥が空を飛んでいた。


「スーワンだね。渡り鳥の一種だよ」


 へえ。図鑑で見たことあるけど絵と違う。


 白鳥みたいな結構大きい鳥だ。


 季節限定なら見たことなくても当然かも。


「魔物じゃないから討伐対象でもないし王都の結界に引っかからないから、この時期になると水場とかでよく見かけるよ」


 王都に結界か…。でも、空を飛ぶ魔物もいるし、魔物除けとかは当然してるか。


 魔物は確か、魔石を持つ生き物だったよね。


「魔物や動物以外の生き物って何がいるの?」


 ふと思い立ったから聞いてみた。


 俺が読んだことのある本は動物図鑑と、魔物の生態の本。


 それ以外では絵本とかにそれっぽい生き物とか出てくるけど学術書じゃないから本当か分からないし。


 テンプレだと精霊とか聖獣とか居そう!


「そうだね、やっぱり妖精かな」


 そっちだったか!


 でも、イギリスの魔法学校が舞台の大作シリーズとかにも出てくるし、テンションが上がるね!


 ゲームとかだとエルフとかと同義のものも多いけど、この世界ではエルフは普通に人種(ひとしゅ)だ。


「フェアリーとかブラウニーとかが良く知られているね」


「会ってみたい!」


「ははは。もしかしたらすぐ傍にいるかもしれないけど、普段は人から姿を隠しているから会うのは難しいと思うよ」


「どうやったら会えるかなぁ」


「気に入った人の前には姿を見せるらしいけど…そこはもう運かなぁ」


 運かぁ。いろんなところに行けば会えるかなあ。


「他には?」


「他には…精霊とかかな」


「精霊さん!」


 やっぱり。ファンタジー世界には欠かせないからな。神様も分かってる。


「精霊は神様の使いと言われていて、契約することができれば大きな力が得られるらしい」


 おおー。属性とか自然の化身ってのが多いけど、確かにRPGとかだとそっちが多いかも。


 あれでしょ? 契約者が力を発揮するときは、髪の毛の色とか変わっちゃうんでしょ?


 それからも他愛のない話を続けていたら、いつの間にか暗くなっていた。

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