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第一話~転生~

 目を覚ましたら目の前が真っ白だった。


「なんだここ?」


 どうやら寝そべっているみたいなので上体を起こすと、どこまでも広がる白い空間が目に入った。


「へ?」


 頭が混乱する。さっきまで何をしていたかも思い出せないし、ここがどこかも分からない。


 と言うか、こんな真っ白な空間現実であるはずが無い。壁も天井もなく、真っ白な空と地面がどこまでも続いていた。


 頭がおかしくなりそうだ。


「うーん」


 かと言って実際にはパニックになるほどではない。おそらく非現実的過ぎて半分夢だと思っているのだろう。それにしてはリアルすぎるが。


 取り敢えず立ちあがろうとすると踏み出した足が深く沈み込みバランスを崩す。


 あっ! と思う間もなく地面が目の前に迫り咄嗟に手を出すと、マットレスに沈み込むような感触で地面に手がめり込んだ。


 何だこれ。


 しいて言えば低反発枕? フワフワしているようでそこまで柔らかくもなく、それでいて固くもない。面白物質である。


「うおー! スゲー! 叩いても手が全然痛くない!」


「なんだか今度の人は面白い人だね」


 現実逃避気味に地面をバンバン叩いていたら誰かに見られていたらしい。恥ずかしい。


 恐る恐る顔をあげると、そこには超絶イケメンが立っていた。


「どうも初めまして。神様です」


「か……神様」


「はい。一応創造神です」


 創造神でした。


「ええっと。初めまして。ご用件は何でしょう」


「これからある世界に転生してもらいます!」


 うん。薄々期待していた。半分くらいの確率で夢だと思っていたけど。俺も男だしそう言うことに憧れていた時代もあるのだ。


 ……今もそうだろって? 子供心を忘れないのは良いことだ!


「あはは……。君、なんかちょっとずれてるね……」


 心を読まれた上で苦笑いされた。


「取り敢えず説明させてもらっても良いかな?」


「はい。よろしくお願いします」


 ワクワク。


「まず、君は前世で亡くなりました。死んだときの記憶なんてあってもしょうがないので消してあります」


 あー、やっぱり死んだか。でも死因は覚えてたらトラウマになりそうなので感謝。


「ありがとうございます」


「うん。これもサポートの一つだね」


「サポート?」


「そう。君には僕の世界に転生してもらいたいんだ。そこで僕の世界を楽しんで欲しい。そのためのサポートさ」


「楽しむ……。それが今回の転生の目的ということですか?」


「その通り。だって、せっかく作った世界を楽しんで貰えないのは寂しいだろう?」


 それからの神様の話をまとめるとこうだ。


 実は、俺が住んでいた地球がある宇宙の外にも宇宙が一杯あって、その中に地球と酷似した惑星もあり、同じように発展した文明が大昔あったらしい。大雑把に言えば平行世界と思えば良い。


 それで、ゲームとかも同じように発展しており、それにハマった神様が同じような世界を作った。


「世界を二値信号の情報体で作ると介入がしやすくていいね。ちゃんと管理しないとバグまみれになるけど世界の理を調整しやすい。ゲームで言えばパッチとかアップデートね」


 とか言ってた。なんか普通にオタクっぽくて親近感がわいた。


 世界は宇宙誕生から作ったらしい。ゲームみたいな世界にするために運命に干渉して今の世界になるまで育ててきたんだって。話を聞いていてスケールのデカさに驚いた。


 それで本題だが、そんな世界を作ったものだから、やはり色々な人に世界を楽しんでもらいたいと思った。そこで神様が目をつけたのが異世界物のテンプレ。転移や転生だった。


 そうすれば異世界の人に自分の世界を楽しんでもらえるし、現地の人からしても大きなイベントになる。


 実際これまでも何人か送っているらしい。同じ時代に異世界人がバッティングしないようにはしているらしく、俺が同郷と会うことはないだろうということだった。それはそれで寂しい。


「へえ。イベントですか。他にもゲームみたいなイベントありますか?」


「あるよあるよ。僕が作ったのもあるけど、システムの運用は統括AIに委任してるから、そのイベント自動生成機能が今でもどんどん作ってる。ぜひ楽しんでね!」


「それは楽しみです! 神様が作ったAIって言うのも気になりますね」


「さっきも言ったけどこの世界細かく管理しないといけないからね。僕の場合この世界だけに関わってるわけにもいかないし。ステータスのアナウンスとかもやってて神様ってことになってるからよろしくね」


 と、そんなこんなで意気投合しました。


「それじゃあ。ゴホンッ。『汝の願いを三つ述べよ。さすれば力が与えられん』」


 神様が厳かな声を出すと、やっぱり()()()。良いね良いね。テンション上がってきた。


「一応使えるリソースは決まってるから、その範囲でよろしく」


 うーん、悩む。結局決まったのは小一時間経過してからだった。


「治癒魔法的なのと、他のお勧めの魔法と、魔法道具作る能力をください」


 死んだら諦めもつくけど、怪我して一生ベットの上とかマジ勘弁なので治癒能力は欲しかった。後は、異世界だし魔法は使ってみたい。


 魔法道具は生活力向上に使えるかなって。異世界の生活水準がどれくらいかは分からないけど、日本での生活と同じくらいの環境は欲しい。それに、手に職がついていればお金にも困りにくいと思うし。


「なんだか安定思考だね。もっとこう、野心があっても良いよ?」


「まあ、あるにはあるんですよ?」


 具体的には異世界観光がしたい。治癒能力と魔法能力があれば安全に旅行できるし、旅行を快適にするための魔法道具も手作りできれば便利だし。


「ふむ。なるほどね。じゃあそう言う方針で組んでみるよ」


 そういうと、俺の目の前に文字が浮かんできた。


 法術

 水魔法

 風魔法

 光魔法

 闇魔法

 錬金術


「おお! すごい」


「フフン。神だしね」


「ちなみにこのチョイスはどういう意図なんですか?」


 法術が治癒魔法かな? でも水魔法が治癒枠という線もある。錬金術が物作りだとして、魔法四種は中途半端では?


「法術はこっちの世界の治癒魔法だね。で、旅先でも水が用意できる水魔法と気温を調整できる風魔法。光と闇は後天的には同時に習得できないから一緒に取っておくのがお勧め。魔道具作りに使う錬金術も後天的には取り辛いからね」


「なるほど」


「それから、魔法は四属性までがベストと言われているんだ。僕の世界の統計的に、これ以上増えると戦闘中に使い分けができなくなって宝の持ち腐れになることが多い。鍛える時間と労力も分散されて器用貧乏になりやすいというデメリットもあって、四属性がベストというのが世界で定説になっているのさ」


「ありがとうございます。行けそうな気がしてきました。これでお願いします」


「OK。じゃあこれにユニークスキルを付けていくよ」


「え、終わりじゃないんですか?」


「当たり前だよ。これじゃ全然チートじゃないし」


 自分の世界にチート能力者送って良いの? と疑問を持ったが、神様の性格からして「テンプレだし」って言われる所まで予想がついた。まあ、もらえるものはもらっておこう。


「どうする? 自分で考える? それともお勧めで行く?」


「お勧めでお願いします」


 少し考えて、結局神様にお願いすることにした。考えるの大変そうだし、ここはシステムも世界観も良く分かっている神様にお願いするのが安牌だと思ったから。


「ウムムムム。ええっとこれがこうで、残りのリソースがこれくらいだから、こうかな?」


 今度はさっきよりも時間がかかるみたい。


「よしできた!」


 神様がそう言うと、また同じように目の前に文字が浮かぶ。


 聖眼(ゴッドアイズ)

 魔法辞典(マジックコンプリート)

 創造(オリジナル)付与(エンチャント)


 背中が! 背中が痒い! でも失われた厨二心がくすぐられてしまう!


「ステータスから詳細が見られるから、詳しくは転生してから確認してね。一応大雑把に言っておくと、法術強化と、魔法知識と魔法記録、それから魔導具作成スキルだね」


「分かりました」


「うん」




 それからほんの少しだけ間が空いたことで分かった。これで終わりなんだなって。なんだかんだ神様も親身になってくれていたし、少し寂しい。


「さて」


 ちょっぴりしんみりした空気を払うように神様が言う。


「旅立つ前に言っておくことが三つあるから心して聞いてね」


「はい」


 最後だし、ちゃんと背筋を伸ばして聞こう。


「まず、生まれる先はランダムです。一定以上の水準の家庭からランダムに選ぶことになっているよ」


「二つ目、記憶は10歳まで封じることになっています。これは過去の転生者の死後、アンケートを取ったら、思ったように動けるようになるまで苦痛だったとか、おもらしとかが超嫌だったとかの意見が多かったのでこうなっています」


「最後に、記憶が戻るまで、今与えたスキルは封印します。子供に力を与えたら危ないからね。消えるわけでは無く使えなくする、見れなくするだけだから安心してね」


「分かりました。ちゃんと覚えておきます」


「うん。転生したら僕はほとんど君に手は出せないから。次に会うのは君が死んでからになると思う」


「じゃあそれまでお別れですね。きちんと世界を楽しんで来ます。土産話を楽しみにしていてください」


 俺のその言葉がきっかけになるように、体が透けていく。


「神様色々ありがとうございました!」


「うん。良き人生を!」


 そうして俺の意識は遠のいていった。

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