クールではなかった
笑いを堪える声に振り向けば、
公爵ご子息様、口に手を当てているではありませんか。
なんだ、何かおもしろい物でもあったのか?
と周りを見渡すと、
「顔に出しすぎ・・・」
と一言。
まさか、私に笑っていたのか。なんて失礼なやつだ。
「それだけ顔に出てたら誰だってわかるさ。だから殿下も俺を連れて外に出ろとおっしゃったんだろ。」
「・・・そんなに顔に出てた?」
「あぁ。」
ううぅ、これは後で確実にお説教コースだ。
「それに話も聞いてなかっただろ。俺の名前、知っているか?」
「えっ?名乗ってた?」
「どっちが失礼なんだか・・・。ルイス。ランザード公爵第一子ルイス・ランザードだ。」
とりあえず騎士マルクの案内で庭園に場所を移した。
中央に噴水があり、噴水の周りは散歩できるように石畳になっていて、等間隔に並んだ剪定された植木、テーマがあるのか色とりどりの花が所々に咲いている。学校の運動場よりも広いかも。
さすがお城の庭園!広い!キレイ!テーマパークみたい!
庭園の隅には庭園を眺めながらお茶ができるスペースがあった。
こういうのカゼボって言うんだっけ。
お茶の用意が終わるとニーナとマルクは庭園の入り口に下がった。
大声でしゃべらない限りこちらの会話が聞こえない距離だ。
うん。何かあったらすぐに駆けつけれる距離だね。
「それで、ルイス…様?」
「無理して敬称をつけなくていい。君のが身分が上だ。それに君と俺は将来結婚する間柄だ。むしろ俺のことは呼び捨てで構わない。俺も君のことはアイリと呼ばせてもらう。」
「それよ!それ!」
「…何がだ。」
「ルイスは私と結婚するつもりなの?私とルイスは今日初めて会ったのよ?嫌じゃないの?」
「何を今更…。貴族の結婚はそんなものだろ。」
それの何が問題だと首を傾げられた。
貴族に生まれたら政略結婚は当たり前の認知なのか・・・
それって、もし好きな人が居てたら悲惨じゃない。仮面夫婦まっしぐらじゃん。
もしかしたらルイスは恋愛を諦めているのかしら。
「ルイスは好きな人いないの?」
「俺に婚約者が居ない時点で答えはでていると思うが。」
ルイスの容姿なら寄ってくる女の子いっぱいいそうだけどなー。
しかも公爵子息で時期国王候補なわけだし。
あ、もしかして男色の気があるとか?
「そっちの趣味はないからな。」
む、ルイスはエスパーか?
それはないか。……そんなに顔に出てるのか。
おかしいなー。日本にいるときは「愛梨って分かりづらい」て言われてたのに。
「アイリはどうなんだ?俺との結婚。」
「私は選択肢がない今の状態が嫌。結婚は好きになった人としたいわ。」
「それは俺と結婚をするのは嫌だと?」
「今はね。ルイスの事よく知らないし。ただ王家にとって必要だから結婚しなさいって、そこに私の意志がないわ。でもそう言われるのは私の現状のせい。だから私は、みんなに認めてもらえる王族になりたい。そして私は自分で選びたい。その時にルイスの事を好きだと思ったらルイスを選ぶわ。」
「つまり、アイリは完璧な王族を目指す。けれど俺を選ばない可能性もあるってわけだ。」
あー、そうか。そういう可能性もあるなー。
そこまで考えてなかったわ。
「それは俺になんのメリットもないな。・・・なら、こうしよう。アイリは完璧な王族を目指す。俺はその手伝いをしよう。」
「それこそルイスになんのメリットもないと思うけど?」
「その代わり俺はアイリにアプローチをする。アイリは俺の事を知ることができるし、俺もアイリを知ることができる。」
等価交換ってやつね。・・・ん?等価交換になるのか?んー、まぁいっか。
「・・・わかった。」
「期限は3か月。」
「3か月!?」
短っ。なんで3か月?
「やっぱり話を聞いてなかったな。3か月後に王家主催の夜会が行われる。そこで殿下の帰還とアイリのお披露目をするらしい。」
「でも3ヶ月って早くない?3か月でルイスを好きになる保証はないわよ。」
「なら頑張らないとな。」
「えっ?あぁ、うん。完璧な王族になるために頑張るわ。」
なんか意味深に笑われたけど、なんかおかしかった?
「まずはその、すぐに顔に出るのをなんとかした方がいい。」
「・・・はい。」
登場人物
ルイス・ランザード、公爵子息