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王妃様と

晩餐はフルコースだった。




デザートも美味しく頂いた後、部屋に戻ろうと廊下を歩いていると王妃様付きの侍女に呼び止められた。

私に用があるからとサロンに連れて行かれた。


んー、王妃様が私に何の用だろう…。



サロンに着くと程なくして王妃様もやってきた。

立ち上がって挨拶をしようとすると


「堅苦しいことは抜きにしましょう。」


と王妃様に止められた。

言われるまま王妃様の向かいのソファーに腰かけた。

王妃様付き侍女がお茶の用意をしている間、王妃様は軽く目を閉じ無言だった。


用があるのなら早く話してほしいんだけど…。


王族っていうのはお茶が出るまでしゃべってはいけないのだろうか。

てか、フルコース結構な量だったけど、それでもまだお茶できるとかすごいな。私のお腹は満腹を訴えているよ。


この状況は落ち着かないので、こっそりと姿勢の練習をしよう。

失礼ながらちょうど最高のお手本が目の前にいるのだから、是非参考にしなければ。私には時間がないのだ。一分一秒無駄にできない。


右手を包み込むように左手を添えて膝の上、ドレスで隠れてるけどきっと膝は揃ってるんだろうな。

バレない程度にもぞもぞ動いていたら、


わたくしの座り方は参考になりますか?」


あ、バレてた。


「ごめんなさい。明日には完璧な姿勢をマスターしないといけないものだから。」


勢いよく頭を下げると、


「王族がそう簡単に頭を下げるものではありません。それに、謝るのはわたくしの方ですわ。突然この世界に来たあなたに王族の振る舞いを強要するのは、わたくしが王妃の義務を果たすことができなかったからですから。」


それは後継ぎのことを言ってるんだよね?


「まだわからないじゃないですか。これからできるかもしれないし。」


王様はお父さんより年上だけど、王妃様はお母さんより若く見える。可能性がないわけじゃないと思う。


「ふふっ、アイリは優しいのね。わたくしの周りでそういう風に言う人は居なかったわ。でももういいの。クリストファ殿下が戻られて、アイリがいるのですから。マリカ様もいらっしゃいますし、わたくしの役目は終わりですわ。」


えっ?


「最後にアイリと話が出来て良かったですわ。」

「最後ってどういうことですか?」

わたくしは義務を果たせなかった責任を取り、王都から離れ余生を過ごしますわ。わたくしが居てはアイリもマリカ様も気を害すでしょう。」

「はっ?」


しまった。つい王妃様相手に素を出してしまった。でも構うものか。


「何言ってるんですか。王妃様が居て私とお母さんが気分を害す?誰がそんなこと言いました?あのですね、私達、今日ここに来たばかり。それで王妃様の変わりしろとか無理なんですけど。だいたいそんなこと王様が許すわけないじゃないですか。それに王妃様の仕事は後継ぎを産むだけじゃないでしょ。今まで王様を支えたり外交したり、いろいろあったでしょ。勝手に役目を終わらせないでください。」


王妃様のために側室を持たなかった王様は絶対王妃様のこと大好きだよね。そんな王様が王妃様がどっか行くの認めるわけないじゃん。


「………マリカ様と同じことをおっしゃるのね。」

「お母さんと?」

「えぇ、晩餐の前にお話をさせていただきました。その時に、陛下がわたくしを切り捨てない限り王妃なのだから、勝手に王妃を押しつけるなと。」


あはは、お母さんらしいや。


「その上でアイリに同じことを言って、アイリがわたくしが王都を離れる事を了承したら、王妃の仕事を変わると。………その時は親子の縁を切るともおっしゃっていましたが。」


アハハー、オカアサンラシイヤ。


でも、王妃様なりに思うことがあるからこんな話をしたんだろうな。きっと周りからのプレッシャーもあっただろうし。そんな時に私達が来たことで居場所がなくなったとか思ったんだろうか。



「王妃様にお願いがあります。」

「何かしら。」

「私を完璧な王族にしてください。」

「えっ?」

「ご存知の通り、私は今日ここに来たばかりです。それまでは一般市民……こっちで言うと庶民の生活をしていたのに、いきなり王族になれと言われました。しかも、2日で上辺だけでも見れるようにしろと言われています。はっきし言って1人では無理です。せめて見本がいります。なので、王妃様に私のお手本になってほしいです。…………ってもちろん、王妃様のお時間の許す限りなんですけど。」


さすがに生意気だったかな。でもこっちは切羽詰まってるから仕方ない。使えるものはなんでも使いたい。


「……………わたくしでよろしいの?」

「王妃様以上に適任者は居ないと思います。」


王妃様は軽く目を閉じ、なにやら思案したのち真っ直ぐ私を見つめ


「…………わかりました。その任務引き受けますわ。」


そう言った王妃様は何やら吹っ切れた感じがした。


「ありがとうございます。」


王妃様が引き受けてくれたことにほっとしバシッと頭を下げたら、


「だから王族が簡単に頭を下げるものではありません。」


と早速指摘されてしまった。




こうして私は最強の味方を手に入れた。

登場人物

王妃様

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