王族になりました
私は宮下愛梨、春から高校2年生。
世間的に言うと花のJK!
のはずだったんだけど…。
異世界に引っ越して、王族になることになりました。
与えられた部屋は王道通り日本での私の部屋よりはるかに広い部屋だった。
これ、20畳以上あるよね。
大きな窓からは日差しが差し込み部屋全体が明るく、この部屋で一番主張しているベッドはこれまた王道な天蓋付きのベッド。
ふらふらとベッドに近づくとバフッとダイブした。
さすが王家、ベッドがふかふかすぎる。
王族になる宣言をした後、
王様はホッとして、お父さんは嬉しそうに微笑み、お母さんは「愛梨ちゃんならそう言うと思ってたわー。」とニヤニヤしていた。
ちくしょー、あれは絶対にお母さんの思うツボだった。
お母さんの策略にまんまと乗ってしまったのは悔しいけど、さすがお母さん。私の性格よくわかってる。
コンコンとノックと共に2人のメイドと騎士が1人部屋に入ってきた。
「本日よりアイリ様付きの侍女になりますニーナとレベッカでございます。」
ニーナはお母さんと同じ年ぐらいだろう。そしてレベッカは私より年下に見える。
この二人なんとなく似てる。もしかしたら母娘かもしれない。
「私はアイリ様の護衛騎士のマルクです。」
「えっと、愛梨です。よろしくお願いします。」
20代前半ぽい騎士のマルクは挨拶が済むと部屋の外へ出た。
「早速ですがアイリ様には二日で王族としての立ち振る舞いとマナーを覚えていただきます。」
「2日!?」
「二日後にはランザード公爵家の方達とのお茶会が予定されております。陛下より2日で形にするよう承っております。」
そういうとニーナはレベッカに指示を出し、てきぱきと行動を始めた。
2日で覚えろとかあの王様、鬼だな。
しかし形にしろって体面だけでも取り繕えってことでしょ。これまたイラっとする。
悔しいけど時間はない。ならお望み通り見た目だけでも完璧になってやる。
メラメラと闘志を燃やし、ニーナに言われるがまま立ち振る舞いの練習をした。
数時間、ニーナにこってりと姿勢からお辞儀の仕方、歩き方まで指導された私はへろへろになっていた。
途中にお茶休憩もあったが、これもまたマナーの練習も兼ねてなので休憩したとは言えない。
貴族ってカップの持ち方から角度まで徹底されてるのね…。
美しく見せるための角度とか、そんなので美味しくお茶できるのか?
はっきり言って付け焼き刃だが、音は上げられない。
「アイリ様、晩餐のお時間になりますので着替えを致しましょう。」
そうかー、王族ってのは夕飯のためにも着替えるのかー。
めんどく………。
今着てるのは向こうから着てきた膝丈のワンピース。
ほんとはもっと活発な格好が好きなんだけど、こっちでは馴染みないから皆に驚かれるというお父さんの指摘からめったに着ないワンピースを着たんだけど、レベッカがクローゼットから出したのは、うん、わかってた。王族だもんね、日本にいたら一生ご縁がないと思われるドレスだった。
お父さん譲りの顔立ちに金髪碧眼なので、ボリューミーなドレスも似合わないこともないんだけど、
「やっぱり短い髪なせいか違和感あるわね。」
姿見に写る自分を見てそう思った。
ストレートな髪質だが、左右非対称のアシンメトリーなショートだ。
「アイリ様がいらした世界では女性は短い髪をなさるものなのですか?」
「んー、長い人も居たけど、私がボーイッシュな格好が好きだったから短くしてたの。」
小さい頃はお母さんの趣味で女の子らしい格好してたし髪も長かった、私もそれが好きだったんだけど、中学入ると周りが鬱陶しくなったので切ったのだ。
短い髪のが手入れが楽ってのもあったけど。
「そうなのですね。ですが、今後は伸ばしていきましょう。こちらでは女性は髪もステータスの一部ですので。」
そう言ってニーナは短い髪をなんとかしながら纏めていった。
支度が整うとニーナと騎士マルクに連れられて食堂に向かった。
レベッカは部屋に残って夜の準備をするらしい。
部屋に入るとすでに全員揃っていた。
「まあ、愛梨ちゃん、すごく似合ってるわー。」
「愛梨は何を着ても似合うな。」
「アイリ、見違えたぞ。」
「ありがとうございます。」
カーテシーをすると王様とお父さんは満足そうに頷いた。
練習の成果はあったみたいだ。
登場人物
侍女のニーナとレベッカ、母娘
護衛騎士マルク・・・20代前半