自分の事とは思えない
「私の後継者問題だ。」
王様の言葉にお父さんは目を丸くした。
「兄上!ファズリー侯爵令嬢と婚姻されてないのですか!?」
「もちろん結婚はした。しかし妃との間に子ができることがなくてな。臣下からは側室を持てと言われたが妃を思うとその気になれなくて、先延ばしのばしでここまで来た時にクリストファが帰ってくることになったのだ。」
あらー、王族に取って世継ぎ問題て重大だよねー。
そんな時にお父さんが帰ってきたからお父さんが王様に………ってあれ?それって……
「兄上、まさか愛梨に王位継承権を与えるということですか?」
「あらー、愛梨ちゃん、女王様になるのねー。」
はっ?
ちょちょちょちょっとまってーーーー!!!!!
「無理むりムリむり無理!私、ただの高校生だよ。一般市民!」
「私に世継ぎが居らぬ以上、第2王子であるクリストファの子が王位を継ぐのは当然のことである。」
いあいあいあいあ、普通に考えて無理だって!
「兄上、さすがにそれは軽率すぎませんか?私が帰ってこれたのは偶然です。もしかしたら一生帰ってこれなかったかもしれないのに、私の子に王位を継がせるつもりでいたはずありませんよね。別の案もありますよね。」
「うむ、すまない。直系の後継ぎを思ったら気が急いてしまった。確かにこの数年で解決策として、先王の弟…叔父上が臣籍降下でランザード公爵家に入ったのは知っているな。現公爵には2人の息子がいるから、その子息を養子にとの話は出ている。」
ならその人でいいじゃん。何もただの女子高生の私じゃなくていいじゃん。
「兄上、それでは愛梨に王位継承権を与えた場合、問題になりませんか?」
「アイリが男だったならな。幸いランザード公爵子息に婚約者は居ない。アイリ、年はいくつだ?」
「えっ?16です。」
「2人の年も近いようだし何も問題あるまい。」
えっ?どういうこと?
「兄上、話が飛躍しすぎていて愛梨が困惑しております。」
「つまりー、愛梨ちゃんがその公爵様の息子さんと結婚して王家を継いでねって話よねー。」
お母さん、今の会話理解できたんだ。
いつもはおっとりしてるけどするどいんだよね。
「って、なんで!?私、さっきここに来たばっかだよ。右も左もわからないのに王家継げとか無理ありすぎでしょ。そういうのって子どもの頃から英才教育受けてる人がなるべきものじゃない?しかも会ったことない人と結婚とかありえないって。相手も納得しないって。」
「大丈夫だ。ランザード公爵子息は公爵家の跡取りとして幼少の頃から教育されておる。ここ数年では王家に入るために帝王学も学んでおるから何も問題ない。貴族は政略結婚が常だから、向こうも受け入れるだろう。後はアイリ次第だ。」
私次第って…。それ、ノーって選択肢ないやつだよね?
「すまない愛梨。向こうのままなら愛梨の自由にさせてあげれたんだが…」
「大丈夫よー、愛梨ちゃん。相手の方がデキる人みたいだから、愛梨ちゃんが心配することはなにもないのよー。」
何それ?
私のことなのに、勝手に決められて、選択肢なくて、相手に任せておけばいいとか、私である必要ないじゃない。
イライラしてきた。
「冗談じゃないわ。つまり、私はお飾りでいいってことでしょ。それって“私”である必要ないよね。私は人形になるつもりで異世界にきたわけじゃない。」
強制で来た異世界だけど、私は“私の人生”を送りたい。
今は選択肢がないのなら文句を言わせないように選択肢を広げてみせる。
「いいわ。お望み通り王族でもなんでもなるわ。」