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特訓

「魔法は空気中にある魔力を自分の力に変換するんだ。」


場所を室内から中庭に移した。

室内よりも屋外の方が魔力を取り込みやすいらしい。



「アイリ、空気中の魔力は感じ取れるか?」

「何それ?」

「殿下…。魔法について本当に何も教えていなかったのですか?」

「向こうの世界に魔力はなかったから、無い物を教えることはできないだろ。」


ルイスとお父さんはどうしたものかと腕を組んだ。


「せめて魔法の片鱗が見えたらなんとかなるんだが…。」


そう呟くお父さん。

ルイスは私に視線を向け、


「向こうの世界に魔法がなくてどんな生活をしていたんだ。」

「こっちとあんま変わらない生活してたけど、技術は向こうのが遥かに発達してたと思うよ。」

「前に言っていたすまほってやつか。」

「うん。もっとすごいものだと宇宙にロケット飛ばしたり?」

「うちゅう?」

「空の上」

「…そんなすごい物があるのに魔法はないのか。」

「魔法は物語の中だけかな。」




お父さんは執務があるからと戻っていった。

王宮に仕える魔法使い達にも話を聞いてくれるらしい。


「まずは魔力を感じ取るところから始めよう。」


空気中の魔力を感じ取るには手のひらが一番簡単らしい。

意識を手のひらに集中してみるが、特に変化は感じられない。


「魔法は子どもの頃に片鱗が見えてから訓練して使えるようになるものなんだ。」

「片鱗てどんなものなの?」

「人それぞれだが、俺の場合はある日突然冷気を感じる事ができた。」


人にはそれぞれ得意な魔法があるらしい。

ルイスは氷魔法を得意とし、お父さんは物理に作用する魔法なんだって。

それじゃ、私はどんな魔法が得意なんだろう。


「それは片鱗が見えないことには分からない。」

「ねぇ、この世界の人はみんな魔法が使えるの?」

「貴族は全員使える。16才を迎えると成人の儀を王宮で行うんだ。そこで魔法を登録して成人と認められる。貴族以外でも王都に住む人間はほとんど使えると思うが、王都から離れた庶民の中には使えない人もいるらしい。」

「なるほど。だから、あの人、私のこと庶民って言ったのか。」

「あの人って…」

「エーリュイ侯爵令嬢」

「!?………まずいな。いくら公爵位にしか知られていない情報だとしてもアイリが王家の姫だということはすぐにバレるだろう。向こうがこんなカードを手にして何もしてこないはずがない。」


唇を噛み考え込むルイス。

ルイスがこんなに頭を悩ませるなんて、ほんとにヤバい事態なんだ。


「ルイス、私頑張る。絶対に魔法使えるようになる!」




それから、一週間。

私は朝起きてから夜寝るまで魔力を感じ取ろうと奮闘した。


が、特に進展せず。

魔法の片鱗とやらも姿を見せない。


「アイリ、無理していないか?」

「大丈夫。…ねえ、ルイスは魔法を使う時どうしてるの?」

「どうしてるって……特に意識したことないが、敢えて言うなら念じているに近いかな。」

「念じる…ね。」


魔法よ出ろ。魔法よ出ろ。魔法よ出ろ。


……………だめか。



私が魔法を使えないことは極秘中の極秘扱いなんだって。

だから、他の人に話を聞くこともできない。


今も庭園で魔力を感じることに意識しているけど、端から見たらお茶をしているようにしか見えないようにしている。


んー、どうしたものか…。



「ルイス、手を出して。」

「手?どうするんだ?」


疑問に思いながらも手を出したルイスの手に私は自分の手を重ねた。


「この状態でルイスが魔法を使ったら、魔力を感じたりできないかなと思って。」


ルイスの魔力を私が感じるみたいな?

とりあえず魔力がどういうものかわからないとどうしようもない気がする。


「わかった。やってみよう。」


私の意識を手のひらに集中した。



集中したんだけど…。



「何か感じるか?」

「………。」

「アイリに魔力を送るイメージをしてみたんだが。」


さっぱりわからない。


どうしたらいいんだろう。

やっぱり私には使えないのだろうか…。




それから数日たっても状況は変わらなかった…。

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