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魔法

「アイリ、正直に言ってくれ。君は魔法を使うことはできるのか?」


翌日、朝一番に深刻そうな顔をしてルイスはそう聞いてきた。


「魔法?使えないわよ。」


正直にそう答えたらルイスは深いため息をついて考え込んでしまい、王妃様は驚愕の表情を浮かべ、ルイスに呼ばれたらしいお父さんが息を飲むのが聞こえ、お母さんはあらあらーと対して困ってなさそうに呟いた。


魔法が存在しない世界で育った私が魔法を使えるはずないじゃないか。


「すまない!すっかり失念していた。」


と一番に回復したお父さんが真っ先にそう謝罪した。


そういえば、この世界は魔法が使える世界なんだっけ。

こっちに来る前にちょろっとお父さんがそんな事を言っていたことを思い出した。


「アイリ!本当の本当に使えませんの?」


王妃様は私の肩を掴み切羽詰まったように聞いてくる。


「使ったことないし、使えないし。」


私の答えにどうしましょうと慌てる王妃様。


「なんで今になって魔法の話?」


この2ヶ月、誰かが使ってるとこ見たことないし、私も魔法がなくて不便を感じたことないんだけど。


「いや、貴族は魔法が使えるのは当たり前のことなんだ。」

「ルイスも使えるの?」

「ああ。」


そういうとルイスの手のひらに小さな氷が出現した。


「おー。夜会で見たマジック。」

「そう、アイリの反応でまさかとは思ったが…。」


そういえば、私が手品の話をしたらルイスが不思議そうにしたっけ。


「でも今まで魔法ぽいことなかったわよ?」

「アイリも毎日、魔法に触れているよ。」

「えっ?うそ!」

「シャワーを浴びる時のお湯は魔法で温めているものだし、夜の灯りも魔法で作りだしている。」


まじか。蝋燭じゃないし、電球とは違うなーと思ったけど、まさかの魔法だったとは。


「他にも魔法は日常に溶け込んでいる。当たり前にあることだから気づかないのも仕方ないが…。」


「えっと…それと私が魔法使えないこととなんの関係があるの?」

「アイリ、この国の初代国王は?」


は?なんでいきなり歴史の勉強?


「えっと、ハウラル・エルディール」

「そう、彼は初代国王であると同時に大賢者と呼ばれていたんだ。この王宮は今も彼が作り出した魔法によって機能している部分があり、それは王都全体を覆っている。王都に魔物がいないのもその一つだ。王族はそれを代々管理している。それは王族と彼の弟子であった4大公爵にしかできないことなんだ。だから、王族が魔法を使えないのは問題なんだ。」


まじか。


「つまり、魔法が使えない私は王族失格ってこと?」

「いや……それは……。」


否定しないということはそういうことなんだろう。


「なんとかなりませんの?アイリは王家の姫ですのよ!」

「こればっかりは…。」


まさか今まで縁のなかった魔法がここで問題になるとは…。


誰もがどうしたらいいのかと思案する中、


「愛梨ちゃんは、魔法が使えないのではなくて使ったことがないだけでしょー?」

「お母さん?」

「だってー、愛梨ちゃんはクリスの娘ですものー。血は受け継がれているはずよー。」

「いやしかし、今まで愛梨から魔法の片鱗を見ることなかっ」

「クリスも向こうに居る間は魔法使えなかったじゃないー。こっちに来ても魔法の概念が愛梨ちゃんになかったのだから仕方ないんじゃないー?」

「しかし、もし愛梨が魔法を使えるとしても、それがいつになるのか……。」

「クリス!あなたは自分の娘が信じられないのー?愛梨ちゃん、出来るわよねー?」


お母さん、それ脅し…。


「練習して使えるようになるのなら練習するわよ。」


魔法、使えないとやばいみたいだし。


「アイリ、しばらくはマナー指導は結構ですわ。魔法に専念なさい。」

「それはそれ。これはこれでお願いします。」

「アイリ…。」


またルイスは心配そうな顔してる。


「ルイス、手伝ってくれる?」

「あぁ。」


魔法の存在、忘れてたわけじゃないよ?

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