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丘の上

馬酔いをして乗馬は私に向いてないんだと諦めようとした。

けど、何度か乗るうちに馬の動きに慣れて馬酔いはマシになった。


「無理に乗れなくてもよかったんだが…。」

「乗れた方がいいんでしょ。」


私も別に乗れなくてもいいかって思ったんだけど、お母さんが乗っているのを見かけて、やっぱり私も乗りたいと思った。

うん。わかってる。お母さんが馬に乗っているのを見て羨ましかったし悔しかったんだよ。

どうせ負けず嫌いだよ。


「アイリの努力する姿勢は、俺は好きだけどな。」


あんまり無理するなよと頭をポンとされた。


やめてほしい。

最近、やたらと好きとか口にするルイスに私の心臓が落ち着かなくなる。





1人で馬に乗れるようになった頃。

といっても、まだ走るとかそんな難易度の高いことはできないんだけど、


「王宮の裏にある丘の頂上まで行ってみようか。」


それは今、練習しているここから見える小高い丘のことだろうか。


「王都からあまり離れると魔物に出くわすこともあるが、丘までなら大丈夫だろう。」

「魔物!?そんなの出るの?」

「王都には出ないが、王都から離れた所では出ると報告はあがっている。」


魔物…ゲームで出てくるようなモンスターぐらいしかイメージできないわ。

そっか…そんなのが出るんだ…。ますますファンタジーな異世界だわ。

まだまだ私の知らないことがありそう。




一度休憩を挟んでから丘を目指すことにした。

私が乗る白い馬アースはとても賢く、私が酔わないように丁寧に歩いてくれる。

ルイスはルイスで別の茶色の毛並みの馬に乗っていた。

二頭が並んでゆっくり丘を登っていった。



「わぁー」


頂上に着き来た道を振り返ると王都が見下ろせた。


「王都ってとても広いのね。」


王宮の向こうに見える王都の街並み。

初めて全貌を見て、王都の広さに驚いた。


もちろん都市でいえば向こうの世界のが広いし規模は全然違うけど、王宮しか知らなかった私には王都も十分広い。



勢いで王族になるって言ったけど、将来、私がこの王都を、この国を守るの?

そんなことできるの?つい最近まで一般人だった私が?


その事に気づくとやってみなくちゃわからないと励ます私と、

できるわけないと諦める私が喧嘩を始め、言い知れない不安が私の中に広がった。


「アイリ」


馬の背から降りた私の横に同じく馬から降りたルイスが並んだ。


「…ルイス」


どうしよう…。私、ほんとにルイスが居ないと何もできないんだ。

ルイスを見てホッとした私。


私はルイスに頼ってばかりだ。

ルイスがずっと一緒にいてくれるって勝手に思ってる。

ルイスに甘えてる。

こんなんじゃダメだ。

私はまだまだこの王都のこと、この国のことを知らなさすぎる。

もっと勉強しなくちゃ。


「アイリ?どうした?」


ルイスの慌てる声。

泣きそうな私はルイスに見られたくなくて、その場にしゃがみこみ膝を抱えた。


「アイリ?」

「……うっ、……く…」


ルイスの私を案じる声に堪えきれず、泣きたくないのに嗚咽が漏れる。


今の私、ぐちゃぐちゃだ。




泣く私はルイスにそっと抱きしめられた。

ルイスの優しさに私の涙腺は崩壊。その後、ルイスの腕の中で枯れるまで泣き続けた。




どれぐらい泣いていたのかわからない。

けれど泣きはらして、気持ちはいくらかすっきりした。


そして思ったのは、泣いてもどうしようもないってこと。

結局は自分が頑張るしかない。



とりあえず今はこの現状をどうすべきか…。

ルイスの腕の中、背に回された腕、振り解くことができない。

思わず泣いてしまったことが恥ずかしい。


「えっと…」

「落ち着いたか」

「…うん。ごめん。」

「どうした。」

「…うん、まあ」


正直に話すのは躊躇われた。


「アイリの前向きに努力する姿勢はすごいと思うけど、あんまり自分を追い詰めるのはよくないよ。」


なんで、ルイスにはわかるんだろう。


「アイリが頑張っていることは俺が一番よく知っているから」

「…っ」

「アイリ!?」


ルイスの言葉に枯れたはずの涙は再びこぼれ落ちた。


「今泣くのはルイスのせいだからね」


可愛くない私はそう言って気持ちをごまかそうとした。


「そうか。なら責任は取らないとな。」


ルイスはそう言うと私が泣きやむまで優しく背を撫で続けた。




私が泣き止む頃には高かった日は沈み空は夜の色に変わろうとしていた。

いくら王都に魔物が出なくても夜は危険なので王宮に戻ることにしたのだが、私の速度では遅いのでルイスとアースに2人乗りだ。


泣きすぎて目が痛い。これは冷やさないと明日腫れるだろう。


「大丈夫か?」

「うん。……ルイスってば私の心配ばかり。」

「そりゃ、心配するさ。」

「うん。…ありがと。」


ルイスに心配させないように、隣に立てるように頑張ろう。


「見て」


王宮に着いて見上げた空は、夜の闇にたくさんの星が瞬いていた。

向こうの世界では見たことがない夜空。

異世界に来て初めて見た夜空だ。

ルイスと一緒にみれたことが素直に嬉しい。


「きれい…」

「…そうだな」


いつの間にか繋がれた手にそっと力を込めた。


誤字脱字報告ありがとうございます。

投稿する前に読み返しているのですが、それでもまだ残っていたことに驚きです。

お手数おかけしました。

指摘された部分も修正しております。

気をつけておりますが、今後もありましたら報告お願いします。

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