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勉強中

『エルディーラ王国はハウラル・エルディールが4人の弟子と共に国を治めたことから始まった。

ハウラル・エルディールを王とし、4人の弟子は王に仕える側近として公爵位が与えられた。

これが王家と4大公爵の興りである。』


建国から1205年か。

歴史ある国なんだねー。


『4大公爵はそれぞれ、北をメルヴェスト、西をシャーレー、南をネルディー、東をランザードが治めており、かの4大公爵はいかなる争いを禁じられている。これが4大公不可侵条約である。』


ふーん。ま、争いがなくみんな仲良しの方が国は平和だよねー。



ここ2週間ほどは、王妃様とのマナー教育から始まり、ルイスとダンスの練習、それから勉強のルーチンが続いていた。

おかげさまでぼちぼち教養がついてきたはず。


数学は向こうの世界で勉強済みなので問題なし。むしろ十分すぎるレベルらしい。

歴史や地理は暗記なのでぼちぼち覚えていくしかないんだけど、


「アイリ、ここのスペル間違ってる。」


問題は書き取りだ。

みんながしゃべってるの日本語?いやチートか。チート万歳!

と浮かれていたのだが、書けない。

読むのはね、チート機能なのか不思議と読むことができるんだけど、書くのがね・・・。

なんだこの呪文みたいな文字は、ミミズか?と思ったよ。


今は歴史の勉強がてら文字の練習で、歴史の本を写しているところだ。

どうせなら、書く方もチートで日本語から勝手に変換してくれたらいいのに…



それにしても、


「そんなに毎日毎日、付き合わなくてもいいのに。」


ルイスはほんとに毎日・・・朝から晩まで王宮に来ていた。

ルイスがいるから勉強の先生が居なくなったよ。

ダンスはさすがに先生居るし、マナー教育もニーナと王妃様が居る。けど他の勉強に関してはよほど専門的なことでなければルイスが十分教えられるみたい。

ルイス、ほんとに優秀だな。

でも、朝起きて準備が終わったらルイスが居るとか・・・


「他にすることないの?」

「今はアイリより大事な用事はないよ。」


用事扱いかよ。・・・いや幼児扱いか?そんなわけないか。

あれ、だよね?私にアプローチするとかってやつ・・・。

別に何かされてるってわけじゃないんだけど、なんか恥ずかしい・・・。


ま、お互いを知るって分にはいいのかもしれないけど。




ここ一週間でわかったことは、ルイスは私より3つ上の19才だってこと。弟がいるってこと。

この弟がルイスと年が離れていて今10才で公爵家跡取りなのにやんちゃで困っているとか。

いいな、私は一人っ子だから兄弟って憧れるわ。「お姉ちゃん」とかかわいく呼ばれたら絶対甘やかす自信あるわ。


「実際はそんないいものではないよ。」


そういうもんなのかなー。そいや春菜はるなもお兄ちゃんいてるけど喧嘩ばっかりするって言ってたっけ。

でも喧嘩するほど仲がいいっていうし、ルイスもそう言いながら家では甘いのかも。ぷぷっ。



「それはそうと、アイリ、たまには休息を取ったらどうだ?」

「休み?何言ってるの?時間がないのに休んでなんていられないわ。」


覚えることはまだまだたくさんあるっていうのに、休んだりなんかしたら覚えた事が頭から抜けていきそう。


「そうか…」


困ったようにため息をつくルイス。

もしかしてルイスが休みたかった?毎日、私につき合わせてるもんね。それならそれで休んでくれていいんだけど。


「なら、明日は街に出掛けよう。」

「えっ?街?」


なんでまた。

でも街と聞いて私の好奇心が刺激された。

この世界に来て王宮から出たことなかったのだ。

いろんなレッスンで室内がほとんどだ。マナー指導の一貫で庭園でお茶をしたりしたから、一応外の空気は吸っていたけど、街はまた別物だ。


「そう、王族の業務には街の視察もある。庶民の生活を知るのも立派な仕事だ。」

「行ってみたい!」


王族のお仕事なら私も行かないとね。

視察っていうとやっぱりお忍びだよね。お忍びならこんなドレスドレスじゃなくてもっとラフな服だよね。

やば、なんかおらワクワクすっぞ。


「それじゃ、明日の視察のために、明日の分を今日するわ。」

「なら晩餐までの時間はこの貴族図鑑で貴族を覚えよう。」

「…。」


ルイスが取り出したのは辞典ほど分厚い一冊の本だった。

笑顔で渡してくるルイスに、向こうの世界の塾の先生を思い出した。

プリントの課題を提出したら笑顔でもう一枚渡してきて、それも終わらせるともっと難しい課題を出してくる先生。

今のルイスはまさにそんな感じ。


ま、やらなきゃいけないことだし頑張るけど、今のルイスの笑顔はちょっとむかつく。

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