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早速始めました

「愛梨ちゃんにはどんなドレスが似合うかしらー」

「向こうの世界ではどういう型のものが主流でしたの?」

「あっちはドレスを着る機会はないのよー。それこそ結婚式の時ぐらいねー。」


3カ月後の夜会に向けてドレスを作ることになった。

お母さんと王妃様があーだこーだと盛り上がっていた。


「色は薄紫でお願いします。」

「あらー、いいわねー。愛梨ちゃんの金髪と合うわねー」


そこにルイスも参加していた。

なんでだ。


「なんで、私のドレス作りにルイスも混じってるの?」

「あらー、今度の夜会は2人の婚約発表の場でもあるのよー。ルイスくんの意見を聞くのは当然よー。」

「何それ!聞いてない!」

「アイリ、はしたないですわよ。」


解せぬ




ルイスが翌日から王宮に通うことになった。

宣言通り私を手伝うらしい。3ヶ月しか時間ないから毎日通っても足りないかも。

まずは夜会に必要なスキルから学ぶことになった。

夜会といったらあれだ。ダンス。2人一緒に踊るやつね。

それは練習相手いるわ。


場所を移してダンスのレッスン。

基本のステップを教わり、まずは音楽なしで動いてみる。

先生のワンツースリーの手拍子に合わせて動くけど、これがなかなか難しい。


ダンスなんて学校の授業でしかやったことないわ。

それもヒップホップ。


「ダンスと言うより酔っ払いの千鳥足にしか見えないな。」

「ヒールなんて履いたことないんだから、そんなすぐには動けるようにはならないわ」

「しかしその調子では上達するのに数年はかかりそうだな。…1人で練習するより、俺の動きに合わた方が上達するのでないか?」

「足、踏まれても知らないわよ。」

「アイリに踏まれるのなんて、子猫に踏まれるようなものだろ。」


言ったな。思いっきり踏んでやる。


右手をルイスに取られ、腰をがっつり抱え込まれてしまった。


ち、近い…。


行き場のわからない左手をひらひらさせていると、ルイスの肩に添えるように言われる。


「俺がリードするから、アイリは俺に合わせて動くことを意識して。」


先生のワンツースリーの手拍子に合わせてルイスが動く。私はルイスの足を踏まないように気をつけるのにせいいっぱいでステップなんてあったもんじゃない。

私の壊滅的なステップにルイスはテンポを遅くして右、左とかけ声をかけてくれたおかげで動きやすくなった。

慣れれば規則正しい動きができるようになり、ルイスがテンポを上げてきた。




なんとかルイスの動きについていけるようになった頃、


「愛梨、調子はどうだい?」


お父さんがやってきた。


「…もうルイスと踊れるようになったのか。すごいな愛梨。」

「ついていくので精一杯。」

「3カ月後には余裕で踊れるようになるよ。どれ、私とも踊ってみよう。」


えー、まだ踊るのー?もう足パンパンだよー


「だから、アイリ、顔に出しすぎ。」


ルイスも同じだけ踊ったのに余裕しゃくしゃくだな。

これが熟練者との差か。


「よし!お父さ…ま、お願いします。」


気合いを入れてお父さんと踊った。



…って、あれ?

踊れるようになったはずなのに、全然テンポが合わない?

まるで最初に戻ったみたいに足がもたついて動けない。


「愛梨?ルイスとは踊れていたじゃないか。」

「うん…。そうなんだけど…」


なんでだ?


「よいではありませんか。アイリが踊る相手は俺だけでしょう。」

「いやしかし、他の人と踊る機会もあるだろう。」

「踊らせませんよ。俺以外にアイリと踊れる人物はいません。」

「えっ?なんで?」


夜会に行ったらいろんな人とダンスするもんじゃないの?


「他家の夜会に行くことがあっても、女性はパートナーが必要だ。未婚の場合は身内か婚約者が主だが、アイリの場合、身内といっても陛下と殿下しかいない。この2人が他家の夜会に出ることはない。そうなると必然的にアイリのパートナーは俺しか居ないんだ。」

「だから、ルイスとしか踊れないの?」

「そういうこと。」


えっ?そうなの?王族ってそういうものなの?


そっかー、そういうものかーと納得しかけていたら、お父さんはジト目をルイスに向け、


「………ルイス、じっくり話をしようか。」

「じっくりですか。殿下にお時間があるのでしたら、俺はいつでも。」

「愛梨、この後は歴史の先生が来るのだったな。それまで休憩するといい。」

「ん?わかったわ。」


そういうとお父さんはルイスに来るように言い、ルイスは「また明日来るよ。」と2人で部屋を出て行った。

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