第9話
喫茶店。僕は周りを見渡したがそれらしい建物は見当たらない。そもそもこの世界には喫茶店はあるのか、と疑問に思ったが首を振ってりえを信じて探す事にした。
とりあえず誰かに聞こう。そう思い近くにうたた寝してる老人に声をかけようとしたが、足が止まった。手は長く、足は短い。頭が大きいのに対して顎が極端に小さい。閉じている目も僕の倍以上に大きい。あの男を連想し怖くなった僕は、走って逃げる様にその場を後にした。
周りの人をよく見ると、全員あの男と似た容姿をしていた。僕はパニックになり何振り構わず走った。喫茶店の事を忘れ周りを見ず走り続けた。
どれくらい走っただろう。吐き気がして僕の足は止まった。膝に手をつき体全身で息をする。肺が痛む。だんだん呼吸が落ち着いてくると、あいつらがどうかいないように、と心で祈りながら恐る恐る顔を上げた。
僕はどうやら町の外れまで走って来たようだ。周りにあいつらの姿は見えず、こじんまりとしていた。良かった、と胸を撫で下ろした。力が抜け地面に座り込んだ。ふと右の方を向くと「店茶喫」と書かれた看板が目に入った。えーっと、ミセ、チャ、キツ?僕は閃いた。
喫茶店だ。
疲れて重くなった足を引きずりながら、その看板を構えている建物へと向かった。その喫茶店は他のものと違い、僕のいた時代の建物に良く似ていた。
「古い喫茶店、ここに間違いない。」
僕は頷きドアノブに手を伸ばした。カランコロンと音を立ててドア開いた。中を覗くとそこにはいわゆる木製のテーブルに、木製の椅子。コーヒーの匂いがほのかに香る。いわゆる古い喫茶店だ。
しかし、中は電気もついておらず客どころか店員もいない。お邪魔します、と一応言って僕は喫茶店の中へと足を進めた。警戒しながら奥へと進むと突然店の電気がついた。
「すまんすまん、ちょっと用事があってね。」
と大きな頭を長い手で掻きながら店主らしき老人が奥からひょっこり現れた。店主がつけている大きな目と僕の目があった。
「わーーー!」
と僕は大声で叫び尻餅をつき、その声にびっくりした老人はひぇー、と後ろへよろめいた。僕は腰を抜かし動く事が出来なかった。痛たたた、と言いながら老人はゆっくり立ち上がった。