第4話
「ここ見て。」
道中周りがあまり見えていなかった為、正確な位置は把握していないが、恐らくあの大きな扉のある部屋の裏側に来ている様だ。
彼女が指差した方向を見てみると、見た事無いような造りの部屋があった。中央には診察台の様な台があり、周りには飛行機のコクピットの中に並んでいそうなボタンやらディスプレイやらで覆い尽くされていた。
この火葬場には似合わない、と言うかこの時代には似合わない部屋だった。
「ここは何?」
僕は恐る恐るりえに尋ねた。
「変換室よ。」
ヘンカンシツ?と僕は言葉の意味がわからず彼女の言葉を繰り返した。
「そう、変換室。」
彼女はまた笑顔になった。
「りえ!」
大きな声が背後からした。僕は驚きとっさに耳を押さえながら振り向くとそこには見た事無い男の人が立っていた。
顎が小さく、頭が大きい。手は長く、足は短い。目は不自然に大きく、普通の人間と違う様な気がした。僕はその変わった容姿の男を見て震え上がった。
「何も喋ってない!」
彼女が声を張り上げる。二人は言い合いをしている様だったが、違和感を感じる。
「わかってないだろ!」
「嘘じゃないもん!」
「そんな事は良い、行くぞ!」
何かがおかしい。聞いていると何かこう、セリフが飛ばし飛ばしで会話が進められている様な感じだ。通話中、電波が悪く途切れ途切れになる会話の様な、そんな違和感を僕は覚えた。男はりえの手を取り、そしてついでに僕の方に目を向けた。
「この部屋の事はお父さん、お母さんには内緒ね。」
落ち着いた優しい口調だったが、顔は笑ってはいなかった。うん、と僕は頷くとりえの顔も背後のヘンカンシツも見返す事なく、放心状態で母が待つ待合室に戻った。
母は祖母と一緒にお茶を飲んでいる。僕も隣に座り、一緒にお茶を飲んだ。お茶は熱かった。火傷をした。が、そんな事は気にならずさっきの事が頭で行ったり来たりしてる。
この時代のものではない様な部屋ヘンカンシツに、どこか人間離れした容姿の変な男の人。そして、人形みたいに美しい少女りえ。さっき握られた掌を見た。まだ震えていて、ほんの少し温かい。
りえの顔が頭に浮かぶ度、心臓が小さく跳ねた。