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第28話

「何をした小僧。」


僕を睨みつける。男は僕の方へ飛んできたが、途中で飛べなくなり顔から落ちた。やはり、男の体に対ロボット用のウイルスは効果覿面だった。


男はもう一度起き上がろうとしたが、上手く体が動かずまた地面に崩れ落ちた。男は遂に動かなくなった。


「小僧、覚えておけ。」


僕は一気に力が抜け、ぺたんと地面に座り込んだ。僕は倒したんだ。てつしは苦しそうに立ち上がり、お腹を抑え、足を引きずりながら僕の方へ向かって来た。


「お前、それ俺の部屋から盗んできただろ?」


彼は痛そうに笑った。それから僕の頭をくしゃくしゃに撫でた。僕は恐怖から解放され安心したのか、堪らず泣いた。てつしは一瞬驚き、声を上げて笑った。僕ははっとし、りえの方に走った。


「りえちゃん。」


優しく、震える声で名前を呼んだ。りえの口が動いた。


「ゆうたくん?」


ゆっくりと目が開き、僕と目が合う。


「うん、一緒に帰ろう。」


僕はそう言った。彼女は僕の泣き顔を見て、何泣いてるの、と馬鹿にするように言ったので僕は不器用に笑ってみせた。


その後、てつしは政府に通報した。今回のりえの実験の件で、ようやく政府は動いてくれる事になったみたいだ。


りえの頭のチップは、残念ながら取り出す事が出来ないそうだったが、えみが人体に影響を出さないように機能をストップさせた。僕達はその足で変換室まで向かった。


エレベーターの前で僕達は向かい合った。僕とりえを除いて、皆んなぼろぼろだった。


「お前のお陰だぜ。」


てつしが僕に言った。


「調味料が効いたのかも。」


と僕はにっと笑った。えみが、調味料?、と聞くとてつしは、ウイルスの事だよ、と慌てて言った。一度溜め息を吐き、てつしは真面目な顔になった。


「ここの後の事は任せろ。もう、お前らの世界に手出しはさせないからな。」


うん、と頷き僕とてつしは手を合わせた。


「任せたよ、リーダー。」


「おうよ、お前もその子を守ってやんなよ。」


僕とりえはエレベーターに乗り込み、未来の世界に別れを告げた。


元の世界のに着くと、エレベーターの前には涙目になったあの男が立っていた。僕達の帰りを待ってくれていたようだ。無事で良かった、と長い腕で僕とりえに抱き着く。


「おじさん、りえちゃんはもう自由だよ。家に返してあげて。」


男は僕の顔を見た。全部片付いたんだ、と言うと、わかった、と男は頷き立ち上がった。


「りえ、家族の所へ帰るよ。」


りえは少し考えた。それからこくりと頷いた。


「私、お父さん、お母さんの事覚えてないけどまた会いたい。」


笑顔が眩しかった。でもまたおじさんに会いに来るね、とりえが言うと、とうとう男は声を出して泣き出した。僕とりえは目を合わせて笑い合った。


変換室の外は真っ暗だった。


「ゆうたくん、ありがとうね。」


僕はどきっとした。また急に心臓が高鳴り、口から飛び出て来そうだ。当然だよ、と照れながら答える。その姿を見た男は、察したのか僕に向かってにやけてみせた。僕は慌てて顔を元に戻した。


「また会えるかな?」


僕ははっきりと、


「会えるよ、きっと。」


と答えた。


僕達は暗い道を、別々の方向に進んだ。空には天の川が見える。僕は自転車を漕ぎながら、これまでに起こった信じられない出来事を思い返していた。


火葬場でりえとおじさんと会い、


りえを助けに未来へ行き、


てつし達とあの研究所の奴らと戦った。


体全体が痛む。それから僕は溜め息を吐いた。母の怒った顔が頭に浮かび、それに憂鬱を感じたからだ。

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