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第15話

「りえは多分あの時、死んだじいさんと一緒に未来へ送られてしまったんだ。ただりえは生きていたから肉体は変換されなかったけど、頭の中はほぼ新しいカタチに変換されてしまったんだよ。」


私、昔の事あまり覚えていないの。


喫茶店での彼女の言葉が蘇ってきた。彼女が何故未来にいるのかは、誘拐されたのではなく、間違えて未来に送られてしまった。


ここに帰って来る方法を知っているのに何故ここに逃げ帰って来ないのかは、記憶を変換されこの世界での帰る場所がわからないから。


僕の頭の中でパズルのピースがぱちっとはまった音がした。


「あの時、未来の研究所はちょっとしたパニックになったが、彼女の記憶が無くなってる事が分かると研究者である俺達は、本当の事を隠し彼女を未来で匿う事にした。彼女の為にもそれが正しいと判断したからだ。」


男は事情聴取を受けているかの様にそう淡々と喋った。


「りえちゃんの家族は、まだりえちゃんを探してる。」


男は僕の目を見た。ああ、悪い事をしてしまった。とまた俯いた。


「僕がりえちゃんを助ける。」


僕は強く男に言い放った。男は長い腕を地面に垂らし黙っている。助けるんだ!ともう一度言うと男は重たい口を開いた。


「この実験世界の事情を君が知ってすいる事を上に知られると、君もまずい。だからもう関わらない方がいい。」


この男はほとんど自分で実験世界の事情を話した事を忘れているのか。そう思ったがそこには触れず、


「僕は助けに行く。僕を未来へ連れて行って。」


男はダメだと頑なに断った。頑固だった。なので僕は一言こう言ってやった。


「あの時誰かがしっかり確認していれば。」


とどめの一撃だった。男は折れた。あぁもう好きにしてくれ、とエレベーターの方に僕を進めた。やなガキだ、と我ながら思った。僕がエレベーターに乗ると男はくっと真面目な顔になって言った。


「気を付けろよ。上の奴らは何をするかわからないからな。」


わかってる、と僕も真面目に答えると男はディスプレイを指でなぞった。僕の周りは強い光りに包まれ、目が開けられなくなったのでそっと閉じた。

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