異世界からの聖女
セイラの式典に思わぬ客が! セイラにとって、吉となるか凶となるか。
「聖女様、お時間です」
「わかりました、今向かいます」
城内にまで民たちの声が響いてくる。“聖女様”を待ち望む声が。
それでもいい、今日は楽しむのだ。
今日は特別な日なのだから。
扉を開けるまで、5、4、3、2、1、
バンッ‼︎
「聖女様の登場だ!」
「ますますお美しくなられて!
「うおーーっっ」
歓声が会場を満たす。風が心地よくて、空も広い。なにより、目の前に壁がない。
無表情はそのままで、会場を見渡す。
たまに見かける見かける精霊たちも集まっていた。
この式典は、後に庭で食事パーティーを開くのが恒例だ。私も成人、縁談の申し込みもくるかもしれない。
……笑顔の作り方くらい、練習しておけば良かった。
一呼吸置き、顔を上げる。
「皆様、本日は私事に足を運んで頂き、ありがとうございます。私は今日で、」
ドスンッ
「いったーいっ」
それは本当に、突然だった。
「あれ? ここどこ⁉︎ さっきまで家に居たのに‼︎」
見たこともないような妙な服を着た年恰好の似た少女が、降ってきた。
肩までの黒い髪に黒い瞳。
少女が私に向かって話しかけてくる。
「あの、ここってニホンですよね?」
「いいえ、ここはセラティレ王国ですが」
何を言っているのか、彼女は。
頭の中で警鐘が鳴り始める。嫌な予感がした。
これは、まさか。いや、そんなはずは……。
「え! それってさっきまでやってた乙女ゲームの‼︎ ってことは……」
「わたし、聖女です! 異世界から来ました‼︎」
瞳を輝かせながら、少女は大声を上げた。
今、なんて言った?
民衆の声がざわざわと波打つ。
「聖女?」
「本当か?」
「でも急に現れたよな」
「見たことない格好してるし」
「あれ? じゃあ」
「セイラ様は、なんだ?」
「神官! 水晶玉を持ってくるのだ‼︎」
王の混乱は民に伝染する。さらに騒ぎが広がった。
指示を受けた神官は飛ぶように城に駆けていった。
私は、ひどく混乱していた。
異世界から? 聖女?
じゃあ私は? 私はなんなんだ?
15年間聖女として育てられた私は?
……なんのために生きてきたんだ?
神官が戻ってきて、少女に水晶玉を触らせる。浮かび上がった文字は。
「“異世界からの聖女”と記してあります‼︎」
聞きたくなかった。
「本当に聖女⁉︎ えっ」
「じゃあセイラ様はニセモノ?」
「俺たちはずっと騙されてたのか‼︎」
聞きたくなかった。
私は、聖女じゃない?
どうして。なんで。
「王女を捕らえよ‼︎」
王の命を受けた兵たちが私を取り囲む。
皆の顔が私を責める。
立つ力も尽きて、その場に膝をついた。
待って。なんで父様も母様も、そんな顔で私を見るの。
騙してなんかない!
私は嘘なんてついてない!
今まで、耐えてきたのに。
1人でも、頑張ってきたのに。
なんで。
なんで……。
異世界からの転移者。ちなみにホワイト設定。彼女はただ、飛ばされただけなんです!
セイラの運命やいかに!