聖女の1日
メイン突入! 私だったらこんな監禁生活耐えられない……。
「おはようございます、聖女様」
私の1日は、王と王妃のこの一言から始まるのだ。
「おはようございます、父様、母様」
そう言うと、2人はこうべを垂れて跪いた。
「もったいないお言葉にございます」
その顔は清々しい程に笑顔だった。用が済み、退室していく。
強制しているわけでも、されているわけでもない。
“普通”なだけなのだ。
生まれてから、聖女として扱われてきた。この国の聖女の位は王より上である。
王でさえ、聖女に逆らうことはできない。
王のもとに聖女が生まれた結果がこれだ。
親に抱きしめられることも、名前を呼ばれたこともない。
『子どもにヘコヘコして、ばかみたいだ』
冷めた感情で、ずっとそう思って生きてきた。表情の出し方さえ、今や分からない。
城の外に出ることも、人間の友達をつくることもできない。
食事だって聖女専用の部屋でしか取らない。
綺麗なドレスを着て、邪魔な長い髪を整え、1人でご飯を食べるのだ。
とてもつまらない毎日だった。
そのせいで、何事にも動じない性格になってしまった。
友達がいないわけではない。
私には精霊がいる。
触ることも話すこともできる。敬語で話さないのは、精霊たちだけだった。
精霊はとても愛らしい見た目をしている。片手程の大きさで、性質によって色が違う。
特に仲がいいのは光の精霊だ。
精霊たちだけが、“セイラ”を見てくれるのだ。
することのない私は、大体の時間図書室にいる。
色々な本を読んだ。物語や建国記、マナー、商売の心得など、どうでもいいものまで。
1度読んだ本は全て頭に入っている。
少し前まで教師に勉強やマナーを習っていたが、「もうお教えできるものはありません」と去ってしまった。
私は弓を使える。光を具現化して矢を打てるのだ。
たくさん練習したため、命中率もほぼ9割。
体力もつき、体調も崩さなくなった。
明日、ついに成人を迎える。
この国の成人は15歳からで、王家の成人式は城でパーティーを開く。
久しぶりに外に出られるのだ。
しかし、国民が祝うのは“聖女様”の成人。
“セイラ”の成人は誰にも祝われることはない。
それでも、嬉しいものは嬉しいのだ。
明日に期待を寄せ、眠りについた。
セイラの特徴をまとめると、長い金髪で紫暗色の瞳、無表情で14歳という感じです。
次回、まさかの出来事が……っっ‼︎